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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第2章 退屈なゴイムとお疲れのターク

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01 退屈!~全てを禁止されたゴイム~

 場所:タークの屋敷

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



 ターク様の部屋に一人残された私、小鳥遊宮子は、ベッドの上で暇をもてあましていた。


「なにもせずに寝ていろ」と言われてから、もう三時間近くたっているだろうか。


 サーラさんも仕事に戻ってしまい、一応寝ようと頑張ってみたものの、少しも眠くならなかった。


 身体はまだあちこち痛いけれど、じっとしているのはどうも落ち着かない。



 ――ターク様のベッドが、派手過ぎるからかなぁ~。



 ベッドを抜け出した私は、バスルームで自分の顔を眺め、大きなため息をついた。


 右のおでこから(まぶた)にかけ、紫とも茶色ともいえない痛々しい色に変色し、こんもりと膨れている。


 もともとぱっくり割れていたことを思えば、これでもかなり綺麗にはなっている。


 けれど、顔のケガに気が滅入ってしまうのは、女子なら仕方のないことだ。


 ターク様は「心配いらない」と言ってくれたけれど、昨日の恐怖とこの先の不安はなかなか(ぬぐ)えなかった。そもそも、ターク様が面倒を見てくれると言ったのも、所有者が見つかるまでの話だ。



 ――なにかしていないと、余計に嫌なことばかり考えちゃうわ。



 私が鬱々(うつうつ)としているその間も、メイドのアンナさんは忙しそうだった。私に着替えを持ってきてくれたり、あちこち掃除をしたりしている。



 ――私は奴隷のはずだけど、こんなお客様みたいに、まったりしてていいのかな?



 忙しそうなアンナさんを見ていると、余計に不安になってくる。


 私は思い切って、書庫で本の整理をしていた彼女に声をかけた。



「あの、なにかお手伝いできることはないでしょうか?」



 だけど、アンナさんはサーラさんと違い、かなりとっつきにくい。


 落ち着き払った眼差しで、チラリとこっちを見たかと思うと、迷惑そうに私から目をそらした。それは少し、冷たいと感じるくらいの態度だった。



「ご主人様から、あなたになにもさせるなと言われてます。あなた、まだ顔がひどいですよ。じっとしていてください」


「そ、そうですよね……」



 あまりはっきり「顔がひどい」なんて言われると、つづく言葉が出てこない。彼女といい、ターク様といい、少し無神経なタイプなのだろうか。


 だけど、これくらいで引きさがるわけにはいかない。なにかやることを見つけないと、暇すぎて気力が奪われてしまう。



 ――そうだ、お料理はどうかな。クッキーを作って、ターク様やメイドの皆さんにお礼をするのは……?



 仕事の手伝いはダメでも、一人でなにかしている分には、問題ないんじゃないだろうか。そう思った私は、勇気を出してもう一度彼女に声をかけてみた。



「あのう、じゃあ、キッチンをお借りできませんか?」



 しかし彼女は、食い気味に「無理です」と言っただけで、振りかえってもくれなかった。



「はい……」


 ――ただ、少し恩返しができたらと思ったんだけど、まだ時期が早いのかな。



 しょんぼりしていると、アンナさんが手を止めて振りかえった。



「ミヤコさん、本当にあなた、記憶がないのね? ゴイムは基本的に、所有者が許可しないかぎり全てが禁止ですよ」


「えぇ!?」


「あなたのご主人様がだれだか知らないけど、許可する人がいないんだから、全て禁止ですよ。ここのご主人様にだって、それはどうすることもできません。許可を求められても困ります」


「そ、そうなんですか……?」



 彼女は「そうです」とだけ言うと、また忙しそうに手を動かしはじめた。



 ――全てが禁止って、そんな、理不尽(りふじん)な……。



 もっと詳しく聞きたい気持ちはあったけれど、これ以上仕事の邪魔をするのも悪い気がする。


 まだあちこち痛いのも事実だし、悪くして、懸命に治療してくれているターク様に、迷惑はかけられない。


 思いなおした私は、諦めて大人しくしていることにした。



 ――窓の外でも眺めていよう。



 それからは私は、メイドさんたちの邪魔にならないよう、バルコニーから外を眺めていた。書斎の隣の客室にある、ちょっとおしゃれなバルコニーだ。


 窓の外は見知らぬ世界だった。


 屋敷の周りは、広々とした庭園になっていて、すぐ下にはステキな噴水のある広場が見える。


 坂の向こうには、赤い瓦屋根の小さな家が立ち並ぶ可愛らしい街が見え、その向こうには砦と大きな川が見えた。


 屋敷に出入りする人々の()で立ちは、遠目でもここが異世界であることがわかるものだった。


 基本的には、シンプルなワンピースや、チュニックなんかを着ている人が多い。だけどときどき、鎧姿の人や、ローブ姿の人が、剣や杖を持って歩いていたりもする。


 それから驚いたことに、猫のような耳が生えている人の姿も見えた。あれはもしかして、獣人というやつだろうか。


 できれば外に出て、もっと近くで見てみたかった。


 バルコニーが飽きると今度は、ベッドルームの窓から外を眺めた。


 バルコニーとは方向が違うその窓からは、青々とした畑と、大きな森が見えた。


 暇な私は、もっと遠くの、外の世界にも想いを巡らせた。


 この世界に迷い込んでから、私はまだ、地下牢とターク様の部屋くらいしか見ていない。


 だけど、この世界にも街があり、国があり、異国があり、世界はまだまだ広がっているようだ。


 それも、世界の何割かの人は魔法が使え、街の外には魔物が出たりするような不思議な世界だ。



 ――どうせならもっと、観光気分で外を見て回りたいな。


 ――なんだか、一日がとても長いわ……。



 ため息ばかりが口からこぼれて、吐き出した空気で部屋が(よど)んでしまいそうだ。


 せっかくなら楽しいことを考えようと、一応努力もしてみた。


 だけど思い出すのは、いなくなった幼なじみ、達也のことばかりだった。

 ターク様の部屋で暮らしはじめた宮子。異世界に来たにも関わらず、なにもせず部屋にいろと言われ、まだケガが癒えきらないとはいえ、ひたすら退屈です。


 次回、宮子は暇に任せて幼なじみの達也との思い出を振り返ります。小学校編です。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 気分が滅入っているときに、何もするなは逆効果の時もありますね。 文字でも読ませて覚えさせるとか、そんなものがターク様から必要だったかと。 アンナもゴイムに対してかなり有情な対応です。 し…
[一言] 宮子ちゃんこれでは本当に退屈そうだなぁ。 まあでもまだ今はどうにもならないし厄介な事に巻き込まれても困るからな… 大人しくしていてください(゜Д゜=)ノ⌒
[良い点] もー!\\\٩(๑`^´๑)۶//// みんなして宮子にいじわるしたらダメじゃないっ! ゴイムゴイムって! 所有者不在で持て余しているのなら、宮子の所有者には私がなるっ!o(`ω´ )oむ…
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