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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第12章 ドロドロの戦い

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11 癒しの加護、再び。~どうしてベッドなんですか?~

 場所:ポルール

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 満天の星が広がるポルールの空の下。


 第二砦の外に置かれたテーブルには、たくさんの料理が並べられ、皆がワイワイと食事をしている。


 泥だらけだった兵士たちも、さっぱりと体を流し終わって、会場には笑顔が溢れていた。カミルさんが再び、ウォーターボールの雨をふらせてくれたのだ。


 第一砦はまた壊れてしまったけれど、魔獣の消えたポルールは、とても安全なようだった。



「光ってるよね?」

「光ってますわね……」

「光ってますね……」



 鎧を脱いでシャツに着替えたターク様を見て、女子一同がポカンと口を開ける。


 すっかり不死身じゃなくなったはずの彼が、星空のもとキラキラと輝いているのだ。



「おかしい……。確かにシュベールは元に戻ったんだが……」



 不思議そうに首を傾げるターク様。


 そこに、ヒュンっと風を巻きあげて、ファシリアさんがやってきた。



「シュベールはね、自力で力を取り戻したのよ。タークに嫌われてないと分かって、嬉しくなっちゃったのね。感謝の言葉じゃ、念じても力は移動しないわよ。よかったわ! シュベールが元に戻ってくれて!」



 嬉しそうにくるくると回るファシリアさんを、イーヴさんがにこやかに眺めている。



 ――ターク様に癒しの力を与えた光の精霊さんかぁ。できることなら、一度会ってみたいかも。



 そんなことを考えている私の隣で、カミルさんが首を傾げた。



「なるほどね……。だけど、ターク。きみ、さっきは光ってなかったよね?」



 背後から「当然だ」という、渋い声がして振り返ると、いつの間にかそこに、アグスさんが立っていた。



「父さん、どういうことですか?」



 不意にお父様が現れて、少し緊張した顔をするターク様。



「分からんのか? 今日鉱山から引っ張り出したベッドだよ。あのベッドは、闇や光の力を吸収し、凝縮するレア鉱石、シェンガイトでできている。あの鎧を着て近くにいれば、お前の光は即座に吸収されてしまうというわけだ」



「アグス様、すごすぎます! どうやってあんな大きなシェンガイトを見つけたの?」


「ふふふ、カミル、私の技術と執念を舐めるなよ」



 瞳を輝かせてアグスさんを見上げるカミルさんの頭を、ニコニコしながら撫でるアグスさん。


 なんだか仲のよさそうな二人を見て、ターク様は眉を(ひそ)めた。



「だけど、あの巨大な闇のモヤを払うほどの力は、いったいどこから来たんですの……?」



 マリルさんが尋ねると、アグスさんは得意げに答えた。



「タークのあの鎧はな、癒しの光をすべて吸収していたわけじゃない。ほとんどはあの、ベッドに力を転送していたのだ。今日使った癒しの力は、七年かけて、タークがベッドに溜め込んだものだよ」


「わぁー! そうなんですの!? 素晴らしいですわ!」


「さすがアグス様! こうなることを見越してたんですね! 僕、本当に感動しちゃったよ!」


「いや……そういうわけでもないんだが……。研究途中で取りにいけなくなって、結果的にそうなっただけだ……」



 女子二人に力一杯褒められたアグスさんは、タジタジと後退りしながらも、嬉しそうに目尻をほころばせた。


 ラストリカバリーの影響なのか、今朝よりもずいぶん顔色がよく見える。



「だけど……どうしてベッドなんですか?」



 私が一番疑問に思っていたことを尋ねると、なぜか皆が口を閉じ、一瞬辺りが静まり返った。



「そりゃぁね……アグス様、タークにぐっすり眠って欲しかったんだよね」


「嫌ですわ、ミヤコさん。今さらそんな、わかりきったことを聞いて」


 ――えっ!? そうなの?



 思わずアグスさんの顔を見上げると、彼は顔を赤くして横を向いた。



「私は、不眠症と精霊の加護の関係性を、少しばかり研究していただけだ……べ、別に、タークのためってわけじゃないんだからな……!」


 ――パパさん、ツンデレなの!?



 思わず興奮してターク様を振り返ると、こちらも恥ずかしそうに赤い顔を歪めている。親子揃って可愛すぎないだろうか。



「五年前、これを渡すつもりでお前をポルールによんだんだがな……。タイミング悪く、鉱山に入れなくなってな……遅くなってしまった……」


「そうだったんですね……。あ……りがとう……ございます、父さん……」



 照れながらも素直にお礼を言うターク様は、本当にすてきだ。


 アグスさんは「ふん」と一つ頷くと、食事の席に戻ってしまった。


 なるほど、このベッドがあれば、ターク様は光らずに眠れるらしい。



 ――ターク様、よかったですね!



 ニコニコしながらターク様を眺めていると、私の視線を感じたターク様は、すっと横を向いてしまった。



 ――ガーン……。やっぱり……あの告白はさすがにウザかったかな……。



 皆を救うためとはいえ、あまりにも恥ずかしい黒歴史になってしまった愛の告白。思い出すだけで顔から火が吹き出しそうだった。



 ――うん、お料理食べよう。こんなときはやけ食いよね。



 そう思った私は、ガルベルさんの用意してくれた料理を取りに、すごすごとテーブルに向かった。



 不死身じゃなくなったはずのターク様が、再び光りはじめ驚く宮子たち。どうやら彼は鎧を着てベッドの近くにいると、光をすべて吸収されてしまうらしい。


 彼が安眠グッズを手に入れたことに喜ぶ宮子。しかし、そんな宮子から、ターク様は目を()らしてしまいます。


 次回は十二章最終話です。料理を取りに向かった宮子を、兵士たちが取り囲むと……。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど! アグス様はターク様の為にこのベットに密かに力を溜めれるようにしていたのですね! やっと平和を取り戻せた感がありますね! 安堵の皆様達。 本当に良かったですねヽ(*'▽'*)ノ
[良い点] なんやかんやと言われていたイケオジ様も、やはりターク様が大事だったんですね。 いつもに増して癒しの会で素晴らしかったです。
[良い点] 大団円ですね。とても雰囲気良くて楽しかったです。ターク様に告白してしまった?宮子はとても気まずいようですね。この先がどうなっていくか楽しみです。 [一言] 金にあかせてツンデレ道を邁進する…
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