番外編・「140部分に登場するマスターのランタン/製作記」
・簡単な注意書き
※今回の番外編の扱いは活動報告・あとがきに準じます。作中のキャラクターは出てきません。
※140部分「"竜母"」に登場するランタンの製作記のようなものになります。実際に製作されたデザインを反映させて、この番外編の投稿と共に一部改稿しています。
※写真を多用しているため、縦書きPDFなど、イラストに対応していない読み方を想定していません。
※その場合、なんか話の流れからしてここにそういう写真があるんだな、ぐらいの感覚でお読み下さい。
※リミッターは仕事を放棄しました。
今回は番外編で、「病毒の王」作中アイテムを実際に作ってみる製作記です。
細かい事はいいから、とりあえず何枚か見て下さい。
レベッカの羽根ペンと並べるとよく似合います。
世界観共通ですしね。
暗闇の中で光り輝く鉱石……うん、これが私の思う古き良き、そして現代にも通じるファンタジーの一場面です。
四面をガラスに囲まれたデザインのランタンゆえの反射は我ながら反則の一言。一つでも素敵なのに増えるだと。(前の写真でも増えてますけど)
ものづくりは素敵ですよね。
同時に、私は誰かが何かを作るのを見るのも好きなのです。
それをきちんとまとめて記事にしてくれたりしていると、素晴らしいの一言に尽きます。
だからそのー、どれとは言いませんが。
短文投稿のやつとか。
映えるやつとか。
それオンリーはとても寂しいです……。
検索に引っ掛かりにくい上に情報が足りない……。
小説にイラストや工作と、自分で色々やりたい姿勢を、古い個人サイトみたい、と評してくれた方がいましたが、古い人間なのかもしれません。
私は「こういうものを作ったよ」という記事が好きなのです。
好きなものを好きと語ってほしいし、この角度から見たやつが最高とかそういうの見ると好きという気持ちと同時に、幸せを共有した気がする。
なんなら頭の中から設計図から全部見たい。
実際にやるかどうかは別にして、やろうと思えば自分がそれを出来るという確信が欲しい。
ありとあらゆる技術と知識を見せてほしい!
……うん、虫のいい話ですね。
知識とは、技術とは、財産です。
何より時間は無限ではない。一生は短すぎる。
一々それを書いている時間は……きっと人生一個分では、足りない。
なのでそうしてみました。
――ああ、何かをつくるのってたっのしいなあ!
製作にあたって課した条件はたったこれだけ!
『低予算で』『特殊な技術や工具を可能な限り要求せず』『再現性のある』『新技術を可能な限り投入し』『作っていてなんか楽しい』事!
後半がおかしい気がする?
気のせいではありませんが慣れて下さると幸いです。
仕様です。
実際の所、ほぼ完全に『手段のためなら目的を選ばない』悪役ムーブなのですが。
何か作りたいものがあって、そのための技術を開発するというまっとうな思考ではなく。
思いついた技術を可能な限り同時に実装するために、このランタンは生まれました。
とりあえず私の願望が何かを破壊する類の物でなくてよかったとしみじみ。
そんなわけで、とりあえず概要を見ていきたいと思います。
まず本品は「ランタンユニット」と「クリスタルユニット」の二つに分離します。
さらにクリスタルユニットは「クリスタル外装」と「ライトユニット」で構成されています。
もちろん扉は開きます。ランタンですもの。
基本的には、ペーパークラフトと考えて下さればいいでしょう。
おおむね紙製です。
紙製でないのは、市販のソーラーライトを使用しているライトユニット部分、そして持ち手リング、窓部分のプラスチックパーツですね。
クリスタルユニットも紙製です。
まずランタンユニット、そしてクリスタルユニットと順番に解説していきます。
クリスタルユニットの材質について、何を言っているのか一ミリも分からねえって方は、先にクリスタルユニットの項を見てもよいでしょう。
・ランタンユニット
さて、設計って楽しいですよね。
ていうか設計図っていいですよね。
よってこちらが設計図になります。
※設計図1枚目。B4サイズを、アップロードサイズの制限に引っ掛かったため50%に縮小。
※設計図2枚目。B4サイズを、アップロードサイズの制限に引っ掛かったため50%に縮小。
※設計図3枚目。B4サイズを、アップロードサイズの制限に引っ掛かったため50%に縮小。
テキストやらイラストやら誤字チェックやらネタ出しやらの合間に心の中の妄想を、それらとは違う領分で展開するのは癒やしです。
基本的に素材は厚紙(ランタンの鉄製部分)で、赤で描かれている部分が窓になるプラスチック板……というかクリアーの下敷きですね。
本番外編にあたり、心の予算がかなり下りたので、贅沢です。
塗料代抜きで、約400円。
……贅沢ですよ?
