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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第15章 一方的な愛

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02 二人の魔法合宿2~魔法は愛よ!~[挿絵あり]

 場所:ガルベルの小屋

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



 私達は、ガルベルさんの小屋から少し歩いた場所にある、広い草原に移動した。


 とてもシンプルな、魔法の杖らしい木の棒を配られ、早速、ガルベルさんの魔法訓練が始まる。


 この杖は、あっても無くても良いらしいのだけれど、一応持っていた方が、初心者は魔法が発動しやすいのだとか。



「まずは、自分の魔法属性を知らなくちゃね。普通、魔法師が使える魔法の属性は、一人一つなのよ」


 人差し指を一本立てながら、そう切り出したガルベルさん。


 私達の周りに、複数属性を使う英雄が何人もいるせいか、ガルベルさんは、「普通」という言葉を、かなり強調した。



「魔法を使うには、願いや呼びかけに応えてくれる、精霊に愛されないといけないの。あなた達は、魔力ゲージがあるから、既に何かの精霊に愛されてるわ」


「わぁ、そうなんですか? 精霊って、シュベールさんや、ファシリアさんみたいな……?」


「そうじゃなくて、普通の魔法師は、空気中に溶け込んでいるような、小さな微精霊達に愛されているのよ」



 ガルベルさんが言うには、精霊はその力の強さによって、大きく分けて、微精霊、精霊、大精霊の、三種類いるらしい。


 目に見えるシュベールさん達は、この中では、普通の精霊に当たる。


 普通の精霊や大精霊は、微精霊より圧倒的に力が強いけれど、運良く出会い、愛される人はかなり(まれ)だと言う。


 普通の魔法師は、知らぬ間に何かの微精霊に愛されている。


 そしてそれは、イーヴさんやターク様が受けた愛と同じように、精霊達からの、かなり一方的な愛のようだ。



「私達には、断る権利もなければ、選ぶ権利もないわ。愛されたら、受け入れるだけよ」


「はぁ、そんなものなんですね」



 少し呆気(あっけ)に取られながらも、そう応えた私を見て、「ふふ、やっぱり、歌姫ちゃんは受け入れるのが早いわね」と、感心したように言うガルベルさん。



「普通は一属性しか使えないっていうのは知ってたけど、まさか属性を選べないなんて……」



 そんな風にぼやいている達也は、ちょっと納得がいかない、という顔をしている。



「まぁ、愛されるってことは、向いてるってことでもあるからね。どの属性も、使いこなせば便利なものよ。とにかく、何が出るか、試してみましょう」


「姿をみせろ~」と唱えながら、適当に杖を振るように(うなが)される私達。



 ――え、そんな適当な感じで魔法が使えるのはガルベルさんだけなんじゃ……?



 と、思ったけれど、微精霊はこっちを愛しているわけで、ちょっと呼びだすくらいなら、適当でも応えてくれるらしい。



「どうせなら、炎とか水みたいな、生活魔法が便利そうなのが良いな」


「風も便利そうだよ。私は何が出るかな?」


「みやちゃんは、可愛いから水とかかな?」


「もう、達也ったらそれ、口癖なの?」


「え? なんのこと?」



 軽いノリで女子を褒める達也に(あき)れつつ、まずは私が杖を振ってみることに。



「微精霊さ~ん、こんにちは。姿を見せてもらえませんか?」



 けれど、うんともすんとも、何も起こった感じがしない。



「あら? おかしいわね。あ、見て。足元にキノコが生えたみたいよ」


「え!?」



 そう言われ、足元を見てみると、シメジのような薄茶のキノコが、確かにひょろっと生えている。



「歌姫ちゃん、あなた土属性ね!」


 ――うはぁ……地味! 私にピッタリ。



 あまりの地味さに、ついつい苦笑いしてしまったけれど、もっと沢山キノコが出せるようになれば、キノコ料理には困らないかもしれない。


 座ってキノコを眺める私のとなりにしゃがみ込み、「可愛いキノコだね」と言って笑う達也。


 もはや彼は、何でも可愛いのかもしれない。



「達也もやってみて?」と、私が言うと、しゃがんだままの達也が、「姿をみせて」と、軽く杖を振った。



「何か出た?」


「あれ? キノコが、(しお)れた……」



 達也の振った杖の先から出た黒い球が、フワフワと飛んでキノコに当たると、私の生やしたキノコは、しおしおと(しお)れてしまった。



「あら? これは、ダークボールね。闇属性だわ」


「えぇ!? 僕のせい? ごめん、みやちゃん!」



 達也は萎れたキノコを見て、あたふたと慌て、私に謝ってきた。



「え? きにしないで? 大丈夫だよ!?」


「最悪だよ。萎れるなんて……僕、闇魔道士だったの?」



 まるで、苦虫を噛みつぶしたかのように、いーっと顔をゆがませた達也。そのまま頭を抱え、不安そうに声を震わせる。


 彼の手に握られた杖の先からは、うっすらと黒い、モヤが立ち上がっていた。


挿絵(By みてみん)

 ガルベルの魔法訓練が始まり、とりあえず適当に木の杖をふってみる二人。宮子は土属性、達也は闇属性ということが判明しました。宮子はすぐに受け入れましたが、達也はなんだか、ショックを受けているようです。


 次回、第15章第3話 二人の魔法合宿3~それ、慰めになってないよ~をお楽しみに!



挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] これは!? 達也の魔法は闇属性! そしてみやこはまさかの土属性! これは期待ですな(* ᴗ͈ˬᴗ͈)” 俺は属性迷うなぁҨ(´-ω-`) ちなみに花車様は何属性が好きなのかな(^ω^) 楽し…
[良い点] 土属性、確かに地味ですね(´・ω・) 一方で達也の闇属性は達也にぴったりです!笑笑 最近隠すことのない腹黒感が見え隠れしているので……笑笑 やっとこのイラストのあるシーンまで来られました╰…
[良い点] あはは、2人ともピッタリじゃないですか。宮子はどこかの誰かと属性同じなので更に、親しみが湧きました。そして、達也もぴったりじゃないですか。とても面白かったです。こういう自分を探る場面ってワ…
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