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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第14章 冬の到来

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05 本当のミヤコ?~白黒つける男になるぞ~

 場所:タークの屋敷

 語り:ターク・メルローズ

 *************



 ベッドの上でわめくタツヤを見た私は、「このままではいけない」という想いに背中を押され、立ち上がった。


 最近タツヤにやられっぱなしだったために、私はすっかり自信を失い、焦っていたようだ。


 タツヤの言った通り、私は彼女の話をしっかり聞いていなかった。



 ――価値観の違いか……。文化の違いはもとより、体が違うことが、そんなに重要な問題だとは、思わなかったが。


 ――タツヤが来てるってことは、きっとミレーヌも来てるはずだ。



 部屋を出た私は、すぐにミレーヌを見つけた。彼女は庭のすみで、タツヤが戻るのを待っていた。



「ミレーヌ、話がある」


「ターク様、こんにちは。どうかなさいました?」



 キョトンとした顔で私を見るミレーヌ。その仕草や表情は、表情豊かなミヤコに比べると、ずいぶん落ち着いて見える。


 奴隷として何度も売り買いされ、長くつらいゴイム生活を送ってきた彼女は、ミヤコよりかなり、大人びているのだ。


 そんな彼女を前に、私は「ふーん……」と、つぶやいたきり黙り込んだ。


 ――これが、本当のミヤコの体か。あらためて考えると、やはり不思議な状態だな。


 ――同じに見えるが、あのあふれる魔力を感じない。何というか、とても静かだ。


 ――しかし、ミヤコの体だというのに、私は、この体に触れたことがないな……。



 あの精霊の秘宝が眠る遺跡で、石の上に寝かされていたミヤコの体。触れようとした私に、タツヤは「触らないでね」とくぎを刺した。


 彼は、中身の有無に関わらず、この体を大切に思っているようだった。


 だが私は、ミレーヌの体に入ったミヤコに、毎日キスをしている。



 ――やはり、私はおかしいのか?


 ――ミヤコが嫌がっているのを知りながら、私はまた、強引に彼女を手に入れようとしていたようだ。



 自分の身勝手さに少々うんざりしながら、ジロジロとミレーヌを見る。


 そんな私を、不愉快そうに見上げた彼女は、警戒したように少し後退あとずさりした。



「ターク様、なんのご用でしょうか?」


「いや、すまない。つい考え込んでしまった。話というのは、他でもない。ミレーヌ、ミヤコに体を返してほしい」


「え? い、いやですよ。どうして、今頃、急に……?」



 逃げ腰になった彼女を、私はそっと、壁ぎわに追いやる。ミヤコと同じ、黒目がちな丸い目が、不安げに私を見上げた。


 しかし、彼女にこれを了承してもらわないことには、私はミヤコと結婚出来ないのだ。



「……なら、ミレーヌ、私が、お前の体に、その……色々してもいいのか……?」


「色々……?」


「だから、結婚したり、子供を作ったり、してもいいのか?」


「うわっ、やめてください」


「私は正直、体はどっちでもいいんだ。ミヤコでも、お前でも、中身がミヤコなら……」


「ダ、ダメです、ターク様、やめて下さい!」


「まっ、待ってくれ、ミレーヌ!」



 ――交換もダメ、そのまま結婚もダメ、これでは話しが先に進まないだろ!



 逃げ出したミレーヌを、慌てて追いかけようとした私の目に、見たことがないくらい赤い顔の、ミヤコの姿が飛び込んできた。



 ――わっ!?



 と思った瞬間、空から降ってきたライトニングソードが私をつらぬいた。


 心臓が止まるほどの電撃が全身に流れ、焼き鳥のように体が焼きあがる。倒れて地面についた指先が、すみになって砕け散った。


 それはもう、うめき声一つ出せないほどの衝撃だった。しかも、今の私は、すぐには回復しない。


 なぜかその場にいたガルベル様が、嫌々ながらにヒールをかけてくれるまで、私の体は地獄のように痛んだ。



 ――だめだ。心が回復しない……。



 あまりの衝撃に、体が治っても、私は起き上がることができなかった。



 ――なぜ、イーヴ先生の高度な必殺技をミヤコが……。お前には魔法習得の概念がいねんがないのか? 魔法属性はどうなってるんだ……。



 地面に額をこすり付けたまま、今更ながらにそんなことを考えていると、ミヤコの叫ぶ声が聞こえてきた。



「どっちでもいいなんて、ひどすぎます!」



 嫌な気配を感じて空を見上げると、無数のライトニングソードが、メルローズの街に降り注いでいた。


 慌ててミヤコの前に飛び出し、シールドを出したものの、こんな物では何も救えない。



 ――あぁ、分かった。どっちでもいいなんて、二度と言わない。私は、白黒つける男になるんだ。



 まるで世界の終わりのような光景を前に、私はその時、そんなことを考えていた。


 固まる私のとなりで、ガルベル様が空に向かって腕をかかげると、巨大な光のシールドがメルローズの空をおおう。


 そこに、バチバチと白く稲光をあげる剣が、次々に突き刺さった。



 ――シャイニングシールド!? しかも、無詠唱で……。



「いやだわ、温存してたのに。こんなに魔力を使わせないでよね」


「ガ……ガルベル様……。助かりました……」



 自分の街を恐ろしい魔女に救われ、安堵あんどの涙を流しながら、私は両手を地面につき、その場にしゃがみ込んだ。



ミレーヌを説得しようとしたターク様ですが、勘違いした宮子の魔法が暴発ぼうはつし、大変な事態に陥ってしまいました。その危機を救ったのは、ターク様に数々のトラウマを植え付けた、大魔道師ガルベル様でした。彼女に自分の街を救われてしまったターク様の運命や如何に。


次回、第14章第6話 ありあまる魔力。~彼女は自由!~をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] なんとかガルベル様のお陰でターク様は大丈夫だったようで。 でもミレーヌもミレーヌなのかみやこの身体を返したくない理由でもあるのだろうか( ⌯᷄ ·̫ ⌯᷅ก ) 続き楽しみに拝読させていただ…
[良い点] そりゃ勘違いもしますよね。というか勘違いではなかったような、、、。そのままストレートない受け止め方でしたよね。笑 もうターク様は一度お仕置きされちゃってください。笑笑
[良い点] うまく、ターク様が最低に仕上がっていて感服いたしました。実際、本当にどっちでもよさそうで、恐ろしい(汗)宮子という名前がついてれば、誰でもいいのではないかぐらいにボーダーレスに感じられまし…
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