前回は心の上役から予算が下りなかった事を考えると本当に贅沢です。
ゼロに何を掛けてもゼロと言いますが、逆に言えばゼロから400になったというのはとてもとても増えたという事です。
なお、塗料代は計量出来ないので、計算に入っていないわけですが、それでも実費ならかなり少ないのではないですかね。
さて、まずはメインの材料を一つずつ見ていきたいと思います。
今回はほぼ百均ですね。近所というのが一番大きいのですが、全て100円で、とりあえず全て射程圏内というのは大きいです。
低予算とかプチプラとか、そういう言葉が大好きです。
色々考えながら店内をうろつくだけで三時間ぐらい経っていたりします。
たまにこれいいなと思ったものが100円でなかったりするのはあるあるネタですけど。
ホームセンターやら手芸屋も好きなのですが、どちらかと言えば小規模製作になるので、そんなに大量には要らないかな……と思う事もしばしば。
[B4サイズの黒厚紙0.5mm厚三枚セット]:とりあえず100円(余りあり)
定番工作用アイテムって感じですね。
厚みが素敵です。
その厚みに泣かされる事になるのですが。
[A4クリア下敷き]:100円(少し余りあり)
あの頃はこれを敷いて勉強したなあふふ……ってな感じに数年後昔を懐かしみそうなアイテム。
下敷き使わない派でしたけど。
ほぼ四分割にぶった切られます。
……学生さんにまっとうな用途で使われる未来もあったろうになあ……。(憐憫のまなざし)
[バッグ持ち手リング]:2個入りで1つ使用。50円。
お洒落なバッグになりそうな手芸用アイテム。
すまない。お洒落なバッグは諦めてくれ。
さて、これらを設計図……というか展開図通りに描いて切り出します。
妄想を形にしていくのも、きっちり引かれた線も好きです。
でも目が疲れる……。
クリアー下敷きも切断。最初はカッターで切り出していたのですが、途中で「あれ? これハサミいけるんじゃ?」と思って試してみたら普通にいけたので随分とはかどりました。
とりあえず両面テープで仮止めしながら、仮組していきます。
ここで実は仕様変更がありまして。
大活躍したのはホチキス様……あー、ステープラーが正式名称でしたっけ。
まあホチキスでいいですよね、うん。
……で、ホチキス様を使用しないでこれを組もうとしたやつがいるらしいんですよ。
どうして設計段階でホチキスが想定されていないのか……現場を知らない奴はこれだから……。(本人)
折り目を付けて折りましょう。0.5mm厚は折り目を入れても辛いぐらいです。
この素材を選んだ上でこのタイトな設計……現場の苦労を知らない奴の設計だ……。(本人)
後で他の道具と一緒に画像がありますが、折り目付けには、ネイルアート用の道具がいい感じ。
上のピラミッドっぽい三角屋根は、こんな風に展開されます。
……実はこの三角屋根、もっと尖っているはずでした。
当初のイメージと違うのに、裁断して折って組んでようやく気が付いたのですが、これはこれで可愛いよねという結論に達しました。
材料は一応失敗を前提に余裕を持たせてあるのですが、とりあえず早く組みたかった。
実際スタイリッシュさは減りましたが、これはこれで普及品感がして可愛いとは思います。
この後、ミスは気にしないことにして先端分を適当に切り欠きます。
これは一部塗装後ですが、こんな感じ。
そして紙巻きワイヤーを用意。園芸用品ですね。(予算計上外)
ランタン上部のリング接続部位ですが、グルーガンで黒グルースティックを盛っています。
黒グルースティックは、本品製作にあたって3本半ほど消費。
100円で20本入っているので、4本としても20円ぐらい。
全体に溶接痕を表現するのと同時に、補強のために各接合部にグルーガンでグルーを盛っていきます。
その前に、ランタンの屋根の強度に不安を感じたので針と糸で縫います。
縫います。
当初の設計でどうやって強度を確保するつもりだったのか、最早私にも分かりませんが、きっとこんな風に現場の工夫で色んな事が支えられているんだろうなあってしみじみ。
……『支えられてしまっている』とも言う。
ここに前後して塗装です。
ちなみに設計図の「裏打ち」というのは、後ろ側の補強用パーツですね。グルーガンで接着されていますが、こちらも塗装します。
下準備として、金属表現を少し追加します。
「ハンマーで叩いた跡」を選択。
ところで、ハンマーの跡をどうやって出せばいいと思いますか?
