表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第12章 ドロドロの戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/247

01 第二砦。~期待しているよ~

場所:第二砦

語り:小鳥遊宮子

*************



 まだ朝になりきらない薄暗い時間。


 メルローズから転送ゲートを抜けた私、小鳥遊(たかなし)宮子と、ターク様、マリルさん、エロイーズさんの四人は、第二砦の基地でガルベルさんに迎えられた。


 戦火に飲み込まれたポルールと、その南にある谷の間に、現在の前線基地のある第二砦は位置している。


 最初に目に入ったのは屋外に置かれた輿に集まる、たくさんの兵士達の姿だった。


 美しい程に無表情な少女達が、厳重に警備された輿のなかで、しゃん、しゃん、と鈴を振っている。



「真ん中の彼女がミアさんですのよ」と、マリルさんが少し切ない顔で教えてくれた。



 ギュッと唇を噛みながら、輿を見つめているターク様。大切な人が表情を失くしていく様子を、彼はいったい、どんな気持ちで見てきたのだろう。



「こっちへ来て。作戦を説明するわ」



 私達は輿の前を横切って、第二砦のなかに案内された。


「今だ! 撃てー!」と、兵士達に合図を送る大きな声が、石の壁に響いている。

 そこではたくさんの兵士達が、ターク様のお父様が作ったという魔導砲を、砲台からポルールで暴れている魔獣達に向けて撃ち放っていた。


 兵士達に指示を出しているのは、なんとカミルさんだ。私達に気付いた彼女は、屈託のない元気な笑顔を見せながら駆け寄ってきた。



「おーい、ターク! やっとポルールに戻って来れたんだね!」


「カミル、どうしてここにいるんだ!?」


 驚いた様子のターク様に、カミルさんは胸を張って答えた。


「えへへ。ガルベル様に連れてこられちゃった。第二砦は僕とアグス様に任せてよ!」


「いや、しかしお前、大丈夫か……?」


「平気平気。砦からは出ないし、イーヴ先生やフィルマン様もいるからさ。イーヴ先生、ファシリアの力で強さ十倍になってるからね! かっこよすぎて本当最高! 死んじゃうかと思ったよ!」


「うーん……興奮するのは分かるが、ケガするなよ」



 鼻息を荒げて話すカミルさんに、ターク様は心配そうに眉を(ひそ)めた。そんな彼を見て、カミルさんはテヘヘと笑っている。



「ところで、アグス様には会えたの? 君、聞きたいことがあったんだよね?」


 カミルさんがそう言った時、白衣姿の男が砦に入ってきた。


「父さん……」


 緊張した顔で呟くターク様。


 ――この人がターク様を拘束して敵に引き渡したっていうお父さん……? やつれてるけど、ターク様によく似てるわ。



 苦労を刻みつけたような深い眉間のシワは迫力があるし、ターク様にそっくりな切れ長の目も、なんだかミステリアスで悪役に見えなくもない。


 物凄く寝不足のときのターク様といった感じだろうか。顔色が悪く、クマやシワがある分、ターク様より重症に見える。


 ターク様の少し後ろから、アグスさんをこっそり観察していると、彼はターク様をスルーして、私に話しかけてきた。



「君がベルが言っていた青薔薇の歌姫か。歌うだけで皆の魔力を回復できるとは、全く素晴らしい力を持っているな」


「は、はひっ」


「私の魔道具を持ってしても、ミアでは回復量に限度がある。今日の作戦に君は欠かせない。期待しているよ」


「ひゃいっ」


 ――やだ。なんて渋くて優しい声。予想外すぎてメロメロになってしまいそうだわ!



 焦って変な声ばかり出してしまう私を見て、アグスさんは、ターク様にそっくりの笑顔で楽しそうに笑った。



「ふ、はは。面白いな君は」



 途端にターク様が私の前に立ち、アグスさんから私を隠すようにマントを広げた。



「父さん……ミヤコはあなたのものにはなりませんよ」



 鋭い目付きでアグスさんを睨むターク様。アグスさんは驚いたように眉を上げ、歪んだ笑顔を見せた。



「はは。これは怖いな。泣いて逃げ帰ったガキだとは思えんよ」


「く……」と息を漏らしたターク様を置いて、アグスさんは出ていってしまった。思った以上に、二人の溝は深そうだ。


 不機嫌そうに眉を(ひそ)めたままのターク様の顔を、カミルさんが覗き込む。



「ターク、そんなに食ってかかっちゃ、アグス様が可愛そうだよ。彼は君の為に全てをかけてるっていうのに」


「何の話しだ?」と、ますます眉をしかめるターク様。


「とにかく、今日の作戦を成功させて、坑道を取り戻そう。そうすれば全て分かるから。君ならやれるよ、ターク!」


「あぁ。もちろんだ」



 ターク様がどんなに沈んでいるときも、彼の活躍を信じて疑わなかったカミルさんの力強い言葉に、ターク様はキリリと表情を整えた。


 砦の砲台の向こう側には、体長六メートルの巨大な魔獣がうようよ(うごめ)いている。


 これから、このポルールを突っ切って、私たちは壊れた第一砦のある、沼地との境目まで移動しなくてはいけない。


 ゴクリと生唾を飲んだ私の背中に、マリルさんが手を添えた。


第二砦に着いた宮子たちの目に飛び込んできたのは、無表情に兵士たちの魔力を回復する、ゴイムの姿だった。心を痛めながらも砦に入った宮子に、楽し気に話しかけたアグス。しかし息子との関係はかなりピリピリしているようです。


次回は五年前のカミルのお話です。アーシラの森で、精霊の闇に堕ちたカミルを発見したアグス。二人はどんな話をしたんでしょう。


次の投稿は二十日七時になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[一言] 花車様おはようございます! 今日も楽しみにきましたよd(ゝω・´○) せっかくの休みは花車様の作品で楽しみたいと今こうしている時間が幸せです! さて、戦地へと赴く皆様達! なんと!みやこはタ…
[良い点] むむむー! ますます続きが気になりますね! やはりイケオジ様には理由があるよ、と。 次話が楽しみです!
[良い点] アグズ様にメロメロな宮子、面白かったです。渋い人が好みなのかなと。面白い一面、見せていただけて。砦って私、なんか好きで、ここでの攻防戦とても楽しみです。魔導砲に大きな魔獣、戦いの舞台として…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