表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第10章 事の真相

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/247

09 魔女の涙。~もう、このままでもいい!~

 場所:ガルベルの小屋

 語り:イーヴ・シュトラウブ

 *************



 なかなか戻らないタツヤ君を心配し、私、イーヴ・シュトラウブが小屋の外に出ると、そこには(ひざ)を抱えて地面に座り込み、(あり)の行列を眺めているタークの姿があった。


 タークは私を見ると、にっこり笑って言った。



「イーヴせんせ! ぼく、ぎゅうにゅうのみたい!」


「幼いタークに戻ったのか?」


 私はタークに駆け寄ると、その肩を抱きしめオイオイと泣いた。


「せんせ! なぁに? くるしいよ」



 いつもキリリとしていたタークの表情が、こんなに幼く可愛くなってしまうとは……。私がタークに頬ずりしていると、様子を見ていたガルベル様が、私からタークを奪い取った。



「タッ君、お姉さんがわかる?」


「きれいなガルベルおねぇさん! ぼく、ぎゅうにゅうのみたい!」


「かっ……買ってくるわ! いますぐにね!」



 ガルベル様は目を輝かせてそう言うと、箒にまたがり、猛スピードで街のほうへ飛んでいってしまった。


 私はタークを風呂に入れ、ゴシゴシと頭を洗った。



 ――タークがタークなら、もうこのままだってかまわない。私が面倒をみるんだ。もう一度一から育てなおして、今度こそタークを英雄にするんだ。



 私たちが真っ裸で風呂から出ると、ガルベル様がポカンとした顔でこちらを見て言った。



「あなた達、私が着替えを買ってきてなかったらどうするつもりだったの?」


「まぁ血まみれよりは裸でいいかなと……」


「いいかな! あはは!」


「タッ君はいいけど、イーヴ、あなたは服を着なさい!」


「なぜですか!?」



 タークはガルベル様の買ってきた服を着ると、牛乳をガブガブのんで、「おいちー!」とにっこり笑った。


「か、かかか、可愛すぎる! タッ君、もうこのままでよくない?」


 ガルベル様はヨダレを垂らし、いまにもタークに襲いかかりそうだ。



「やめてください、ガルベル様、タークを守るためなら、私はあなたとだって戦います!」


「なんですって!? この弟子バカ! でもタッ君は私の可愛いタッ君なんですからね!」



 私たちが取っ組みあいを始めると、タークは腹をかかえてケタケタと笑った。



「イーヴせんせ! がんばって!」


「ちょっと、どうしてイーヴの応援なの!?」



 その夜、ガルベル様はタークのためにたくさんのご馳走を作った。タークは幸せそうにもぐもぐと料理を口に運んでいる。


 タークの笑顔なんて、最後に見たのはいつのことだろうか。本当に、本当に久しぶりに見た気がする。



「タッ君が不死身だからって、みんないろいろと期待しすぎなのよね。タッ君が笑っていさえすればそれで十分だってことが、私、いまわかったわ!」



 ガルベル様は、嬉しそうに目を細めてタークの無邪気な笑顔を眺めていた。



「ガルベル様……。だけど私は、やっぱりタークを英雄にしたいです!」


「そんなの、自分でなればいいでしょ? イーヴ、あなたやっぱりバカなのね?」



 食事のあと、眠そうに欠伸(あくび)をしたタークを、ガルベル様はベッドに連れていった。



「ガルベルおねぇさん、ぼく、ねむいのにまぶちいよ」


「そうね、でも、その明るいのはあなたを守ってくれる優しい光よ。安心して眠りましょう。子守唄を歌ってあげるわ」



 タークを寝かせると、ガルベル様は涙に濡れた顔で振り返った。長い間この恐ろしい魔女とともに戦ってきたが、彼女の涙を見たのはこれがはじめてだった。



 幼児化状態に戻ったタークを可愛がるイーヴとガルベル。長い間タークの笑顔を見ていなかったことに気づきました。


 昔はただただ可愛がっていたはずのタークに、しらずしらずのうちに期待をかけすぎていたと反省するガルベルですが、イーヴはやはり、タークを英雄にしたいようです。


 次回はターク様の語りになります。達也の覚悟をしり、ガルベル様が自分のために涙を流したことをしったターク様は……?


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
微笑ましいやりとりなのですが、幼児退行ターク様は見ていてつらいですね。 ガルベル様とイーヴ先生、ターク様に対するスタンスの違いが今後どう物語に影響していくのか注目したいところです。
[良い点] 牛乳好きなんですね。 いつものターク様もこのようにお願いすれば、イーヴたちは言うことを聞いてくれそうな感じです。 しかしイーヴとガルベルは求めるターク様像があり、厄介オタク同士喧嘩になりそ…
[一言] もうイーヴ先生とガルベルのターク様への愛ですね! でも二人の希望は違うようで… さてさて続き楽しみです(*´︶`*)ノ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