表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第13章 冬が来る前に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/247

07 冬が来る前に3~異世界のメリークリスマス~[挿絵あり]

場所:タークの屋敷

語り:小鳥遊宮子

*************



 ルカラ湖で久しぶりに皆に会った夜、私とターク様は、メルローズの屋敷に戻って来た。



 いそいそとメイド服に着替え、ワゴンで紅茶を運んできた私を、ターク様は不満げな顔で見ている。



「ミヤコ、もういい加減、メイドはやめてもいいんじゃないか?」



 ソファーに座って紅茶を飲みながらも、そんな事を言うターク様。彼は私を、この部屋に戻したくて仕方がないらしい。



「そうもいきませんよ。このお屋敷は広くて人手不足なんですよ?」


「人手不足なら人員を補充するから、な?」



 私の手を引いて隣に座らせたターク様は、甘えるように私を見つめる。



「私の仕事を取らないでください」


「歌だって忙しいし、いいじゃないか? 屋敷にいるときはお前と一緒にゆっくりしたいんだ」



 軽々と私を引き寄せ、紅茶の香りがする唇を私の唇に押し当てる彼。


 アグスさんに貰ったベットを、隣のベッドルームに運んで以来、鎧を着たターク様はお部屋では殆ど光っていない。


 前は夢の中にでもいるみたいで、フワフワするばかりだった彼のキスが、光を流し込まれるという事もなくなって、なんだか妙にリアルに感じる。


 リアルなターク様は、控えめに言っていつもの十倍眩しい。



 ――ターク様とゆっくりしてたら私、どうなってしまうの!?



 ドキドキが大変な事になっている私に、「今日こそ私と一緒に寝てもらうぞ」と、今度は耳にキスをするターク様。



「ひゃん……わ、私、達也との約束が……」



 とっさに、「夜にターク君の寝室には入らないで」と言う、ずいぶん前の達也との約束を言い訳に逃げようとする私。


 当然ターク様は、不満げに眉を顰めた。



「あいつはあいつで楽しそうじゃないか? あんなに女達にチヤホヤと囲まれて……」


 ――そ、それは、同感です。



 黙り込んだ私を改めて引き寄せ、ターク様はキスの雨を降らせる。



「あいつの名前を出したりして、私を止めたいなら逆効果だって分かってるよな」



 そう言うとターク様は、ひょいっと私を持ち上げて、ベッドルームに運んで行った。



      △



「なんだかずいぶん明るくないですか?」


「そうなんだ。眠りにくくて困ってる」



 ベッドルームの奥に据えられたシェンガイトのベッドは、この一年ターク様の光を吸収し続け、キラキラと激しく輝いていた。



「最初は安眠出来ると思ったが、こうもベッドが輝いたのではな……。タツヤの研究はまだ終わらないのか? この魔力をゲートに使いたいと言っていたが……」


「そう言えば、これ、今日達也に渡されたんですけど。ベッドが明るくなったら押してみてって言ってました」



 湖のほとりで、達也に渡された小さなスイッチをポケットから取り出す私。



「なんだ?」


「聞いたんですけど、いいからいいからって渡されました」


「相変わらず肝心な事を言わないやつだな」



 よく分からないながらも、ポチッとスイッチを押してみる私。



「わ、なんだ?」



 明々と光っていたベッドがシュンっと黒くなり、とたんにベッドルームが暗くなった。



「あれ? なんだか外が明るくないですか?」


「メルローズの街が輝いているぞ……?」


「これは……。ターク様、屋敷の外に出てみましょう」



      △



 キョトンとしているターク様の手を引いて、庭から屋敷を見上げると、お屋敷は色とりどりの電飾で飾り付けられ、キラキラに輝いていた。



「サンタにトナカイって……これ、クリスマスイルミネーション……?」



 屋敷の屋根の真ん中には、でかでかとメリークリスマスの文字が輝き、屋敷に生えた大きな木は、まるでクリスマスツリーのように飾り付けられている。



「クリスマス……って何だ?」


「あっちの世界はこの時期こんな感じなんです」


「何の研究してるんだ。あいつ、本当に帰る気があるのか?」


「あはは……。でも凄いです。街中輝いてますよ! ターク様、街に出てみましょうよ」


「そうだな」



 私達は手を繋ぎ、ゆっくりとメルローズの街を歩いて回った。キラキラと輝くイルミネーションに、街中の人が驚いて通りに出て来ていた。



「りょうしゅさまみたいにキラキラだー」


「すごぉーーい!」


「ころぶなよ」


 子供達が喜んでターク様の周りを駆け回る。


「ひゃ、冷たい」


 手にひんやりした感覚がして上を見上げると、空から雪が静かに舞い落ちてきた。


挿絵(By みてみん)




 私のつたない小説にここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございます。


 この物語は一旦ここで完結としていましたが、いくつか番外編をはさみ、十四章から後編がスタートします。後編は、残されたいくつかの謎にせまりつつ、ターク様と宮子には、残された数々の問題をクリアして、しっかり幸せになって貰おうという感じです。


 そちらの方もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[一言] これはクリスマスバージョン!! ターク様とみやこめっちゃ幸せそうじゃないですか( ´˘` ) これはやはり癒されますなぁ! 楽しい話ありがとうございました!(´▽`)
[良い点] 前編お疲れ様でした。 ここまで楽しく読み進めさせていただきました。 挿絵もいいでするね( ◠‿◠ ) 幸せな気持ちになりました♡
[良い点] 達也の遊び心、良かったと思います。イルミネーション、きれいですよね。クリスマスにしちゃったのはご愛嬌ですが。そして、ターク様のヤキモチ焼き、見ていて微笑ましかったです。 [一言] グイグイ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