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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第11章 いざポルールヘ

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10 ガルベル様の作戦。~飛び出した無数の魔法陣~

 場所:タークの屋敷

 語り:ターク・メルローズ

 *************



「そんな訳でね、まずはやっぱり、第一砦を立て直そうと思うのよ。だけど、それにはどうしても、マリルンと歌姫ちゃんの力が必要なの!」



 客室に移動したガルベル様は、私達に戦地の状況を語って聞かせ、マリルとミヤコの必要性を熱弁した。


 彼女の作戦は、まず、マリルの燃える鉄壁で沼地からポルールへの魔獣の侵入を防ぎ、その間にポルール内の魔獣を一掃しつつ、第一砦を再建する、と言うものだった。


 砦の再建はガルベル様が、魔獣の一掃はイーヴ先生とフィルマン様が他の兵士達と一緒に行う。


 その間、マリルとガルベル様の魔力が尽きないように、ミヤコにはマリルの隣で歌っていて欲しいらしい。



「ね、簡単な作戦でしょ!? 二人の事は、何があっても私が守るから!」



 ガルベル様がそう言うと、タツヤが険しい顔で立ち上がった。



「冗談じゃないですよ。みやちゃんをそんな危険な場所で歌わせるなんて」


「私も反対です。彼女は異世界の住人ですよ。これ以上この国の戦いには巻き込めません」



 ミヤコとマリルは考え込んだように黙ったままだった。



「だけどね、これをやらない事には、ゼーニジリアスから秘宝を奪い取るなんて無理なのよ。あそこには特大の闇のモヤがかかってるでしょ? あれを取り除くには、ポルールを奪還して、坑道を使えるようにするしかないってアグスが言ってたわ」



 父さんの言う事を盲目的に信じるきらいがあるガルベル様は、採掘場の再開が全ての問題を解決すると信じているようだった。



「つまり、その作戦を決行しないと僕達は日本へ帰れないと……?」



 タツヤも神妙な顔で黙り込む。



 ――採掘場の再開であの沼地の巨大な闇のモヤが払えるなんて、意味がわからないな。


 ――父さんは採掘場を再開して金儲けがしたいだけじゃないか?



「アグスが言うんだから間違いないわよ」と、得意顔でそう言うガルベル様に、ミヤコが不思議そうに質問した。



「だけど、ターク様のお父様は、ターク様を敵に売ったんじゃないんですか……?」



 そうだった、今朝私は、ミヤコに抱きついて、泣きながら彼女にそう訴えたのだ。


 彼女の問いかけに、全員がポカンと口を開けて固まってしまった。


 あれがカミルを守るためだったとしても、本当に父さんを信じていいのか、私には全く分からない。


 私が事情を説明すると、ガルベル様は、しばらく黙り込んでから言った。



「もしかして、私やイーヴの悪口をゼーニジリアスに吹き込んだのもアグスなの?」



 不満そうに唇を尖らせるガルベル様。どうやらゼーニジリアスは、主力全員の弱点を父さんに白状させたらしい。



「ガルベル様、ゼーニジリアスに会ったんですか?」



 彼女は、今まで一向に姿を見せなかった彼が、自分達の留守にひょっこり現れた事に、かなり焦っているようだった。



「あいつ、第二砦が落ちない事に業を煮やして、いよいよ何か仕掛けるつもりじゃないかと思うのよ」



 頭を抱えたガルベル様を見て、マリルが真剣な表情をする。



「よろしくてよ。ポルールの奪還は皆の願いですもの。わたくしにしか出来ない事があるのでしたら、わたくし、頑張りますわ!」


「マリル……待ってくれ。ポルールはお前が思っているよりずっと危険だ。私は……」


「ターク様、アグス様は貴方のお父様ですのよ? 悪い方な訳がありませんわ。もし、アグス様が何か悩んでいらっしゃるなら、その問題を解決するためにも、早くポルールを奪還しましょう」


 マリルがそう言うと、黙っていたミヤコまで勢いよく立ち上がった。


「わ、私も行きます! 私の歌で、ポルールを奪還します!」



 彼女も時々妙に威勢がいい。私は頭から血の気が引いていくのを感じながら、ミヤコを見上げた。



「ミヤコ……待ってくれ、もうそれは言わないって約束したじゃないか……」


「黙って出て行くターク様との約束なんて、知りません!」



 ミヤコは口を尖らせて私から目を逸らした。今朝の事で、彼女はまだ怒っているようだ。



 ――だからって当てつけにポルールへ行こうなんて……。



 私が頼るようにタツヤを見ると、タツヤもただ青くなってミヤコを見上げていた。


「こうなったら手がつけられないんだよね」みたいな事を考えていそうな顔だ。変なところが自分にそっくりで気持ちが悪い。


 頭を抱える私の肩に、ガルベル様が手をかけて言った。



「タッ君、貴方は何でも一人で背負いすぎなのよ。心配なのは分かるけど、二人の力を信じてみて? 彼女達は凄い力を持っているわ。タッ君に守られてばかりじゃないのよ」


「また何か、僕に呪いをかけるつもりですか?」



 私は肩に乗せられた彼女の手を振り払い、立ち上がった。



「貴女は……僕を戦地に行けなくしておいて……ポルールで彼女達が危険に晒されながら戦っている間、のんびり屋敷で待っていろと言うんですか!?」


「タッ君……、ちょっと落ち着きなさいよ」


「マリルもミヤコも、守るのは私だ! もう呪いなんて冗談じゃない!」


 私は力の限りに叫んだ。


 次の瞬間、私の身体から、白く光る無数の魔法陣が飛び出し、空中で大きく広がったかと思うと、パリンパリンと音を立て、割れるように消え去った。


 身体中のあちこちが裂け、勢いよく血が吹き出す。それは本当に、とにかく凄い衝撃だった。


「あらやだ。暗示が解けたわ」


「まぁ! 何ですの!? この恐ろしい封印魔法の数は! 酷すぎます! こんなの、悪夢としか思えませんわ!」


 私を憐れみ叫ぶマリルの声を聴きながら、私は顔面から床に倒れた。


 いったいどれだけ強力に暗示をかければ、これほどの魔法陣が身体から飛び出すのだろう。私はまさに、がんじがらめにされていたのだ。


「ターク様! しっかりしてください……!」


 ミヤコの慌てる声が聞こえる。


 ――私は、もう、ポルールに行けるのか?


 次第に意識が遠のいて、私はそのまま、気を失ってしまった。



マリルと宮子を組み込んだポルール奪還作戦を話すガルベル。二人を心配して反対するターク様と達也ですが、マリルと宮子はやる気を見せます。ガルベルに肩に手をかけられ怒ったタークは自力で自分に掛けられた暗示を解いてしまいました。


次回、倒れたターク様の眠る傍で神妙な様子で話し合う宮子とマリルと達也。そんな中ターク様は寝ぼけて……。

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[一言] ガルベル様の呪いを解いたターク様!! 二人を戦地に行かせたくはなかった達也とターク様はどう出るのか!? そして二人はどうなる!?
[良い点] 胸熱な展開が続きますね! それにしてもみんな、我が強い!(いい意味で) 個性が立ってていいと今更ながらに思います。 大変面白いです。 明日も楽しみにしていますね♡
[良い点] 保護欲の塊のようなターク様でしたが最後の最後でやってくれましたね。暗示を自力解除するとは大したものです。不甲斐ないけど格好良いという、とても面白い状況でした。 [一言] アグズ様、すごい人…
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