私は、ハンマーで叩けばいいと思います。
今回は叩くというかタオルの上で押しつけるぐらいの控えめに。
紙が、肉叩きで叩いた肉のように強度不足になったらと思うと怖いので……。
作業の時間が、夜遅かったというのもあります。
リップクリームの容器でも同じような跡がつきますが、力を入れにくいですね。
塗装前の下準備としてもう一つ、ガラス部分(クリア下敷き部分)にはマスキングテープを貼っておきましょう。
隙間とかに入り込んだ汚れは味と割り切る事にしましたが、塗る時に一々ガラスの汚れを気遣いながらは無理です。
ところでこのマステ貼る時に、手で千切ると上手くサイズが合わず、かと言ってハサミを使うと時間がかかる。
ああ、セロハンテープホルダーみたいなマステホルダーがあればなあ、とため息をつき。
……セロハンテープホルダーが目に入り。
試してみたら、無改造ではまった。(↑写真)
さて、マスキングが終わったらいよいよ塗装。
使用したのはアクリル絵の具とアンティークメディウム!
さらにおいで頂くのは、戦場の神ことメラミンスポンジ。
戦場の名は台所ですが。
攻撃力が高すぎて、テフロン系のコーティングなどに使えないなど、意外と使い勝手が悪かったりもしますが。
まあそんなに小回りの利く神様なんていたら今みたいな世界になっていませんよね。
これは全部が終わった後の惨状……じゃなくて写真ですが、メラミンスポンジでの塗装はすごくいいですよ。
絵の具をつけてポンポンと叩いていくだけで金属表現が出来る優れものです。
さらに今回パレットには卵パックを使用。昔、紹介されているのを見て一度やってみたかった。
ちょっと底の形状に無駄を感じる時もあるけれど、深さがあって小分けされていて、惜しげなく使える耐水容器は本当に便利です。
塗装中は両手が塞がるので写真があまりありません。
とりあえず順番と雰囲気だけ。
表記がないものはアクリル絵の具で、全部メラミンスポンジです。
1.黒。ポンポンと叩くようにまんべんなく。
2.銀。こすれたり剥がれたりしそうな端をこするように塗る。黒よりは控えめに全体にポンポンとも。
3.茶。銀と同じですが、最初の手順を銀と同じ箇所に。表面が傷付き内側が覗いてしまい、そこから錆びていくという雰囲気です。
4.黒。もう一度ポンポンと。さびっさびにしたいなら要りません。
5.アンティークメディウム。少しアクリル絵の具と勝手が違うので、少しパレットや新聞紙などでこすりつけて落とした方がいいかも。引き延ばしたりしてもいいです。ポンポンしつつ、やはり端をこすったりしていきます。
6.もう一回黒をポンポン。
以下好きなように繰り返し。私はこれで終わりましたが、茶(ほぼ赤錆色)とアンティークメディウム(実質茶色)でもっと錆びさせたり、黒で落としたりしてもいいでしょう。
実は、ちょーっとだけ金が混ざっています。
取っ手部分の工程に関わる話です。
まず、取っ手の設計がクソだったので放棄しました。
よって、急遽現物合わせででっちあげる事になったのですが。
しばし考えた末に、なんか中途半端長さが余った針金を、ピンバイスでガラス窓(クリア下敷き)ごと穴を開けた扉部分にねじ込み、ぐりぐりと形作った上にグルーを盛りました。
現場の工夫で支えられているなあ。
その後金色の絵の具を、ある程度パレットや新聞紙などにこすりつけて落とした後に塗る……技法で言うとドライブラシに近い塗り方をするとこんな感じに。
