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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第13章 冬が来る前に

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10 [番外編]カミル1~矛盾の多いサエラ様~

現在続編の執筆が19章まで来ています。そろそろ完結までエタらずに書けそうな気がしてきました。報告がてら、今回はカミルさんの語りで、番外編をお送りします。長いので二話に分けてます。


続編投稿開始まで、ぜひブクマしてお待ちください。十三章までの感想やレビュー、評価もお待ちしてます♪応援していただけると、きっと頑張れると思います。


続編の進捗状況は、Twitterの、固定ツイのリプにて報告しています。

https://twitter.com/koeda25032839

 場所:メルローズ本邸

 語り:カミル・グレイトレイ

 *************



 ――四年前。


 マリルちゃんが毎日のようにタークの所にやってくるようになって、半年ほど経ったあの日。


 十四歳の僕、カミル・グレイトレイは、いつものようにメルローズ家の門をくぐった。


 屋敷の一角にある訓練所に向かうためだ。


 髪に隠したシェンガイトを気にしながら、朝の光がまぶしいな、なんて、目を細めて歩いていた。


 そんな僕に、「ご機嫌よう、カミル」と、美しい声で話しかけたのは、タークの母、サエラ・メルローズ伯爵夫人だった。



「おはようございます! サエラ様」


「毎日、気を抜かず練習してえらいわ。タークにも見習ってもらわなくちゃいけないわね」



 元気に挨拶した僕に、少し悲しげな顔をするサエラ様。彼女を笑わせたくて、僕はタークのいい報告をした。



「最近はタークも頑張ってますよ。イーヴ先生の部隊に入れてもらって、早くポルールに行くんだって、張り切ってるみたいです」


「そうね……。困った子だわ。どれだけ私に心配をかければ気が済むのかしら」



 だけど結局、サエラ様はまた、悲しそうに眉根を寄せる。



 ――練習はしてほしいけど、ポルールには行ってほしくないなんて、相変わらず矛盾してるな。サエラ様。



 そう思って、少し眉を持ち上げた僕に、彼女は近付いてきた。



「カミル、今日、訓練が終わったら、私と街へ出かけない? あなたにお話ししたいことがあるのよ」


 なんだか、真剣な顔で、僕の手を取る彼女。


「あ、もちろんです。タークやマリルちゃんも誘いますか?」


「だめよ。二人でお話ししましょ」


「分かりました!」



 あまりにも珍しいその提案に、僕は心を震わせた。


 上品でやさしい彼女が、僕は大好きだったんだ。独り占めしてお話し出来るなんて、ウキウキ以外の何でもなかった。



      △



 僕が訓練所に着くと、珍しく先に来ていたタークが、なんだかヤケにブンブンと剣を振り回していた。


 こんな時のタークは、大体何か悩んでる。僕はもう、流石に分かっていた。悩んだタークはここへ、僕に会いにくるんだ。


 それに、悩んでる理由だって、だいたい分かっていた。


 少し面倒な婚約者をサエラ様に当てがわれ、まだまだ困惑していたタークは、マリルちゃんと何かあるたび、「どうしたもんだろうな」と、僕に聞いてきたからだ。


『母さんはなぜ、あんな子を僕によこすんだ?』と、その顔には書かれていたけれど、タークはそれを口に出さず、いつだって、うまくいく方法を考えていた。


「また甘い菓子を口に詰められたの?」と、僕がたずねると、「う……カミル。なぜわかるんだ?」と、不思議そうに、君は首をかしげる。


 まぁ、なぜ分かったかと言えば、昨日、マリルちゃんに、直接聞いたからなんだけど、僕はそれをタークに言わなかった。


 もっと言えば、昨日、マリルちゃんが、


「明日はターク様にアップルパイをお持ちするつもりなんですのよ! ターク様ったら、オヤツは嫌だっておっしゃられるんですもの。早起きして、朝食に間に合うようにしなくちゃいけませんの」


 と、言うのを聞いて、『あー、そう言う意味じゃないと思うんだけどな』って思ったけど、それも僕は、マリルちゃんに言わなかった。



「次はサンドイッチにしてくれって、昨日頼んだつもりだったんだけどさ。彼女、どうしたら、僕の話を聞いてくれるんだろうな」



 そんなタークの浮かれた恋愛相談なんて、僕はまったく乗る気が無かった。


 だから僕は、「知らないよ」と、返事をした。


 それから、サエラ様に街へ誘われた話をして、「うらやましいだろ!」と自慢してやった。



「なんだ? 心配だな。街は最近、魔物が出るらしいぞ?」


「大丈夫、魔物が出たら僕がやっつけるからさ」


「ずいぶん頼りない護衛だな。僕も行くよ」


「だめだよ。二人でって言われたんだからね」


 訓練の後、まだ心配に顔をゆがませているタークに、「絶対来ないでね」とくぎを刺して、僕はサエラ様の元に向かった。



      △



 街に向かう馬車の中、サエラ様は、何やら楽しげに話していた。


 それは、先週行った高貴こうきな社交パーティーで出会ったという、隣国りんこくクラスタルの王子か何か、位の高い殿下の話だった。


 彼はとても見目麗しく、立ち振る舞いも上品で、完璧だったと言うのだ。軽薄なところがなく、言いよる女性達にも失礼がないよう、丁寧に接していたらしい。



「カミル、あなたは私の娘も同然よ。六歳からずっと、成長を見てきたんですもの。だから、あなたには素敵な人と結婚して欲しいの。あなたにはああいう、慎重しんちょうなタイプがいいと思うわ」



 僕のイーヴ先生狂いをさとしたいらしく、他にもいい男はいるのだと、僕に言って聞かせるサエラ様。



 ――サエラ様は相変わらず、何も分かってないな。


 ――イーヴ先生は最高に素敵なのに。



 その時僕はそう思ったけれど、実際の彼女はもっと、色んなことに気が付いていた。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 花車様おはようございます! そしてサエラ様と一緒にお出かけしたカミル! 何が起こるのか!? 続き楽しませていただきます(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”
[良い点] どんなことに気がついていたのか、とても気になる終わり方ですね! 続きがとても楽しみです。 なんだか、ターク様たちって子供の頃から複雑な人生歩んでるんですね(;_;)と、ふと思いました。
[良い点] ここでまたクセツヨな人物がっ!そこもですか、まさか。カミルさんやターク様の幼い頃の当惑がよく分かりました。矛盾とか食い違いに子供は敏感ですよね。とても面白かったです。 [一言] サエラ様の…
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