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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第10章 事の真相

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11 絶対秘密よ!~それ、タークが怒りませんか?~

 場所:ガルベルの小屋

 語り:イーヴ・シュトラウブ

 *************



「イーヴ先生、なぜ僕はガルベル様の小屋にいるんですか?」



 起きてきたタークが、まったくいつもどおりのタークに戻っているのを見て、私、イーヴ・シュトラウブは顎が外れるほどに口を開いた。


 声にならない声でガルベル様を呼ぶと、彼女も口を開けたまま、黙って立ち尽くした。



 ――タークがもとに戻っている!



 タツヤ君が頑張ってくれたのだろうか? だが、あんなに日本に帰りたがっていたのに、彼はどうなってしまったんだろう。


 タークがもとに戻ったのは嬉しかったが、消えたくないと不安がっていたタツヤ君のことを考えると、私たちは手放しでは喜べなかった。



「ターク、お前は闇魔導師に捕まり、精神攻撃を受けたんだ。まだ調子が戻らないだろうからここでしばらく休もう」



 不思議そうな顔で首を傾げるターク。



「なぜイーヴ先生やガルベル様まで戦線を離れているんですか? ポルールはどうなったんです? 大丈夫なんですか!?」


「ポルールなら、フィルマンを置いてきたから大丈夫よ」



 ガルベル様がそう言うと、タークは不安に満ちた険しい表情をした。



「フィルマン様はもう二年も前から隠居(いんきょ)しているのに? イーヴ先生、僕に休養は必要ありません。早くポルールに戻りましょう。戻って戦わないと……!」


「ターク、お前はまだ本調子じゃない、焦ることは……」



 私が止めようとすると、タークは突然頭をおさえて暴れはじめた。



「いたた……頭が割れる……! だれだ! 私になにをしている!? この頭に響く音は……?」



 叫びながら頭を抱えてのたうちまわるターク。



「ちょっと、タッ君、大丈夫なの? 落ち着いて!」



 タークがテーブルをひっくり返し、テーブルのうえの花瓶が落ちそうになると、ガルベル様は花瓶とタークに魔法をかけ、その動きを止めた。


 テーブルと花瓶はすうっともとの位置に戻り、タークはゆっくりと床に倒れ、そのまま眠ってしまった。



「ガルベル様、タークにいったいなにを?」



 私が不安げな顔をすると、「スリープをかけただけよ」と、ガルベル様はため息をついた。



「一見普通に見えたけど、まだ様子が変だわ。タツヤも、タッ君の心を修復するのに何ヶ月かはかかるって言っていたし。その間、タッ君が戦線に出たがらないようにしないといけないわ」


「そんなことできるんですか?」


「暗示をかけるのよ。あなたはポルールで戦えなーい、やる気でなーいってね」


「そんなものがタークに有効ですか?」


「あら、知らないの? タッ君はこの手の攻撃にめちゃくちゃ弱いのよ。すっごく簡単にコンヒュやチャームにかかっちゃうし、一度かかるとずーっと効いてるの。いまだって簡単に寝ちゃったでしょ? 多分三日は起きないわ。私にチャームで連れ回されて以来、ものすごく警戒してて、あの鎧もあるから普段は効かないけど、油断してると全然ダメなのよね」


「そんなことして、タークが怒りませんか?」


「そんなの、絶対秘密に決まってるでしょ! 寝てる間にかけるのよ! あと、都合の悪い記憶は忘れてもらわなくちゃ」



 ――やっぱり怖い! この魔女!



 私が恐怖に震える瞳でガルベル様を見ると、彼女は「あなたの記憶も消してあげましょうか?」と、ゾッとするような恐ろしい顔をして、魔法の杖を私に向けた。


 私が震えている間に、ガルベル様はちゃちゃっとタークに暗示をかけてしまった。ステータスにも表示されないとは、本当に恐ろしすぎる。



「これでいいわ。とにかく、タッ君の言うとおりよね。あんな隠居したジジイに何日もポルールは任せておけない。私たちも早く戻りましょ。そしてタッ君はやる気が出ないのを自覚させてメルローズに帰らせるのよ。最低でも三ヶ月、しっかり休ませましょう」



 そう言うと、ガルベル様はまた、私とタークを両腕に抱え、(ほうき)にまたがった。

 達也の頑張りで幼児化状態が治ったタークですが、まだまだ不安定な状態でした。


 そんなタークを戦いから遠ざけるため、ガルベルはタークに戦地で戦えなくなる暗示をかけてしまいます。


 次回は宮子の語りになります。悩みに悩んでいた症状が、実はガルベル様の暗示が原因だった事を知ったターク様は……。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
あのPTSD的な症状は魔法の暗示によるものだったんですか! 確かにしっかり休んでもらうには好い手のように思われます。 でも、心や記憶をいじられたターク様からすると、いい気持ちはしないでしょうね。 続き…
[良い点] ガルベルの暗示によって、戦場恐怖症のターク様は更に頭を弄繰り回されてしまったのですね。 事情が事情ですが、恐ろしい魔女です。 しかし英雄が精神攻撃に弱いとは、思わぬ重大な弱点。 これは宮…
[一言] なるほど! ターク様の戦地に戻れない理由はガルベル様の魔法だったのか!? 続きを楽しませていただきます(*´︶`*)ノ
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