04 回収失敗。~想いが伝わりますように~
場所:アーシラの森(精霊の遺跡)
語り:カミル・グレイトレイ
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ポルールの戦いは終わりが見えず、シェンガイト集めが難航したことで、アグス様は次第に思い詰めていった。
そして、三ヶ月前のあの日。
少しでも手持ちのシェンガイトを増やそうと、ついに遺跡の秘宝を回収する決心をした彼は、僕、カミル・グレイトレイに、遺跡への案内を頼んだ。
タークの光で闇を浄化された僕を、遺跡に連れて行くのはきっと心苦しかったはずだ。
それでもアグス様は、「よろしく頼む」と僕に頭を下げた。
闇に侵されない手袋と、秘宝を保管するための魔道具等をもって、遺跡へやって来た僕たち。
だけど僕たちは、秘宝の闇深さに手をこまねく事になった。
僕が身につけていたシェンガイトは、大きくても小指の先くらいのサイズだったけれど、ここの秘宝はリンゴくらいのサイズがある。
それなのに、遺跡の中は、既に闇に満たされた秘宝から、溢れ出した闇のモヤが充満し、そこから湧き出た魔獣で溢れていた。
僕達はまず、闇のモヤを新しいシェンガイトで回収し、次々に出てくる魔獣を魔道具で捕獲しながら、なんとか秘宝を回収しようと遺跡の中を進んだ。
だけど、僕たちだけではやはり、戦力不足だったようだ。
僕たちは、転送ゲートから現れた沼地の闇魔導師達に見つかって、呆気なく拘束されてしまった。
その後、アグス様と引き離された僕は、遺跡の地下牢に放り込まれたまま、何日も放置されていた。
アグス様がどうなったのか、そればかりを心配していた僕だけど、そのうち闇のモヤに当てられ、気を失ってしまった。
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次に気がついた時、僕はファシリアさんの小屋にいた。
ゆっくりと目を開けた僕のそばには、アグス様が座っていた。
「カミル、すまなかった。やはりお前を遺跡に連れ出したのは間違いだった」
ますます憔悴しきった様子のアグス様。
どうやら僕達は、ファシリアさんに遺跡から助け出され、何日もここで眠っていたようだ。
アグス様は僕を助け出すため、ゼーニジリアスに言われるまま、タークを遺跡に置いてきてしまったらしい。
「あぁ……ターク……すぐに助けに戻るつもりだったのに……」
オロオロと落ち着きのない様子のアグス様。彼もここ数日、気を失っていたようだ。
いつも辛そうだったけれど、こんなに追い詰められた顔の彼は見た事が無かった。
そんな彼を見て、ファシリアさんがタークの状況を伝えてくれた。
「タークならイーヴ達が助け出して、ポルールへ連れて行ったわ。ちょっと……落ち込んでたけど……まぁ……大丈夫なんじゃないかしら」
タークは一応無事だと言うファシリアさんの言葉を聞いて、アグス様は少し安心したようだった。
それから、僕たちが遺跡にいた理由を聞いたファシリアさんは、眉を顰めて言った。
「秘宝を持って帰るつもりだったの? あれは遺跡から持ち出されると困るわ。私達精霊には必要なものなのよ。それに持ち出したりしたら、呪われちゃうわよ?」
ファシリアさんが言うには、精霊の秘宝を遺跡から持ち出すと、秘宝から持ち主認定されてしまい、ゼーニジリアスのように闇に囚われ、ふらふらと闇魔道士を増やす結果になってしまうのだとか。
闇のモヤを吸っただけのシェンガイトとは違い、秘宝には大精霊の強力な呪いがかかっている。
精霊達はそれを封印された遺跡で護りながら、森の浄化に利用しているらしい。
ゼーニジリアスも何度もここの秘宝を持ち出そうとゲートを通って遺跡にやって来たけれど、流石に秘宝二つ分の呪いを受けては正気を保てないと、持ち出さず、闇魔道士を見張りにつけていたようだ。
そんなものを街に持って帰るのは危険すぎると、僕たちは、秘宝の回収を諦め、すごすごと王都に戻った。
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王都までの道中、青ざめた顔で嘆き続けるアグス様を、僕は懸命に慰めた。
「もうダメだ……タークから癒しの光を取り除いたら、何とかして仲直りしようと思ってたのに。嫌われた。完全に嫌われた……」
「アグス様、大丈夫ですよ。貴方の気持ちが伝われば、タークはきっと、許してくれますって」
「だが、あいつは……いつも怖い顔で私を見るんだ」
「アグス様、それは貴方もですよ……? あと、タークを呼びつけては追い返すのもやめた方がいいですよ」
「いざ、会おうと思うと緊張してしまってな……」
「乙女ですか?」
アグス様は、屋敷に帰ると、直ぐに物資や魔道具を荷馬車に積み込み、ミア達ゴイムを連れてポルールへ旅立った。
やはりどうしても、直接タークの無事を確認したいようだった。
――アグス様の想いが、いつかタークに伝わりますように。
――そして、この、意地っ張りな親子に幸あれ!
そんな願いを抱きながら、僕はアグス様を見送った。
遺跡の秘宝を回収しようとしたアグスとカミル。しかし、回収は失敗に終わり、気が付くと二人はファシリアの小屋に居ました。タークに嫌われたと嘆くアグスをカミルは懸命に慰めました。
次回は宮子の語りです。ポルール奪還のため第二砦から第一砦を目指す宮子達。ポルールは奪還できたのでしょうか。




