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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第2章 退屈なゴイムとお疲れのターク

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07 ターク様は休まない。~暇な私に湧き上がるパワー~[挿絵あり]

 場所:タークの屋敷

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



 ターク様の部屋に来てから、五日目の朝。


 私、小鳥遊(たかなし)宮子は、バスルームの鏡に映る自分の姿に、一人にまにましていた。



 ――なにこの透明感。お肌だけは女優さんみたいじゃない?



 ターク様の治療のおかげで、目立っていた傷跡や腫れも消え、もともとの白い肌がすっかり戻った私。


 それどころか、前以上にハリとツヤのある、ぴちぴちお肌になってしまった。


 あの有難い癒しの光は、美容効果も抜群らしい。



 ――最初にここで自分の顔を見たときは、もうダメかと思ったわ!



 もともと美人ってわけでもない私だけど、あのとき感じた絶望感は相当なものだった。ずっとあんな姿のままだったら、一生外に出れなかったかもしれない。


 ターク様はそんな状態の私に、毎晩加護を与えてくれた。最初は同じベッドに入るのが怖くて、ずいぶん警戒したけれど、いまとなっては感謝の気持ちでいっぱいだ。



 ――この御恩は必ず返します!



 私がバスルームから出てベッドルームに入ると、いつもの黒い鎧を装着(そうちゃく)しようとしている、ターク様がいた。



「お手伝いしましょうか?」


「いや、お前は今日もなにもするなよ」



 そう言って、慣れた様子で鎧を着込む彼。彼の鎧は、短い胸当てと左の肩当てだけだ。


 肩当てには、金の歯車がついた、不思議な装置が埋め込まれている。


 鎧の下に着ているのは、普通の黒いシャツで、防御力は低そうに見えた。



 ――ターク様は不死身なのに、なんのために毎日鎧を……?



 そんなことを考えながら、彼の様子を眺めていると、ターク様は笑顔を見せながら、私に近づいてきた。



「ミヤコ、私のステータスを見てみろ。今日は魔力の回復量がすごいぞ」



 なんだかご機嫌そうなターク様。

 昨晩はかたかった表情が、ずいぶんやわらかくなっている。



「すごい。今日は六百も溜まってるじゃないですか」


「ふふん。今日も領民たちを回復してくるかな。ポルールの戦いで魔物討伐が手薄になっているからな。街にはまだまだケガ人が多い」


「ターク様は本当にステキな領主様ですね!」


「当然だ。私は不死身の大剣士だからな」



 得意げにステータスを見せにくるターク様が、なんだか可愛くて仕方ない私。


 ()()()()()()()、と毎度ドヤ顔でいうターク様も、ちょっとほっこりしてしまう。



 ――達也とはまた違うけど、可愛い!



 ついにやけてしまう顔を、必死で元に戻していると、ターク様は少し、怪訝な顔をして言った。



「さて、私は出かけるが、お前はなにもせず待っていろよ」


「待ってください、ターク様! 私、いつまでこんな感じなんでしょうか?」


「心配するな。所有者ならそのうちわかるはずだ」


「なにか、ちょっとくらいしちゃダメですか?」


「いいからじっとしていろ」



 ――えーん! 今日も暇確定かぁー!



 悲しみを顔で表現した私を見て、ターク様はクククと笑う。



「それだけ面白い顔ができるなら、大丈夫そうだ」


 ――なにがですかー!?



 がっくりと肩を落とした私を残して、ターク様は出かけてしまった。



      △



 ――暇だ……本当に暇だわ。


 すっかりケガもよくなった私は、いますぐ登山にでも行けそうなほどに、元気をもてあましていた。


 いまならあの、熱中症で倒れた山だって、スタスタ登れそうだ。


 お腹の底から沸き立つようなパワーが、身体中を満たそうとしているのを感じる。


 毎日ターク様のとなりで、眠っているせいだろうか。


 だけど、元気になればなるほど、なにもできないことが、つらくて仕方なかった。



 ――ターク様になにか恩返しがしたい、したいようー。暇だようー。



 やがて、()()という特殊スキルを覚えた私は、ソファーの上で天井を眺めているだけで、夕方まですごすことに成功した。



      △



 外が暗くなりはじめたころ、ターク様が部屋に帰ってきた。


 ささっとお風呂に入った彼は、デスクに向かい、書類や手紙を次々とやっつけていく。



「いったいなんの書類なんですか?」


「まぁー、いろいろだな。国や騎士団からの連絡に、魔物討伐や治療の依頼。あとは、魔道具に魔力を補充して欲しいとか、街の街灯が暗いとか……。ほかには、使用人の配置替えがどうのとか……」


