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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第14章 冬の到来

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03 ひどすぎます。~どっちでもいいターク様~

 場所:タークの屋敷

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



「ところであなた、そんなに制御不能で、攻撃魔法は大丈夫なの?」


「攻撃魔法は、まだ一度も出たことがないですね」



 ガルベルさんと庭を歩いていた私は、呑気のんきな顔で、そう返事をした。


 実際、この一年で、私がうっかり発動した魔法は全て、回復魔法か支援魔法のどちらかだった。



「あなた、腹が立つことってないの?」


「え? もちろん、ありますよ?」



 私がそう返事をした時、噴水のある庭の壁際で、誰かと話をしている、ターク様の後姿が見えた。


「タ……」と、声を発しかけた私の口をおさえ、ガルベルさんが私を木の影に引きずり込む。



 ――あれは、もしかしてミレーヌ?



 ガルベルさんに、口を押さえられたまま、木の影から顔を出し、ターク様の様子をのぞいてみると、彼と話をしていたのは、ミレーヌだった。



「ちょっと様子を見ましょ」



 ガルベルさんが小声でそう言って、なぜかこっそりと二人を盗み見る感じになってしまった。



 ――ミレーヌ、来てたんだ。会いに行こうと思ってたところだから、ちょうどいいわ。



 そんなことを考えながら、二人の様子を見守っていると、ターク様はなんと、ミレーヌに壁トンを繰り出だした。



 ――えっ、ターク様、まさかの人違いプロポーズ!?


 ――その子はミレーヌですよ?



 声を上げようとするけれど、口を押さえられていて声が出ない。


 ジタバタする私の耳に、ターク様の囁くような声が、途切れ途切れに聞こえてきた。



「……なら、ミレーヌ、私がお前の……してもいいのか……?」



 ――ターク様、人違いじゃなかったんですか!? それはそれで問題です! いったい、ミレーヌに何を……?



 ジタバタするのをやめ、必死に耳をますけれど、ミレーヌの声は小さすぎて聞こえない。


 ただ、彼女が猛烈もうれつに戸惑っているのは間違いなさそうだった。



「……私は正直、どっちでもいいんだ。ミヤコでも、お前でも……」


「だ、ダメです、ターク様、やめて下さい!」


「まっ、待ってくれ、ミレーヌ!」



 せまるターク様のわきの下をくぐり、逃げ出したミレーヌを追って振り返った彼と、バッチリと目が合う。


「ミヤコ……」と、おどろいた顔で固まるターク様を見て、一気に頭に血がのぼった。



 ――な、なんてこと……!


 ――私がプロポーズを断ったからって、ミレーヌを口説くなんて!


 ――それも、そんな、最低なセリフで!



 私が必死に身をよじると、ガルベルさんはようやく、私から手を離した。



 ――その言葉だけは、あなたの口からききたくなかったです!



 キーン! という音が頭にひびいたかと思うと、目の前が一瞬真っ白になった。強烈な稲光と共に、黄色くかがやく剣がターク様を貫き、ドゴゴゴゴーンっという、激しい雷鳴らいめいひびく。



「あらやだ! ライトニングソードが降ってきたわ。タッ君、大丈夫!?」



 ガルベルさんの慌てる声が聞こえ、私は頭を小さく横に振った。


 チカチカして合わない焦点を、目の前に落ちている、黒く焦げついた物体に合わせる。


 バチバチと電撃を放つ剣が突き刺さり、肉の焼ける嫌な匂いがして、もくもくと煙が上がっている。声の出ない私の代わりに、ミレーヌが叫んだ。



「ひゃっ、ターク様!? ミヤコ! なんてことなの?」


「わ、光が弱いからあんまり回復してないわ」


「ガルベル様、ヒールを、ヒールをお願いします!」


「もぅ、仕方ないわね!」



 ガルベルさんが、ターク様からライトニングソードを引き抜き、ヒールを唱えると、ターク様のお焦げは元に戻った。


 だけど、せっかくの王子様ファッションは、すっかり燃えてしまい、彼のたくましい背中が丸見えになっている。


 ターク様はショックを受けたのか、土の上にうつせに倒れたまま、動こうとしなかった。


 だけど、私のショックはそれ以上だったようだ。



「どっちでもいいなんて、ひどすぎます!」



 叫んだ瞬間、バチバチと稲光を上げる無数の剣が、メルローズの街に降り注いだ。



「ちょっと、歌姫ちゃん!?」


「ミヤコ……!? なんてことなの!?」



 ガルベルさんと、ミレーヌの叫ぶ声がひびき、倒れていたターク様が私の前に飛び出してきた。



「シャイニングシールド!」



 ターク様の光の盾が、私とミレーヌを守る。だけど、私の放った厄災やくさいは、街中に降り注いでいるのだ。



 ――あぁ、なんてこと……。ターク様の街が、消えてしまう。



 電撃剣ライトニングソードの放つ光で黄色くなった空を見上げ、私達は、立ち尽くした。



庭でミレーヌに何か囁いているターク様を見て、頭に血が上った宮子。彼女が落とした電撃剣はメルローズの街全体に降り注いでしまいました。メルローズ領の運命や如何に……。


次回は少し時間を戻し、ターク様の語りでお届けします。

14章第4話 気にならないの?~仕方のない恋敵~をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 花車様おはようございます! 今日はおやすみでしょうか꒰´ᴗ·̫ᴗก̀꒱? みやこもこれは大変な所を目撃してしまいましたね! ターク様の発言は本当の事だったのでしょうか? 続き楽しみに拝読させ…
[良い点] 暴徒化してしまいましたね(;ω;) うっうっうっ、宮子、でも宮子は悪くないよ(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) タークさまはいつも言葉が足らないよー!
[良い点] 素晴らしいですね。こんな最低なプロポーズ、初めて見ました。とても面白かったです。そして、宮子の魔法、感情に左右されすぎです。このとんでもない力が、宮子で良かったような気もしますが。そこを上…
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