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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第13章 冬が来る前に

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01 見放されたゼーニジリアス。~心底ホッとしたみたいよ~

場所:第二砦

語り:小鳥遊宮子

*************



 兵士達の宴がいよいよ盛り上がる中、私、小鳥遊(たかなし)宮子と、ターク様は、イーヴさんに声をかけられ、ゼーニジリアスの監禁されている牢屋に向かった。


 第二砦の地下に向かう螺旋階段を下りて行くと、「くそー! 早くここから出せ! 私を解放しろ!」と、男の喚く声が聞こえてくる。


 ターク様と顔を見合わせながらも、階段を下り切ると、牢屋を覗き込んでいるカミルさんとアグスさんの後ろ姿が見えた。その横には腕を組んで立っているガルベルさん、ファシリアさんも居る。



「まさか、タークを捕まえるためにアグス様に作らせた拘束具で、自分が捕まっちゃうなんてね、かっこつかないやつだよ」


「うーん、こいつが精霊と契約していたとはなぁ……」


「タークと違って、光ってないし一見分からないよね」



 どうやら、彼が契約していた相手が大地の精霊だった為に、彼は一見普通の人に見えたらしい。水の精霊の輝きも、泥になって消えてしまっていたようだ。


「私もファシリアに言われないと分からなかったわ」と、ガルベルさんが頷いている。


 もし気がついていたら、精霊の遺跡で会った時に、息子ではなくゼーニジリアスを拘束していたのにと、悔しがるアグスさん。


 あの日、お父様に拘束された事を思い出して、泣いていたターク様の事を考えると、私も本当にそう思う。


 カミルさんの後ろから牢屋を覗いてみると、拘束具をつけられた彼は、力無く床に倒れていた。眉だけはしっかり顰めて、必死に声を張り上げている。



「ふん、私はアクレアとドルゾレに愛されているんだ! 早く解放しないと、ここもすぐ泥にのみ込まれるぞ!」


『残念。アクレア姉さんもゾルドレ姉さんも、貴方にはもう、愛想が尽きたみたいよ』


「そんな……! 嘘だ! ドルゾレ……! アクレア……」



 ファシリアさんに呆れたように言い放たれて、ゼーニジリアスは絶望したように涙を浮かべた。



 ――一見イケメンっぽいのに、酷く残念な人だわ。



 そんな事を思っていると、アグスさんが男に向かって楽しそうに話しかけた。



「お前は私の実験のモルモットにしてやる。ふふん。お前がタークに与えた以上の苦痛を存分に味あわせてやるからな。楽しみにしておけ」


「わー! アグス様の実験、こわいよー? なんて言ったってしつこさが違うからね。ひゃー可愛そう!」



 ニヤリと笑うアグスさんと、アグスさん以上に楽しそうなカミルさん。


 さっきちらりと、カミルさんは時々、アグスさんの助手をしているのだと言う話を聞いたけれど、この二人は本当に気が合いそうだ。


「ひぃー」と涙を流すゼーニジリアスを、ターク様はただ、拳を握りしめて睨んでいた。




「だけど、精霊達は、どうして急に手を引いたの?」



 カミルさんが振り返ってファシリアさんに尋ねると、彼女は苦々しい顔をして答えた。


 彼女の話では、大地の精霊ゾルドレは長年ゼーニジリアスの言いなりだったけれど、本当は誰よりも心優しく、愛の深い精霊なのだそうだ。



『ニジルに濁流を強要されて、砦を押し流した事を後悔していたわ。ニジルが捕まって心底ホッとしたみたいよ。こんな顔だけの浮気男にほだされて困った姉さんよね』



 そう言ったファシリアさんを、イーヴさんが「ハハハ……」と引きつった顔で見ている。精霊と言うのは、かなりの面食いなのかもしれない。


「で、アクレアは?」と、尋ねるカミルさんに、ファシリアさんがまた答える。


 そもそも始めにゼーニジリアスと契約していたのは、水の精霊アクレアだったらしい。


 彼女はもともと、とても清らかな心を持っていたけれど、愛するゼーニジリアスと、妹精霊に裏切られた事を知り、怒りに任せて精霊の力を投げ出してしまった。


 長い間精霊の闇に苦しんでいた彼女は、ベッドの癒しの力で浄化され、我に返ったようだ。



『貴方の降らせた清らかな雨で、沼地に虹が架かったのを見て、水の在り方を思い出したって言っていたわ』



 ファシリアさんの言葉に、カミルさんは「へー?」と驚いた顔をした。



『姉さん、今は力を失っているけど、闇からは抜け出せたし、きっと回復するわ。カミル、良かったらたまに姉さんに会ってあげてくれる?』



「もちろん」そう、笑顔で答えたカミルさんを見て、ファシリアさんは嬉しそうにくるりと回った。


 そんな二人のやりとりを、精霊達って本当に人騒がせだな……と思いながら聞いていた私。


 少し前なら、どうしてそんな事に? と思ってしまいそうな話だけれど、ただ、好きな人と一緒に居たいという気持ちは、どうしようもなく膨れ上がるものだという事を、私は知ってしまった。



「結局、悪いのは全部ゼーニジリアスだね」



 カミルさんがそう言って、皆がうんうんと頷いたところで、私達は彼の管理をガルベルさんに任せ、その日は休む事にした。



 捕らわれたゼーニジリアスの様子を見に行った宮子達は、彼が精霊達から見放されたことを知ります。彼はこれから、アグスさんの実験のモルモット生活を送るようです。


次回、メルローズ領のターク様のお屋敷に戻った宮子達。帰りを待っていた達也とミレーヌは……?


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― 新着の感想 ―
[一言] 花車様おはようございます! ゼーニジリアスもこうなってはどうにもなりませんね! 後はみやこを元の世界に返すようにしていく事でしょう。 どうなるのか!? 今週も楽しませていただきますねd(ゝω…
[良い点] なんて人騒がせな精霊さんなんでしょう。 それだけ人に干渉する力が強いということですが、困ったものですね。 とりあえずモルモットで一件落着! でも、私は達也が心配です(;_;)
[良い点] 本当に悪いのはもしかしたら、移ろいやすい、心、というものもしれませんね。悪い作用も及ぼすけれども、これがないと人生、無機質になってしまうという。その心の、悪い特徴をゼーニジリアスは突いただ…
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