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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第15章 一方的な愛

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04 二人の魔法合宿4~別のこと、別のこと?~

 場所:ガルベルの小屋

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 私達の使える魔法の属性を把握(はあく)したガルベルさんは、さっそく、魔法の訓練を開始した。



「うーん、何から試そうかしらね? そうだ、まずは歌姫ちゃん、前に庭に生やしたっていう、豆を出してみる? あれは、ツルで魔物を足止めする土属性の補助魔法よ」


「あ、はい。あれは、歌で発動したんですけど、歌っても大丈夫ですか?」


「もちろんよ。是非聞きたいわ! 歌ってみて」


 ――やった! ガルベルさんが居るし、安心して歌えるわ!



 お豆が生える歌は、前にメルローズの街で、ターク様に歌の大会の舞台に押し上げられて歌った、「心の種」という歌だ。


 それは、昔から、小学校の音楽の本に載っていて、日本人なら誰でも、クラスみんなで合唱したことがあるような、歌いやすくて、ポピュラーな歌だった。



「なんだか つらく 苦しくて♪

 叫び出したい そんな時

 この胸に 小さな種を()いた~

 大きな夢に なりますようにと~♪」



 ――わ! 自分の体、声の調子がいいわ! やっぱり、(きた)えてるからね!



 杖を片手に歌を歌うと、地面からニョキニョキと、太いツルが生えはじめた。


 それは、あっという間にどんどん育ち、範囲を広げながら、私の背丈を超えていく。



「言えなかった ありがとうも~

 いつか あなたに 届くようにと~♪」



 ――あぁ、やっぱり、この歌、涙が……!



 私が感極まって泣きはじめると、豆はさらにぐんぐん育ち、天を目指して伸びはじめた。



「わ、み、みやちゃん……!?」


「ストップ、ストップ! 歌姫ちゃん、歌止めて!?」



 二人の慌てる声が聞こえ、感極まって閉じていた目を開くと、達也がツルの中に巻き込まれ、一メートル近くも浮いている。



 ――あぁ、うそ!



 おどろいてすぐに歌うのをやめたけれど、豆の成長は止まらず、達也がどんどん上に上がっていった。



「あの、これ、どうしたら!?」


「何か、別のことを考えて、さっきの歌は忘れるのよ!」


 ――そっか、まだ頭の中で、歌が勝手に流れてるわ。


 ――別のこと、別のこと?



 私がアタフタしていると、豆のツルの中から達也が叫んだ。



「みやちゃん、ハンバーグだよ!」


「ハ、ハンバーグ!?」


「そう、中野通りにある、三好亭(みよしてい)のハンバーグを思い出して!」


 ――三好亭のハンバーグ……? あぁ、あの、ジュウジュウ熱い鉄板に乗って出てくる、肉汁たっぷりの……?


 ――歌のコンクールが終わった後とか、頑張った後によく、達也と一緒に、連れて行ってもらったなぁ……!



 頭の中が、三好亭のハンバーグ一色に染まると、伸び続けていた豆のツルが、ようやく成長を止めた。



「達也! 大丈夫?」


「うん、ごめん、ちょっと、枯らすね。 ダークボール!」



 タツヤが呪文を唱えると、さっきより随分大きい闇の球が出現した。


 達也の周りの豆が枯れ、達也は簡単に、豆のツルから抜け出してくる。



 ――さすが達也。もうさっきの魔法を使いこなしてる!


 ――良かった……。安心したら、三好亭のハンバーグ、食べたくなっちゃった……。



 ごくりと喉を鳴らした私を見て、「食べたくなった?」と、言いながら、少しニヤリとする達也。



 ――達也、やっぱり、私を食べ物で()って、日本へ連れて帰ろうとしてる!?


 ――油断できない!



 唖然あぜんとする私と、なんだか余裕な顔の達也を横に並べると、ガルベルさんは少し、あきれたような顔をして言った。



「歌姫ちゃん、やっぱり、あなた規格外ね。たぶん、歌のせいだと思うけど、消費する魔力量に対する魔法の威力がおかしいわ」


「そ、そうなんですか?」


「あなたは魔法を発動する訓練より、魔法を止める訓練をしましょうか」


「は、はぁい……よろしくお願いします」


「それから、タツヤ。闇属性使いは、悪いことをしてるって、気持ちがあると、闇に堕ちやすいわ」


「え!?」


「どんなに悪いことでも、悪気なくする分には良いんだけどね。悪用できそうで、簡単には出来ないのが闇属性魔法なのよ」


「そうなんですか」


「そうね。いいことに使ってますって、大義名分(たいぎめいぶん)があると安心よ。とにかく、ごめんね、なんて言いながら魔法を使うと危険だわ。自分は良いことをしてるんだって、思い込むようにしましょうね」


「なるほど……」



 ――えぇ……? 闇属性魔法、危険すぎない……?



 こうして、私達の魔法訓練は、魔法の暴発(ぼうはつ)や闇堕ちを防ぐ、イメージトレーニングへと、移行したのだった。



 そんなに魔力がないにも(かか)わらず、歌で魔法の威力が上がってしまう宮子。そんな宮子の魔法を止めるため、ガルベルが教えたのは、他の事を考えるという方法でした。そして、悪意を持って使うと闇に堕ちると言われている闇属性魔法に戸惑う二人。果たして二人は魔法を使いこなせるようになるのでしょうか。


次回、第15章第5話 そのまさかよ。~赤くなった水晶~をお楽しみに!



挿絵(By みてみん)

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[一言] 2人はいつの間にか魔法を使いこなしてるのですね笑 制御が訓練! 納得です! 楽しい時間ありがとうございました(*´ω`*)
[良い点] 魔法の練習、いいですね! とても面白い回でした。 ハンバーグで釣るなんて、宮子のことをわかっている達也だからできる技ですね!笑 面白くもあり、魔法の奥深さもあり、とても良かったです。
[良い点] 宮子は恐ろしすぎますね。歌うの禁止ですね。そして達也も達也で闇落ちしそうで危なっかしいという。全く、とんでもない、二人組を精霊たちは連れてきたものですね。面白くて読む分にはいいんですが。 …
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