で、金色が余ったので、端っこに目立たないように錆と混ぜて塗ったのです。
取っ手にはその上からまた軽く余った黒を足しています。
取っ手と対になる金具は厚紙を切っただけ。
ボタン付けの要領で留まっていますので、回転します。
……取っ手を固定していると言うより、取っ手に固定されているというのが正しい。
全体的に、ある程度塗ってからグルーを盛っているので、グルーには赤錆と銀がなかったりします。
それもあり、色鉛筆の赤ですこーしだけ赤錆色を足していますが、その前の写真と見比べても制作者本人が分からんレベルです。
リングの固定部分は大体普通にグルーガンで塗っていけばいいのですが、リング固定パーツ辺りは工夫の塊だったり。
ていうか紙巻きワイヤーをベースにグルーで出来ているのでグルーの塊。
……固定方法もグルーガンに頼ったとも言う……。
三角屋根パーツは四角く穴を開けているので、そこから針金が下に出せるようになっています。
そこからグルーを注ぎます。まず針金を固定。
さらにねじってまとめて、そこにもグルーをたっぷり。
外れるもんなら外れてみやがれというぐらい、グルー漬けにします。
その後、天井板を張ってあるので、この穴は見えなくなります。
ちなみに、なんかカラスみたく見えるのは端切れです。
少しでもグルーの節約にならないかとゴミ箱代わりに放り込んでみたが効果は目に見えないし、邪魔しそうな気もするので止めた方がいい気がする。
さて、実は底部に四つリベットがあります。
こんな感じですね。
底は強めに錆を入れています。
泥が跳ねたり、水分が底を伝って少し残ったりするだろう、という思考に基づいています。
このランタン自体のコンセプトが「物凄く高級品ではないが、使い捨てられるほど安くはなく、現場で大切に扱われている一般アイテム」なので、たまに整備されつつも基本ボロっとしているだろうな、という感じ。
さて、『くるみボタン』というものをご存知でしょうか。
ボタンを、ボタンの二倍ぐらいの布でくるんで縫えば、それでオリジナルの布ボタンが出来るという手芸の定番アイテムです。
好きな布で自分だけのお気に入りのボタンを作って下さいね♪
……という感じで締められたりしますが、この場合は。
黒い布で自分だけの好きなサイズのリベットを作って下さいね♪
……となります。
つまり、この底部リベット布製で、手作りくるみボタンなんですよ。
さて、リベットではなく溶接で形が作られている設定ですが、蝶番付近にはリベットが使われています。
まずこの蝶番ですが、完全に自作です。
ええと、設計図一枚目、「A-2」の下辺りですね。
画像で見てもらった方が早いでしょう。
厚紙で出来てますよ。
……ところでこの蝶番、きっちり「折りしろ」が取ってあるんです。
違う人の設計だよね? という印象すら受けるのですが、強度を考慮していないのでホチキス様に頼らねばいけない辺り、やっぱり同じ人の設計だこれ。
……高さ15mmを5mmごとに三分割? 無茶言うな。
ちなみに縫うつもりだったみたいです。
実際この蝶番を扉とランタン本体へ接合する際には、縫った後グルーで補強しているのですが、一度固定しないとちょっと無理な繊細極まるパーツ。
ホチキス様を使うと何かに負けた気がします……。
なお、接合部の棒ですが。
設計図にはなくて。
メモを見ると。
芯に何か、と。
芯に何か。
……何か?
