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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第2章 退屈なゴイムとお疲れのターク

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04 意地悪ですよね?~こうなるとは思ってたけど~

 場所:タークの屋敷

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



 ターク様の入った湯には確かに加護の力が宿っていた。キラキラと発光し、美しく揺らいで、ズキズキと(うず)いていた痛みを和らげてくれる。毎日この湯に入っていたらかなりの効果がありそうだ。


 アンナさんに言われた贅沢なゴイム、という言葉が脳裏(のうり)に浮かぶ。



「まるで温泉ね。これは贅沢……」


「当然だ」



 声に驚いて顔をあげると、目の前にターク様が立っていた。



 ――ぎゃー! なんでまたいるのー!?



 叫びが声にならず口をパクパクさせると、ターク様は愉快そうにククッと笑った。どうやら意地悪をしにわざわざ来てくださったようだ。



「なんて顔してるんだ。おかしなヤツだな」


「なっ、なにか御用ですか!?」


「いや……、今夜は書類整理の予定だったが、やはり早く寝て魔力を回復させようと思ってな。お前にも加護を与えてやる。さっさと出てこい」



 そう言うとターク様はくるっと背中を向けてベッドルームに戻っていった。



 ――ターク様、達也とはやっぱり別人ね。達也は絶対こんなことしないわ……。



 ニヤリと不敵に笑うターク様と、いつもニコニコでフワフワだった達也をついつい比べてしまう。



「早く、出なきゃ!」



 とにかくターク様を待たせてはいけないと、気を取りなおし、急いで寝巻きを着る。



 ――でも、加護を与えてやるって……?



 最初の日にソファの上で、のそのそと密着してきたターク様を思い出すと、のぼせたように顔が熱くなった。



 ――治療とはいえ、あんなにキスされてしまうなんて……。


 ――昨晩も、ベッドに入ったとたん抱き寄せられて、おでこにキラキラの吐息をかけられたっけ……? どうしよう、恥ずかしすぎて無理!



 こんなことなら、ヒールをかけてもらえばよかったと、今更ながらに後悔がおしよせてきた。


 バスルームから出られずに、こっそりベッドルームを覗いてみると、ターク様のお怒りの声が聞こえてきた。



「遅い」



 少し不機嫌そうな顔をしながら、あの派手なベッドに横になっているターク様。


 被っていたシーツを持ちあげて、「ここへ来い」、という仕草をしている。



 ――やっぱり、また一緒に寝るんですか……?



 心のなかで叫ぶも声にならず、また口だけが動いてしまう。



「ふふ。お前、時々口だけ動いてるな。そんなゴイム、聞いたことがないぞ」



 ターク様は私の、驚いた顔が気に入ったらしい。とても恐ろしい(うす)ら笑いを浮かべてこっちを見ている。


 いくら神々(こうごう)しく輝くイケメンでも、そんな怪しい顔をされると近づけません、と言いたくなる。


 とはいえ、この部屋にはベッドがひとつしかない。昼間から正直、今夜はどこで寝ればいいんだろうと思ってはいた。


 ターク様が治療をつづけるつもりなんだから、こうなるんじゃないかという予想も、もちろんしていた。


 だけど、満身創痍(まんしんそうい)だった昨日とは違い、今日はなんだかとても恥ずかしい……というより怖い!



「治癒魔法が嫌なら加護で治療するしかないだろ。早く来い。湯よりもっと贅沢な加護を与えてやる」



 ――これ、入って大丈夫なの?



 正直逃げようかと迷ったけれど、この部屋から飛び出したっていく当てもない。またひどい目に遭うのもわかりきっているし、したがうよりほかに選択肢はないようだ。



 ――達也と一緒にお昼寝してると思うことにしよう。


「お、おじゃまします」



 ドギマギしつつもターク様のとなりに横になると、「もっとこっちへ」と、彼の腕が私をグイッと引き寄せた。


 近づくほどに癒しの光が濃くなり、まだ傷の残る身体を包み込む。


 さっきはあんなに疲れた顔をしていたターク様なのに、いまはなんだか、慌てる私を見て楽しんでいるようだ。



「お前、昨日は腫れすぎてわからなかったが、よく見ると面白い顔をしているな」


「お、面白い!? ですか?」


「ほら、その顔、なんなんだ? (みょう)だな」


「あの……意地悪言って遊んでますよね?」


「怒るなよ。悪い意味ではないぞ。ゴイムは無表情(むひょうじょう)なヤツばかりだからな、少し……驚いただけだ」



 眠そうにとろけはじめた顔で、ターク様が微笑んでいる。



「もう少し見ていたいところだが、今日はあっちを向いていろ」



 彼は私をくるっとひっくり返すと、背後から後頭部の傷に唇を付けた。



「早く所有者を思い出せよ」


「ひゃ……ひゃいっ」



 背中に触れるターク様の身体が熱くて、心臓が飛び出しそうにバクバク鳴っている。


 この音は彼に聞こえてしまっているだろうか?



 ――なんて心地いいの……? 苦痛も悲しみも全て溶けてしまう……。



 ドキドキしているのを(さと)られないように、私は息をのんで、じっとしていた。私の髪に、「くー、くー」と、ターク様の寝息がかかりはじめる。



 ――寝るの早っ。やっぱりお疲れなんじゃないですか。



 ターク様の光はくすぐったいし、明かりを消しても結構明るい。昼間もじっとしていた私は、なかなか寝付けそうになかった。



 ――ターク様を起こさないように、できるだけじっとしていよう。



 このベッドからはやっぱり、達也と同じ香りがする。


 ターク様の気配を背中に感じながら、私はまた、達也のことを思い出していた。

 宮子の顔を面白がってニヤニヤ笑うターク様。そのあまりの怪しさに身体が回復しつつある宮子は一緒に寝るのを警戒しますが、結局ベッドに入ります。


 ターク様も心配だけど宮子もちょっと心配ですね。でもターク様はやっぱり疲れているのか、すぐに寝てしまいました。


 次回、宮子は中学時代の達也を思い出します。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ターク様にお風呂姿を見られて加護まで与えられるとは、贅沢者ゴイムの宮子は幸せ者ですね。 彼の口ぶりを聞いていると、普通ゴイムが気になるところ。 ターク様は女慣れしているのか、それともゴイ…
[一言] おはようございます! 宮子はターク様の癒しにより寝てしまう。 宮子もそして、ターク様も完全回復を願って! 続きを楽しみに拝読させていただきますね(o^-^o)
[良い点] コーラー(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 弄ぶんじゃなああああいっ!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 完全に宮子にお熱じゃないですかっ!(喜ばしいけれど) マリルさんはどうするのおおお…
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