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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第17章 闇に浸されて

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07 無情の朝。~ターク様、起きられますか?~

 場所:フィルマンの屋敷

 語り:小鳥遊宮子

 *************



「ターク! ミヤコ~~! 朝じゃぞ~!」



 うとっとした瞬間、地鳴りのような大声で名前を呼ばれ、私はおどろいて、ビクッと体を揺らした。


 ターク様が眠りについてから、まだ五分も経っていない気がする。


 ターク様は、私が逃げると思ったのか、私を抱く腕に力を込めた。


 逞しい腕にガッチリと固定され、足元に大きな人影を感じるけれど、全く身動きが取れない。



「おぉーい、朝飯じゃぞ」



 またフィルマンさんの声が聞こえて、『かわいそうだな……』と、思いながらも、私は顔だけ上を向いて、眠ったばかりのターク様に声をかけた。



「タ、ターク様、お休みのところ、申し訳ないんですけど、フィルマンさんがこられたみたいです……」


「んん……?」


「あのぅ……ターク様? 起きられますか?」


「いや……。パンはそのままでうまいぞ」


 ――パンの夢?



 ターク様の可愛すぎる寝言にキュンキュンしながらも、何度か声をかけるものの、彼はスヤスヤと寝息を立てている。



 ――ダメみたい。だけど、なんだか視線をいっぱい感じる……。



 身動きが取れないまま、横目で周りを確認すると、私達の寝ているベッドの周りで、フィルマンさんだけでなく、イーヴさんやファシリアさん、ガルベルさんまでが私達をのぞき込んでいた。



「わ、ターク様……皆さんこられてますよ」


「ターク、起こして悪いな」


「ほんと、熱いわね~あなた達」


「飯の時間じゃよ?」


「ん……?」



 ひどく険しい顔でうっすらと目を開けたターク様は、ベッドの周りに集まった皆の姿をチラリと見ると、「信じたくない」という顔をして、もう一度しっかりと目を閉じた。



「……僕は今、すごく幸せに寝てます」



 そう言って、また私を抱きしめなおすターク様。



「いいから起きて、状況を説明しなさい。歌姫ちゃんは闇堕ちしてるし、タツヤはどうしたの?」


「精霊に攫われました……」


「はぁ?」


「い、今起きます……」



 ガルベルさんのヒステリックな大声に、目をしばしばさせながら私をはなし、起き上がったターク様。


 頭が痛いのか、青い顔で、しきりに眉間を押さえている。


 私のせいで、彼女に抵抗できなくなってしまった彼が、やっぱり凄く不憫だった。



      △



 無慈悲に起こされた私は、身体からあふれる闇のモヤを隠すため、腰に精霊の秘宝をぶら下げ、真っ黒なローブに身を包んだ。


 まるで闇魔道士のような姿で、眠そうなターク様に手を引かれ、巨人がニ十人も集まって会食出来るくらい、大きな広間に通される。


 いつもより金ピカの豪華な服を着て、部屋の一番奥にあぐらをかいて座るフィルマンさんは、まるで、大仏様のようだった。彼の周りには、お付きの人がいっぱいだ。



「がっはっは! たべれたべれ!」



 床に敷かれた大きくて美しい敷物の上に、朝食とは思えないくらいの、豪華な料理が並べられている。種類はすごく豊富だけれど、よく見ると、どれもこれも、きのこが沢山で、意外とヘルシーそうだ。



「い、いただきます!」



 ――ほとんど眠れなかったけど、これなら食べられそう!



 そう思いながらとなりを見ると、ターク様が、今にも吐きそうな顔をしている。



 ――いったい、どれだけ寝不足なんですか? あぁ、早く眠らせてあげたい……。



 そうは思うものの、魔物が入り込んだ小屋の片付けに、セヒマラや研究室で捕まえた精霊狩り達の取り調べ、実はノーデス王の弟君だったという、ゼーニジリアスの件もあって、とにかく急いでいると言うガルベルさん。


 簡単に話を聞いただけでも、セヒマラはそうとう大変だったようだ。


 そんな中でもガルベルさんは、アーシラの森まで私と達也を探しに行ってくれていたらしい。


 遺跡を探索した後、水晶で私達の居場所を確認。休んでいたイーヴさんを叩き起こし、ここに来たと言う。



 ――いったい、いつ見られてたの!?



 ここに着いてからのターク様とのあれこれを思い返すと、恥ずかしくて顔が上げられない。



「心配しないで? あんまり野暮なことすると、私だって闇に落ちちゃうんだから、気をつけてるわよ」



 そう言って、何も見てませんアピールをする彼女。これはもう、信じるしかないだろう。



「それで、いったい何があったの?」



 ガルベルさんに質問され、私は、覚えている限りの事情を彼女達に話した。



 眠った瞬間、フィルマンたちに叩き起こされた宮子とターク様。眠い目をこすりながら、集まった四人に事情を説明します。


 次回、第十七章第八話 不確かな伝説。~休みたいって言ってます!~をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 寝ぼけたターク様はとても可愛いですね! 子犬系男子♡ フィルマンさんは相変わらず大仏様なようで。笑 ほのぼの回で癒してもらいました♡
[一言] 花車様おはようございます! ターク様の寝顔に癒されてるみやこ。 ほのぼのですねぇ笑 そこへ邪魔するように揃う仲間。 しかし、真相を話すみやこに続きが気になりますヾ(・ω・`;)ノ 俺も花車様…
[良い点] 皆さん、寝ている男女のところに遠慮なく入ってきて、デリカシーのなさがとても面白かったです。そして、大仏様のようなフィルマン様、目に浮かぶようでした。眠れないターク様は不憫でしたが。災難が似…
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