何かってなんやねん……と現場が頭を抱えた事は言うまでもありません。
ちなみに最終的に採用されたのは、ちょっと写真で見えていますが、つまようじですよ。
さて、この蝶番に採用されているリベットですが、黒厚紙を3mm径で切り抜いたものです。
使用された道具はこちら。
どれがどれかは察して頂くとして。
ネイルアート用の道具、ピンセット、ペンチ、目打ち。
そして革用の穴開け器です。
ごつい、径をリボルバーのようにかしょん、かしょん、と切り替えていくメカニカルな構造が心をくすぐって仕方ない、割とガチめの道具。
『特殊な技術や工具を可能な限り要求せず』とはなんだったのか、と聞かれれば「可能な限り」及び『新技術を可能な限り投入し』の部分を盾にするとします。
で、これは『穴開け用の器具』であって『打ち抜いた丸いものを手に入れるための器具』ではないのですが、挟んでぐっと力を入れるとパチン! と気持ちいい音を立てて円が抜かれるので、これをリベットに使用します。
貼り付けるだけですけどね。
この道具は、実は母方の祖父のものなのです。
だった、と言うべきでしょうか。
彼は、私が物心つくまえに亡くなっていて……陽の当たる縁側で腕に抱かれているような記憶があるのですが、それは、写真から作り出されたものなのかもしれません。
自分より年上の、けれど未だ現役のこの道具を使う時、ふと、祖父はこれでどんなものを作っていたのだろう、と思ったりもします。
おじいちゃん。貴方の孫は元気で――
頭をよぎる、自分が書いている小説の事とか、ていうかもっとダイレクトにこの製作記の事とか。
……貴方の孫は元気で、変な物を作っていますよ。
・クリスタルユニット
まずはライトユニットから。
[ソーラーライト]:100円。(杭部分は余る)
杭打ち式のやつですね。
ソーラー部分が光センサーになっていて、暗くなると光ります。
ひっくり返して使うので、つまりスイッチを入れていると常時光ります。(普段は充電も兼ねてこれだけ外します)
元々ろうそく系のライトを使う予定だったのですが、クリスタルの外装を通した光が圧倒的にこちらの方が綺麗だったので、仕様変更と相成りました。
軽く余った塗料で錆を入れたり文字っぽいものを入れています。
これは、仕様変更で、1.5倍近く大きいこちらを使うことになり、どうやってもちょっとはみ出るから。
こんな風なシンプルな構造ですが、外装はあると便利な事も多いのでそのまま。
中身に針金を仕込んでいます。
巻くのが結構大変でしたが、ぺたりとテープ留めしただけの簡易仕様。これは、後の設計変更に耐えられるようにとの配慮でもあります。
……ちなみに、以前見た解体写真はボタン型電池だったり……。
見た目同じ商品でも、たまに変わってるみたいです。
性能差は謎。
さて、この針金で、ランタン下部に仕込んだ六連フェライト磁石とくっついています。(画像はテスト時のもので、磁石がランタンに固定されていません)
フェライト磁石は、25個入り100円の品。品切れだったのもさもありなんという素敵商品です。
19個余っているのですが。
直径18.8mm、厚さ4.6mm、重量約7gの品。設定状鉄製の本品があまり軽くても恰好がつかないので、少し持ち重りさせるためのウェイトも兼ねたパーツです。
ちなみに六連なのはサイズに併せると、この数と並びでないと上手く並ばないという。
磁界とか関係してるんじゃないかと思いますが。
下部に仕込まれていますが、その上には薄茶の紙を適当にアンティークメディウムでよごしたもの。ほぼ見えないのですが、少し隙間があるので。
魔法陣部分ですが、クッキングシートを折りたたんだ状態で切り抜いて、ステンシルプレート化したものでベースを描き、それに加筆しています。
こちらは今回実装に至った試験技術の中で一番上手くいかなかった部分。
むしろ本体を貼るべきだという結論が出ています。
理由は、「抜かれた文字を塗装する」という役割を持つステンシルプレートが「折りたたまれているせいで若干歪んでいる」から。
とはいえ、それはそれでなんかぼやけたのが味だったので、正四角形二つ45°ずらしたのを加筆しておきました。
さて、クリスタル本体です。
材質ですが。
半紙一枚で出来ています。
もちろん私に半紙一枚でファンタジー鉱石を折り紙する技術はありません。
ペーパークラフトの一種ですね。
こちらが設計図になります。
※クリスタル設計図。A4サイズ。
……狂気を感じる……。
いや、何を今さらとか、お前が言うなって感じなのですが。
とにかく、この散っていった試作機を元に完成した設計図を元にペーパークラフトです。
ランタン展開図は数字を元に手描きしましたが、こちらは半紙の上にこの設計図のコピーを置いて、針で穴を空けて、その穴と穴を繋いでいくという手法を選択。
ペーパークラフト出来たら底面に針金を仕込みます。いつから家にいるのかも分からないやっすい紙巻きワイヤー大活躍だな。
さて、半紙への彩色ですが。
マーブリングをご存知ですか?
