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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第15章 一方的な愛

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09 彷徨える宮子。~お豆の歌を歌いながら~

 場所:モルン山

 語り:名城(めいじょう)達也

 *************



 ――あれ? 僕、どうしてこんな体勢で寝てるんだっけ?


 ――やわらかい……。って、うあぁ! みやちゃんの(ひざ)の上!?



 自分がとんでもない場所で爆睡(ばくすい)してしまったことに気付いた僕、名城達也は、飛び上がるように体を起こした。


 あれからどれくらい時間が経ったんだろう。まだ日があったはずの外が、すっかり暗くなっている。



 ――勢いで魔力を使いすぎたみたいだ。次から気をつけないと。



 そう思いながらも、さっき自分が使った魔法の数々を思い出すと、僕はなんだか、胸が熱くなった。


 精霊は僕の願いを、正確に感じ取り、それを口に出さずとも、全て叶えてくれたのだ。


 確かに僕は、闇の精霊に愛されているみたいだ。それも、勝手に願いを読み取っては、勘違いで魔法を暴発(ぼうはつ)させる微精霊達じゃなく、何かもっと理性のある、すごい精霊に……。


 さっき魔法を使った時、僕の頭に(ひび)いた、()()()それが彼女の名前だと思う。



 ――みやちゃん、大丈夫かな?



 みやちゃんの顔をのぞき込んでみると、彼女はすやすやと寝息を立てていた。傷からばい菌が入って、熱が出たりするのを心配していたけれど、今のところ、大丈夫そうだ。


 とりあえず、キッチンに降りた僕。夕飯の支度(したく)をしようか、と思ったけれど、さっきの騒ぎで、思いの外服が汚れていることに気付いた。


 ダークアローでやっつけた魔物の中に、変な汁を飛ばしてくる奴がいたのだ。



 ――軽く体を流して、着替えてからにしよう。



 風呂場で体を流していると、ダイニングの方でガサゴソと人の気配がした。みやちゃんが起きてきたのかもしれない。


 歩けるみたいで良かった、と思いながら、急いで体を流し、服を着る。



「みやちゃん? すぐ夕飯作るね。……あれ?」



 ダイニングに戻ってみたけれど、彼女の姿がみあたらない。


 部屋を見にいくと、扉が開けっぱなしになっている。


 中をのぞいてみても、彼女の姿はなかった。



 ――嘘だ……。どうして?



 大慌てで階段を駆けおり、玄関に目をやると、扉が少し開いていた。



 ――確かに封印したのに!


 ――いや、そう言えばあの封印、掛けた(がわ)からは普通に開くんだった。


 ――でも、まさか、どうして外に?



 頭が真っ白になるのを感じながら、僕は外に飛び出した。小雨(こさめ)が降っていて、とても冷たい。


 魔物も絶対いるけど、黒いのが多いし暗くてよく見えない。下手に声をあげると、やられてしまいそうだ。


 必死に走って草原に出たけれど、彼女の姿が見えない。まさか、こんな夜中に、一人で山に入ってしまったのだろうか?


 オロオロしながら彼女の痕跡(こんせき)をさがして戻ると、地面のぬかるみに、彼女の足跡を見つけた。小屋から真っ直ぐに、森に入ってしまったようだ。


 僕は意を決して、彼女の後を追い、山に入った。


 山の中は、思った通り、魔物だらけだった。だけど、魔物達は、僕をみても動こうとしなかった。


 よく見ると、豆のツルに足を(から)め取られ、身動き出来ないようだ。


 しばらくツルをたどっていくと、僕は彼女を見つけた。彼女は豆の生える歌を歌いながら、山の中を真っ直ぐに進んでいる。



「みやちゃん、どこいくの? まさか、ターク君に会いにいくつもり?」



 話しかけても、彼女は返事もしないし、こっちを向こうともしない。


 それどころか、歌を歌い続け、僕を豆のツルに閉じ込めようとしているようだった。



「心配なのは分かるけど、僕に黙って行くなんて、あんまりだよ。そんな足で、山を降りられると思ってるのか!?」



 流石に少しイライラして、僕が大きな声を出すと、彼女はゆっくり振り返った。


 その瞳は、ぼんやりとして、意識があるのかもよく分からない。まるで、誰かに操られているようだ。



「み、みやちゃん?」



 僕が彼女を捕まえようと足を踏み出すと、彼女は突然僕を引っ張った。足がツルにひっかかり、僕はみやちゃんと一緒に地面に倒れた。


 倒れた先は、急な下り坂になっていた。二人で抱き合ったまま、僕達はゴロゴロと転がり、最後に大きな段差で飛ぶように地面に投げ出された。



「いったぁ……何するの? みやちゃん」


「危ない。危ないよ、達也、魔物がいたよ」



 ぼんやりした顔のまま、みやちゃんがつぶやいている。どうやら、魔物から僕を助けようとしたらしい。



「まだいる。いっぱい」


「大丈夫、僕に捕まってて」



 僕はみやちゃんを抱き上げ、山の中を魔物を避けて移動した。さっき少し寝たけど、魔力は少ししか回復していない。



 ――ポーション探して飲むんだった。



 慌てて飛び出したことを少し後悔したけれど、今更言っても仕方がない。出来るだけ魔法は使わず、彼女を小屋に連れて戻りたい。


 だけど、僕達は、結構な段差を転がり落ちていた。


 足をケガしたみやちゃんと一緒では、元きた道には戻れない。


 しかも、魔物を避けながらでは、思った方向にも、なかなか進むことが出来なかった。


 真っ暗な中をウロウロしているうち、僕は完全に、帰り道を見失った。



 体を流している間に、宮子が小屋から出て行ってしまい焦る達也。宮子は豆の生える歌で魔物を足止めしつつ、森の中を一直線に進んでいました。なんだかぼんやりして、様子のおかしい宮子と共に、達也は山の中で帰り道を見失ってしまうのでした。


次回、第十五章第十話 おとなしくして。~僕はそろそろ限界だよ~をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 花車様おはようございます! そして話はみやこが何者かに操られてしまったのか大変な事に!? どうなるんだぁ(A;´・ω・) 今日もお疲れ様です( ◜ᴗ◝)و
[良い点] 宮子は何に操られているんでしょう。気になりますね(´・ω・`)それにしても、宮子愛が強い達也。こういう三角関係も切なくていいですね(^^)
[良い点] 宮子の不思議なオート状態がとても気にかかります。一体何が起きているのやら。そして、達也も達也で何やら思いの外、大きな力を持っているようで。ここを脱出したあとがとても楽しみになる流れでした。…
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