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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第12章 ドロドロの戦い

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07 廃坑に隠された秘策。~ぎゃー!虫だらけですわ!~

場所:ポルール

語り:小鳥遊宮子

*************



 ポルール奪還の役目を終えた私、小鳥遊(たかなし)宮子と、カミルさん、マリルさん、エロイーズさんの四人は、アグスさんに連れられ廃坑の入り口に来ていた。


 第一砦が壊されて以来、使われていなかったこの坑道は、沢山の魔物が入り込み、まるでダンジョンのような状態になっているらしい。


「七年前、私が隠したあるものが、この奥にある。ポルールが陥落して以来、取りに行けなくて困っていたが、今こそあれが必要だ。お前達、手伝ってもらえないか?」


 少し切れ味の悪い話し方をしながらも、私達に頭を下げるアグスさんに、カミルさんが驚いたように首を傾げた。



「アグス様、いったい何を隠したんですか? 採掘の再開が目的じゃ無かったの?」


「黙っていてすまなかったな、カミル。私が坑道を使いたかったのは、あるものを運び出すためなのだ」


「一体何を……?」



 皆が首を傾けた時、ものすごい旋風が吹いて、風の中からイーヴさんが現れた。何だかとても、慌てた様子で、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっている。



「わ、イーヴ先生、タークに何かあったんですか!?」



 あの映画スターみたいな美しい顔がこんな事に!? と、動揺する私を他所に、カミルさんは慣れた対応だった。


 イーヴさんが言葉を発しないうちから、ハンカチを出して彼に駆け寄り、慣れた手付きで彼の顔を拭う。



「ぐふぅ……アグス様……タークが闇のモヤの中にっ……引きずり込まれてっ……ぐふ……精霊の、拘束具っでっぐひ……」



 興奮状態のイーヴさんを落ち着かせようと、カミルさんがイーヴさんの背中を(さす)っている。



「そんな……ターク様が……」



 私とマリルさんが、青い顔を見合わせると、アグスさんは、落ち着いた声で言った。



「あいつは、闇のモヤに耐性がある。不死身だし、どうという事はないだろう。それより、廃坑に入るのが先だ」



 アグスさんの冷めた態度に、イーヴさんがキッと目尻を吊り上げ食ってかかった。



「アグス様……タークは痛みや苦しみを感じない訳じゃないですよ」



 眉間に皺を寄せ、イーヴさんがアグスさんを見据えると、アグスさんは顔を(しか)め、声を(あら)げた。



「そんな事は分かっている。あいつの父親は私だぞ」


 驚いた顔で彼を見上げるカミルさん。


 ――何だかイーヴさんとアグスさんの間に、バチバチと火花が散っているような……!?



 イーヴさんの、ターク様への愛は本当に深い。アグスさんも、態度は厳しいけれど、きっとターク様を大切に思っているはずだ。


 アグスさんに睨まれたイーヴさんは、落ち着きを取り戻し、立ち上がった。



「アグス様、タークを救う方法を教えて下さい。貴方には秘策があるはずだとガルベル様が……」


「あぁ。任せておけ。とにかく遺跡の奥から私の隠したあるものを運び出すんだ。時間がない。話はそれからだ。イーヴ、お前は砦を守っていろ。代わりにベルを呼んでこい」



 こくんと頷いたイーヴさんが、ガルベルさんを呼びに戻って、私たちは、よく分からないながらも、とにかく廃坑に足を踏み入れた。



      △



 ――ターク様……ご無事でいてください! 貴方のお父様の秘策とやらで必ず助けますから!



 アグスさんを守るように、先を歩くカミルさん。


 エロイーズさんはマリルさんと私をガードしながら、キョロキョロと周りを警戒して歩く。



 ――いったい、どんな魔物が現れるの……?



 真っ暗な坑道を、マリルさんの炎が照らすと、壁にぎっしりとくっついている、大きな芋虫の大群が見えた。



「ぎゃー! 虫だらけですわ!」


「あひゃ……き、気持ち悪い!」



 悲鳴をあげる私とマリルさん。ここの魔物は殆どが昆虫型のようで

 サッカーボールくらいのサイズがある大量の蜘蛛やムカデが襲って来る。


 半べそ状態の私達とは反対に、カミルさんは「こんなのが怖いの?」と不思議そうな顔をしていた。


 彼女の専門は水属性らしく、水で出来た変幻自在の剣で、次々に魔物を倒していく姿は、ため息が出るほど美しい。


 それを見て、最初はビクビクしていたマリルさんも、「怖がってる場合じゃないですわね。早く終わらせて、ターク様をお助けしますわよ」と、激しい炎で魔物を燃やし始めた。


 やはり虫は火に弱いようで、気合いを入れ直したマリルさんは、本当に強かった。



 ――私はとにかく歌うのみ!



 アグスさんは迷う事なく秘策のある場所に進み、私達は順調にその場所にたどり着いた。



      △



「ここは、私の第二研究室だ」



 誰も気付かないような、岩の壁の奥に、隠されるようにその扉は存在した。重い重い鋼鉄の扉は、魔道具で厳重に封印されているようだった。


 アグスさんが石板に手をかざすと、大きな金色の歯車が回り始め、ゴゴゴ……と音を立てて扉が開く。



 ――え? まさか指紋認証? ターク様のお父様、凄い……!



 私達は口をあんぐりと開けながら、その扉をくぐった。



「ななな!? 何ですかこれは!? あり得ない……あり得ないですよ!? アグス様!」



 真っ先に叫んだのはカミルさんだった。


 目を輝かせた彼女の視線の先には、本当に、本当に意外な物体が置かれていた。




宮子達に坑道に入るのを手伝ってほしいというアグスさん。彼が七年前に隠したあるものとはいったい何なのでしょう。タークが連れ去られたと報告を受けた彼は、一見冷静そうに見えましたが、内心とても焦っていたようです。


次回はターク様の語りです。泥沼のモヤの中に引きずり込まれたターク様の前にゼーニジリアスが現れます。


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― 新着の感想 ―
[一言] アグス様に続き奥へと向かう一行。 皆も強いし回復にはみやこがいる! ターク様奪還の為! 果たしてどうなる!?
[良い点] 指紋認証もすごければ、何が置かれていたかも気になる展開ッ! それにしても、女の子は強いですね(●´ω`●) 私は虫なら逃げ出します(´・ω・`)
[良い点] アグズ様とイーヴ先生の対比がとても良かったです。関係性がしっかり構築されていてとても面白かったです。アグズ様は内心大慌てなんだろうなと、想像できますね。 [一言] 女の子3人の大暴れ、イメ…
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