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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第12章 ドロドロの戦い

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04 回収失敗。~想いが伝わりますように~

場所:アーシラの森(精霊の遺跡)

語り:カミル・グレイトレイ

*************



 ポルールの戦いは終わりが見えず、シェンガイト集めが難航したことで、アグス様は次第に思い詰めていった。


 そして、三ヶ月前のあの日。


 少しでも手持ちのシェンガイトを増やそうと、ついに遺跡の秘宝を回収する決心をした彼は、僕、カミル・グレイトレイに、遺跡への案内を頼んだ。


 タークの光で闇を浄化された僕を、遺跡に連れて行くのはきっと心苦しかったはずだ。


 それでもアグス様は、「よろしく頼む」と僕に頭を下げた。


 闇に侵されない手袋と、秘宝を保管するための魔道具等をもって、遺跡へやって来た僕たち。


 だけど僕たちは、秘宝の闇深さに手をこまねく事になった。


 僕が身につけていたシェンガイトは、大きくても小指の先くらいのサイズだったけれど、ここの秘宝はリンゴくらいのサイズがある。


 それなのに、遺跡の中は、既に闇に満たされた秘宝から、溢れ出した闇のモヤが充満し、そこから湧き出た魔獣で溢れていた。


 僕達はまず、闇のモヤを新しいシェンガイトで回収し、次々に出てくる魔獣を魔道具で捕獲しながら、なんとか秘宝を回収しようと遺跡の中を進んだ。


 だけど、僕たちだけではやはり、戦力不足だったようだ。


 僕たちは、転送ゲートから現れた沼地の闇魔導師達に見つかって、呆気なく拘束されてしまった。


 その後、アグス様と引き離された僕は、遺跡の地下牢に放り込まれたまま、何日も放置されていた。


 アグス様がどうなったのか、そればかりを心配していた僕だけど、そのうち闇のモヤに当てられ、気を失ってしまった。



      △



 次に気がついた時、僕はファシリアさんの小屋にいた。


 ゆっくりと目を開けた僕のそばには、アグス様が座っていた。



「カミル、すまなかった。やはりお前を遺跡に連れ出したのは間違いだった」



 ますます憔悴しきった様子のアグス様。


 どうやら僕達は、ファシリアさんに遺跡から助け出され、何日もここで眠っていたようだ。


 アグス様は僕を助け出すため、ゼーニジリアスに言われるまま、タークを遺跡に置いてきてしまったらしい。



「あぁ……ターク……すぐに助けに戻るつもりだったのに……」



 オロオロと落ち着きのない様子のアグス様。彼もここ数日、気を失っていたようだ。


 いつも(つら)そうだったけれど、こんなに追い詰められた顔の彼は見た事が無かった。


 そんな彼を見て、ファシリアさんがタークの状況を伝えてくれた。



「タークならイーヴ達が助け出して、ポルールへ連れて行ったわ。ちょっと……落ち込んでたけど……まぁ……大丈夫なんじゃないかしら」



 タークは一応無事だと言うファシリアさんの言葉を聞いて、アグス様は少し安心したようだった。


 それから、僕たちが遺跡にいた理由を聞いたファシリアさんは、眉を(ひそ)めて言った。



「秘宝を持って帰るつもりだったの? あれは遺跡から持ち出されると困るわ。私達精霊には必要なものなのよ。それに持ち出したりしたら、呪われちゃうわよ?」



 ファシリアさんが言うには、精霊の秘宝を遺跡から持ち出すと、秘宝から持ち主認定されてしまい、ゼーニジリアスのように闇に囚われ、ふらふらと闇魔道士を増やす結果になってしまうのだとか。


 闇のモヤを吸っただけのシェンガイトとは違い、秘宝には大精霊の強力な呪いがかかっている。


 精霊達はそれを封印された遺跡で護りながら、森の浄化に利用しているらしい。

 

 ゼーニジリアスも何度もここの秘宝を持ち出そうとゲートを通って遺跡にやって来たけれど、流石に秘宝二つ分の呪いを受けては正気を保てないと、持ち出さず、闇魔道士を見張りにつけていたようだ。


 そんなものを街に持って帰るのは危険すぎると、僕たちは、秘宝の回収を諦め、すごすごと王都に戻った。



      △



 王都までの道中、青ざめた顔で嘆き続けるアグス様を、僕は懸命に(なぐさ)めた。



「もうダメだ……タークから癒しの光を取り除いたら、何とかして仲直りしようと思ってたのに。嫌われた。完全に嫌われた……」


「アグス様、大丈夫ですよ。貴方の気持ちが伝われば、タークはきっと、許してくれますって」


「だが、あいつは……いつも怖い顔で私を見るんだ」


「アグス様、それは貴方もですよ……? あと、タークを呼びつけては追い返すのもやめた方がいいですよ」


「いざ、会おうと思うと緊張してしまってな……」


「乙女ですか?」



 アグス様は、屋敷に帰ると、直ぐに物資や魔道具を荷馬車に積み込み、ミア達ゴイムを連れてポルールへ旅立った。


 やはりどうしても、直接タークの無事を確認したいようだった。



 ――アグス様の想いが、いつかタークに伝わりますように。


 ――そして、この、意地っ張りな親子に幸あれ!



 そんな願いを抱きながら、僕はアグス様を見送った。




遺跡の秘宝を回収しようとしたアグスとカミル。しかし、回収は失敗に終わり、気が付くと二人はファシリアの小屋に居ました。タークに嫌われたと嘆くアグスをカミルは懸命に慰めました。


次回は宮子の語りです。ポルール奪還のため第二砦から第一砦を目指す宮子達。ポルールは奪還できたのでしょうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] カミルはわかっているターク様親子の実の心の真実を。 ミア、そしてカミルの尽力にどうか…ターク様親子に幸せが戻りますように(´・ω・`)
[良い点] 乙女ですか? に笑いました(๑>◡<๑) パパンは、ちょっと不器用ででも、思いやりのあるパパンだったんですね*\(^o^)/*
[良い点] アグズ様の真意が見えてとても面白い回でした。ファシリアさんの活躍もさりげなく随所に渡っていたのですね。登場人物たち一人一人に弱みや抜けているところがあって、いつも楽しいです。 [一言] た…
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