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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第15章 一方的な愛

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03 二人の魔法合宿3~それ、慰めになってないよ~

 *************

 場所:ガルベルの小屋

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



「さ、最悪だ。(しお)れるなんて……。僕、闇魔道士だったの?」



 自分の放った闇属性魔法のダークボールにショックを受け、しょんぼりしてしまった達也。地面に座り込んだまま、頭を抱え込んでいる。


 私は彼を励まそうと、その顔を覗き込んで言った。



「で、でも、ライルとか、ガルベルさんだって、闇属性魔法を使うよ?」


「みやちゃん。それ、(なぐさ)めになってないよ」


「えっ、そ、そっか……?」



 慰めたつもりが、なんだか達也は、余計に落ち込んでしまった。


 そんな私達を見て、ガルベルさんは不満そうに眉間に(しわ)を寄せる。



「ちょっとちょっと。それ、どう言う意味なの?」


「あ、いえ……特に意味は……」


「ガルベルさん、魔法属性って、本当に変えられないんですか?」


「無理よ。言ったでしょ。向こうから一方的に愛されてるんだって。乗りかえは出来ないし、浮気もおすすめしないわ」



 達也は、祈るような(うる)んだ瞳でガルベルさんを見上げたけれど、彼女はそれに、ピシャリと答えた。



 ――本当なのかな……?



 それは、ミレーヌの体で、色々な属性の魔法を発動させていた身からすると、どうも、あまり、納得の行く話ではなかった。



 ――それじゃ、ターク様も浮気者ってこと? イーヴさんは? ガルベルさんは?



 かなり疑問ではあるけれど、普通は、一人で複数の属性魔法を使おうとすると、魔法の威力が極端(きょくたん)に落ちてしまうばかりか、最悪、両方からそっぽを向かれてしまうらしい。



「だけど、ガッカリしないで。闇属性魔法は危険が多いし、悪用されがちだし、イメージが悪いのは(いな)めないけどね。うまく使えば、普通以上に便利よ」


「おぉ、そうなんですね!」



 黙ってしまった達也の代わりに、大声で返事をする私。私達が知らないだけで、きっと闇属性魔法にも、素敵な使い道があるはずだ。


 期待を込めた瞳でガルベルさんを見上げると、彼女は得意げに話しはじめた。



「闇属性攻撃は相手の生命力を吸い取るからね! 攻撃力が高いのはもちろんだし、封印や、暗示、幻術みたいな各種状態異常も、闇属性なら大体可能よ。便利でしょ?」


「あ、そ、そうなんですね……」


「あとはちょっと高度だけど、重力魔法も闇属性よ。死ぬほど訓練すれば空だって飛べちゃうわ」


「死ぬほど……ですか」



 ターク様が、「この広い世界に、闇属性魔法で空を飛べるのはガルベル様だけだ」と、言っていたのを思い出し、私は「ははは」と、苦笑いを浮かべた。


 やっぱり闇属性は、あまり使う機会のなさそうな、少し怖い魔法が多いようだ。


 いつもニコニコフワフワの達也が、闇の微精霊に愛されるなんて、なんだか不思議な気がする。



「タツヤ、心配ないわよ。しっかり指導してあげるから、安心して?」


「ほら、達也。ガルベルさんがこう言ってくれてるから大丈夫だよ! それに、達也は何でも、上手くできちゃうじゃない! 覚えればきっと役に立つよ」


「みやちゃん……。そ、そうかな! ありがとう」



 二人で交互に(はげ)ますと、達也はうつむいていた顔を上げ、フワリと笑った。



 ――達也は、大丈夫そうね。



 その顔を見て、ホッと胸をなで下ろす私。


 小さい頃は、得意げに達也の世話を焼いていた私だけれど、気がつくと彼は、世話なんて焼けないくらい、優秀になっていた。


 その上、やさしくて、かっこいい彼は、こんな異世界にいたって、誰からも好かれる人気者だ。


 そんな達也を、私はあまり、心配することがない。



 ――いつの間にか、最大魔力もターク様と変わらないくらいになってるし、達也はまた、どんどん先に行っちゃいそうだわ。


 ――しっかり訓練して、ターク様の役に立ちたいし、私も頑張ろう。


 少しやる気を出した様子の達也を眺めながら、私は気合いを入れ直した。



「まぁ、微精霊達の愛はあまりに一方的で、不満なのは分からなくもないわ。だけど、逆にいうと、こちらから愛を返さなくても魔法は使えるのよ。微精霊を使うのに必要なのは、魔力と、呪文とか歌とか、意思疎通(いしそつう)する方法だけ。便利に使って暮らせば良いのよ」



 ガルベルさんがそう言うと、達也はキリリとして言った。



「分かりました。僕は闇の微精霊達の愛を、使いこなして見せます」


「それでいいわ」


 ――え? 言い回し、それでいいの!?



 言葉にすると、人間と精霊達の関係は、なんとも不思議だった。



 ショックを受ける達也に、闇属性魔法の有用性(ゆうようせい)を説明するガルベル。だけど、便利な生活魔法に期待していた二人には、あまり使い道がなさそうです。とは言え、宮子とガルベルに励まされ、闇属性を受け入れた様子の達也。闇属性魔法を使いこなす!と気合を入れます。


次回、第15章第4話 二人の魔法合宿4~別のこと、別のこと?~をお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言] 花車様おはようございます! 続きを拝読させていただきました! まずは達也の闇属性! なんとか励まされて元気になりましたが闇属性も悪くは無いかと…笑 昨日の話、花車様が風、俺が水…これはこれで…
[良い点] 精霊に愛されれば魔法を使えるだなんて、すごい世界ですね。 逆に愛されなくて魔法を使えない人もいるのかな、、なんて思いました( ´ ▽ ` ) 宮子は達也みたいに完璧な子じゃなくて母性本能を…
[良い点] たしかに愛を使いこなすなんて、不思議な言い回しですね。達也やガルベル様たちとのやり取り、とても面白かったです。そして闇属性、やっぱり恐ろしい。達也くんにピッタリの魔法ですね。 [一言] 人…
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