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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第12章 ドロドロの戦い

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12 忘れちゃ嫌です。~この気持ち、特大すぎる~

 場所:ポルール

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 ――うん、お料理食べよう。こんなときはやけ食いよね。



 ターク様に横を向かれた私は、テーブルの上にたくさん並べられたお料理を、盛れるだけお皿に盛った。


 それは、戦地の基地に並んでいるとは思えないような、豪華なお料理だった。


 ガルベルさんが、魔法をふんだんに使って調理してくれている間、私も歌を歌ってお手伝いした。


 生活魔法とやらをはじめて見た私の感動は、かなりのものだ。食材が空を飛び、切れたり煮えたり、驚くほど自由自在だった。



 ――ガルベルさんってすごい。



 今さらながらにそんなことを考えていると、私の周りに、兵士たちが集まってきた。



「青薔薇の歌姫様! 今日はありがとうございました! あの歌も、ラストリカバリーも、本当に素晴らしかったです」


「噂にたがわぬ美しさですね! 戦場に花が咲いたみたいです。あの、よかったら僕たちと、一緒に食べていただけませんか?」


「うふふ、ありがとう……」



 めったに褒められない容姿を褒められ、少し浮かれる私。


 ニコニコと兵士たちに歌姫スマイルを振りまいていると、「ミヤコ」と、後ろからターク様に声をかけられた。



「一緒にあっちで食べよう……」


「あ、はい! あ、ちょっと……?」



 ターク様に腕を引っ張られ、「ごめんなさいねー」と言いながら、兵士たちに手を振る私。


 ターク様は前を向いたまま、どんどん歩いていく。あまりに早足で、盛りすぎたお料理をこぼしてしまいそうだった。



「ターク様、どうしたんですか? ソーセージが転がっちゃいますよ」


「す……すまない。つい……」



 私たちは戦勝の宴に盛り上がる会場を出て、ずいぶん人気(ひとけ)のない場所まできていた。


 ベッドから遠く離れたせいか、ターク様がさっきより、かなり明るく光っている。



「ターク様はやっぱり、光っていたほうが、ターク様って感じがしますね」



 思わず変なことを口走ってしまったせいか、「あぁ。そうかもな」と呟いたターク様は、横を向いたままだった。


「一緒に食べよう」と、言ってくれた割には、お料理も持っていないし、少し不機嫌そうにも見える。



「どうしたんですか? なにかありました?」



 ターク様の顔を覗き込んでみると、彼は少し身を引きながら、顔を赤くして言った。



「いや……。お前が兵士たちに囲まれていたから……つい……妬いてしまった」


「ふぁっ……?」



 危うく料理をはなしそうになる私の手元を、「落とすなよ」と、抑えるターク様。私から料理のお皿を取りあげると、近くのベンチにそっと置く。


 それから、改まった顔で私の前に立ち、小さくひとつ咳払いした。彼の真剣な眼差しが、今度はまっすぐに私を見詰めている。



「ミヤコ、今日の礼をきちんと言えていなかったな……。今日は本当に、お前のおかげで助かった。お前がいなければ、この戦いは終わらなかった」


「そんなことは……。私、歌ってただけで……」


「いや、本当に助かったんだ。ありがとう、ミヤコ」



 少し照れながらも、優しく微笑むターク様。皆の前で恥ずかしい言葉を叫んだ私を、ウザがっていたわけではなかったようだ。


 私が少しホッとしていると、ターク様はジリッと私に歩み寄り、私の顔を覗き込んだ。



「ところで……ミヤコ。さっき、私を好きだと叫んでいたな……?」



 ――ぎゃー! それ聞きますか?



 思わずビクッと肩を揺らしながら、「はひっ……聞こえてました?」と聞き返す私。ターク様は「聞こえないわけないだろ……?」と、少し不満そうに首を傾げた。



「あれは……なんだ……?」



 ジリジリと近づいてくるターク様……。思わず少し後退りすると、ガシリと肩を掴まれた。



「信じていいのか? それとも……忘れてほしいのか?」



 なぜだか少し不安そうな顔で、私の真意を確認する彼。


 恥ずかしい……。だけど、街ひとつ包み込むほどの思いを、忘れて欲しいはずもない。



「わっ、忘れちゃ……嫌です」



 そう答えた私を、ターク様がふわりと引き寄せた。気が付くとターク様の腕のなかに、すっぽりと抱きしめられていた私。


 慌てる私の耳に、彼の切ない声が響いた。



「あぁ……。なんとかして忘れるつもりだったが……。あんなふうに叫ばれてはとてもできない」


「ひゃっ……ターク様……?」



 ――なに? この展開……!