「た、大変ですね」



 これらの書類は、毎日ターク様が留守の間に、メイドさんが持ってきて、彼のデスクに置いていく。


 ターク様が言うには、戦地に行っていた間は、こういう仕事は全部、ほかの人に任せていたらしい。


 だけど、彼が帰ってきて、自分で仕事を引き受けるようになってから、どんどん依頼が増えているんだとか。


 たぶん、ターク様の面倒見がいいせいで、いろいろ頼みにくる人が増えたのだろう。



「やればやるほど仕事が増えるな」



 そう言いながらも、鬼のように書類と戦うターク様。朝は朗らかだった彼の顔が、またすっかりかたくなっている。



 ――お疲れみたいなのに、ターク様ってまったく休もうとしないですよね……。大丈夫なのかな。



 私がぼんやり彼を観察していると、ターク様は突然顔をあげた。



「なんだ……? そんな気の抜けた顔で私を見るな。こっちまで気が抜けてしまう」


「すみません、だけど、ターク様、少し休憩されたほうがいいんじゃないですか? なんだかお疲れに見えますよ」


「私に休憩は無用だ。不死身だからな」


「でも……」と、心配に眉をひそめた私を見て、つらそうに胸をおさえるターク様。


「く……こっちへ来てみろ。傷を見てやる」


「は? はい……」



 私をデスクによび寄せたターク様は、私の髪をかき分け、後頭部の傷を確認した。自分ではよく見えないけれど、傷はもうすっかり治っていると思う。



「なにか思い出したか?」


「あー……特には……」


「王都の都市名を言ってみろ」


「え……? パリとかですか……?」


「なら、王の名は?」


「うーん、ナポレオン?」


「ベッドに入れ。頭を治してやる」


 ――あーん!



 外傷がなくなった私を、記憶が戻るまで治療するつもりらしいターク様。



「わ、私、日本から来たので、治療しても、この国の記憶は戻りません!」


「心配するな。私と寝ていれば、頭がおかしいのもそのうち治る筈だ」


 ――ひーん!



      △



 ターク様は私をとなりに寝かせると、あっという間に眠ってしまった。


 あまりにも早くて、恥ずかしがる暇もないくらいだ。



 ――やっぱり今日も、お疲れなんじゃないですか。


 ――きっと街では、今日もたくさんの人が、ターク様の治療に助けられたんだろうな……。思った以上に、この人はヒーローだわ。



 傷がなくなって、傷口にキスされることもなくなり、一安心の私。


 だけど、ターク様の光は結構ムズムズするし、サワサワ音もする。それに、鎧を脱いだ彼は、暗い室内で見ると、かなり眩しかった。


 なかなか寝付けない私は、彼の天使すぎる寝顔を、「まぶしっ」と思いながら、目を細めて眺めていた。



挿絵(By みてみん)

 ターク様の治療のおかげで、元以上に元気になってしまった宮子は、ターク様に恩返ししたい気持ちでいっぱいですが、小さなお手伝いひとつさせてもらえません。


 暇な自分とは対称的に、かなり忙しそうに見えるターク様を心配する宮子。そんな宮子をターク様は、まだまだ治療するつもりのようです。


 次回、宮子は高校生になってからの、達也との思い出を振り返ります。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] お肌まで潤うとはターク様キラキラ効果凄すぎて、賛辞の言葉がいくらあっても足りません。 しかし暇を飽かしてしまいますね。 何もしないでい続けるというのは、現代人には特に苦痛でしょう。 療養…
[一言] 宮子はほぼ完全回復した模様。 ターク様には部屋を出るなとのいいつけ。 これは辛い…。 でも治癒なので仕方ないのか。 ターク様の魅力に宮子はどう行動していくのか!? 気になるのは…宮子の所有者…
[良い点] ターク様、もはや宮子に首ったけではないのかしら。壁|・ω・`。)r)) ネェネェ そうじゃないかしら。(o-´ω`-)ウムウム ホッ(〃 ' o')(〃 ' O')ホー アラヤダ と、…
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