03 凱旋パレード。~うっかり発動しちゃいました~
場所:王都
語り:小鳥遊宮子
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私達が街へ戻って五日程経った頃、戦いの終結を祝うパレードが王都で開催された。
大勢の人が詰め掛ける中、華やかに飾りつけられたゴンドラ船がポルールの戦いの英雄達を乗せ、ゆっくりと王都の水路を進む。
街道に集まった観客達が投げた色とりどりの花びらが舞い散る中、先頭を行くのは長い間第二砦で頑張ってきた大勢の兵士達が乗った沢山のゴンドラ船だ。皆キリリとした顔で国旗の旗を振っている。
その後ろの大きな船は、黄色い薔薇で華やかに飾り付けられていた。フィルマンさんとガルベルさん、イーヴさんも乗ってにこやかに手を振っている。ガルベルさんの肩の上には、ライルもちょこんと座っていた。
「フィルマン様ー! ガルベル様ーー!」
元々英雄だったフィルマンさんとガルベルさんの国民的人気は凄まじく、沿道からはもの凄い声援が上がっていた。
フィルマンさんを初めて見た子供たちは、その大きさに瞳を輝かせている。
フィルマンさんはその声援に剣を高々と掲げ、大聖堂の前にある彼の石像と同じポーズで応えた。
三十年前から見た目が少しも変わっていないと言うガルベルさんを久しぶりに見た国民達からは、驚きの声が上がっているようだった。
彼女はそのざわめきに、セクシーポーズと投げキッスで応えている。
そして、イーヴさんを見た女性達は皆黄色い歓声をあげ、失神して水路に落ちる女性が続出していた。
その度風になり女性を助けに行くイーヴさんに、周辺の女性がまた倒れてしまうようだった。
いくつかの兵士が乗ったゴンドラ船を挟んで、私とターク様の乗った船、その後ろには、マリルさんとエロイーズさん、さらに後ろにカミルさんとアグスさんの乗った船が続く。
マリルさんの乗った船は、真っ赤な薔薇で飾り付けられ、彼女が乗るのに相応しく、とても華やかだった。
マリルさんはいつもの自信に満ちた笑顔で沿道からの声援に応えた。そんなマリルさんを誇らしそうに見ているエロイーズさん。
カミルさんとアグスさんは仲良さそうに肩を組んで、にこやかに小さな旗を振っていた。
そして、私とターク様の乗った船は何故か、魔法で色付けされた青い薔薇で飾り付けられていた。
青薔薇の歌姫をイメージして飾り付けされたというけれど、ターク様も乗っているというのに、本当にこれでいいのだろうか?
「このパレードの主役はお前だよ、ミヤコ」
首を傾げた私に、そう言ってにこやかに笑うターク様。
彼が両手を高く掲げて振ると、沿道の観客達から、「うおぉーっ不死身の大剣士様ー! 青薔薇の歌姫様ーー!」と雄叫びが上がった。
少し圧倒されながらも、歌姫スマイルを振り撒き、出来るだけ上品に手を振る私。
「歌姫様ーー! 歌ってーー!」と言う掛け声があちこちから聞こえて来る。
「ミヤコ、歌ってくれるか?」
ターク様がそう言って私を優しく見つめた瞬間、ドカーンと花火が上がったように胸がときめいて、青い光が王都中を包んだ。
「ひゃん、ラストリカバリー発動しちゃいました。不用意に見つめちゃだめですよ、ターク様」
ヘタっと座り込んだ私を見て、ククっと楽しそうに笑ったターク様は、私を抱き上げて立たせ、すかさずキスをした。
――あぁ! 突然で強引!
全回復した王都中の人たちが大声で割れるような歓声をあげる中、パレードは進む。
街はまさに、お祭り騒ぎだった。
お祝いムードの王都で凱旋パレードに出た宮子達。ターク様に見つめられただけで発動してしまうラストリカバリーに、宮子はヘトヘトです。
次回、宮子とターク様は、達也の様子を見に行きます。