 パニック寸前の私の耳元で、彼の甘い声が震えている。


「タツヤに塗り込まれた想いなんがじゃない……。私が、お前を好きなんだ……」


 ――う、嘘でしょ……? 本当に……?



 予想外の展開に、胸が飛び出しそうなほど高鳴っている。


 だって、あの告白は、私の恥で終わるはずだったのだ。


 いまではすっかり、贅沢になってしまった私。だけど、「はぁ」と、ため息のひとつでも吐いてもらえれば、そのうちきっと、気持ちも落ち着ついて……。


 想いを伝えられただけでも幸せだった、なんて思いながら、いつかは賢く日本へ帰る。そして、遠く離れた日本から、異世界にいるターク様の幸せを願うんだろう。


 そんなふうに思っていた。


 だけど、こんなに優しく抱きしめられてしまっては、溢れかえった気持ちを、止めることなんてできない。



「ターク様が好き! 大好き……!」



 少し腕を緩めて、熱っぽい瞳で私を見詰めたターク様。彼の切れ長の大きな目にうっとりと見惚れていると、その唇が、私の唇に重なった。


 輝く吐息を漏らしながら、愛おしむように優しくキスする彼に、身体がとろけてしまいそうになる。


 それは、いままでにターク様と交わした、どのキスともまったく違っていた。


 彼に求められている実感が、全身を駆け巡り、喜びが胸に押し寄せる。



 ――もう無理、意識が飛んじゃう。



 癒しの光を流し込まれた私の足元が、ふらりとふらつくと、ターク様は、慌てた様子で私をベンチに座らせた。



「すまない……我慢できなくて……」



 苦々しい顔をして謝るターク様。


 私がブンブンと首を横に振るのを見て、ホッとしたように笑う。



「好きだ……ミヤコ」


「私も大好きです。ターク様」


「まずいな。幸せすぎて顔がにやける……」



 私の前にしゃがみ込んだまま、真っ赤になって口を手で抑えたターク様。照れた彼は、心臓が止まりそうなくらい可愛い。



 ――この気持ち……特大すぎる。いまなら世界中でも癒せそう。



 私の隣に座りなおしたターク様が、私の前にガルベルさんの料理を突き出した。



「一緒に食べよう。慌てていて、自分の分を取り忘れたが……量は十分だな」


「はい……!」



 闇夜のベンチの上で、もぐもぐと料理を頬張った私たち。



 ――どうしよう、どうなるの? ごめん! 達也……。私、日本に帰れないかも……。



 ドキドキが止まらない胸に、少しずつ不安が込みあげはじめていた。



 突然、ターク様と両想いになってしまった宮子。トキメキが止まらない二人ですが、屋敷で待つ達也のことを想うと不安が頭をよぎります。


 次回からはいよいよ十三章です。


 この物語は、一度、十三章で完結しました。そのため、十三章は最終章のような感じになっておりますが、何話かサイドストーリーを挟み、十四章から続編がスタートします。そちらもよろしくお願いいたします。


 次回、宮子たちは捕まったゼーニジリアスの様子を見にいきます。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] おお! 等々ターク様もみやこも本心からお互いの気持ち伝えられそして…。 達也の事もありますのでどうなるのか!? 気になりますねぇ笑 12章一気読み楽しかったですヽ(*'▽'*)ノ さて俺には…
[良い点] たしかに、これは日本に帰れないかも(><) 読んでいて顔がにやけてしもうたです! でも、心配なのは達也(><) ここは一夫多妻制の反対で!(T ^ T)
[良い点] これは、言霊ですね、それも特大の。告白してしまったら、もう気持ちはそうなりますよね。なんてこった。達也が失恋?しちゃったでしょうか。面白いんですが、新たなドロドロの予感が! [一言] 宮子…
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