墨流し、でもいいです。
基本は、絵の具を水に浮かべ、その模様を紙に転写する技法ですね。
なので、その基本を採用したいと思います。
「濡れ半紙」と言えば「防御が紙」の言い換えです。引き上げるのが強度的に不安しかないので、放置する事にしました。
水彩絵の具の緑を溶いています。濃度は右上ぐらい。
緑っていう割に青っぽいんですけど。
186時間経過したものがこちらになります。
……いや、40時間ぐらいで乾燥していたんですが。
こればっかりやってるわけでもなく、はよ組みたいなあと思いつつ放置していたら、計算してみるとこんな時間に。
ちなみに容器はお菓子の缶の蓋です。
まずは、緑の色鉛筆で先端部など軽く塗ってみたり。……先に仮組してしまって力を入れられず、効果の程は謎です。
次に、とりあえずスティックのりでのりしろに従って組みます。
紙巻きワイヤーを下部のりしろ部分に仕込み、端に切り込みを入れます。
そして4つの三角柱(?)パーツを差し込んでいきます。
一応こんな風に止まります。
そして切り抜いた残りをバラバラに引き裂きましょう。
というわけで、次に実装する試験技術はコラージュですよ。
バラバラの素材も、表現したい題材もないから、ちぎり絵の方が正しいかもしれません。
ちぎるサイズは、大きめの方がしやすいですが、大雑把になります。
細い三角は、実は一部の設計をここでも破棄して一部を切り欠いた名残なのですが、割と模様として映えるので、一部をそういう風に切ってもいいかもしれません。
のりしろはもう少し人工的な鋭角がない方がナチュラル感が出るのですが、何しろ半紙ですので、うっかり他のパーツ引き裂くリスクと天秤に掛ける必要があります。私は日和りました。
ちなみに『正面』を決めてデザインしているので、正面にのりしろはありません。
全角度からの鑑賞で映えるように組んではいますが、やはり蝶番と取っ手のある方が正面であり、そこから眺めるのが一番多いだろうという想定です。
この引き裂いた各パーツを、水性ニスを筆で塗りながら、貼り付けていきます。
こちらは折り紙を、あらかじめニスに浸しておいたり、完成品にニスを塗ったり、トップコートを吹いたり、レジンを塗ったりして保護する技法があるのです。
複数の技術の多重実装こそ、テクノロジーの本質であると信じています。
さて、今回は燃えるような……いわゆるファイアーパターンを作りたいのでなんとなくそんな風に。
尖っているのを上に向ければ、大体それらしく見えます。
上の方はファイアーパターンの都合に加えて強度的な問題もあり、ベース半紙のままですね。
下の方を暗くした方が映える、という事情もありますが、強度を補強する意味合いも強いです。
後は乾燥させたら終わりですが、アクリル絵の具と違って水性ニスは乾燥時間を長めに取りましょう。
紙に対して使用するニスは完全硬化アイテムではないので、多少歪みます。
ただ、歪みは直せますし、その歪みをいい感じに整える事が大事です。
ここで色が思ったより濃くなった事もあり、テスト時の発色を見て、ライトユニットの交換を決断しました。
なお、ライトユニットへの固定方法ですが。
当初の仕様と違うライトユニットを採用しているので、ギチギチなので無理矢理はまっています。
詰まっている、とも言う。
本来は、ワイヤーがフェライト磁石でくっつくはずだったのですが。
実はこんな事も出来る。
磁力は十分に足りていて、クリスタルユニットがライトユニットをガッチリくわえ込んでいるので、逆さまにしても、心が不安定になる事以外問題ありません。
所詮フェライト磁石なので、取り外しも楽です。
――本製作記はこれにて終わります。
……みんな滅多に詳細な解説をやらない理由がよく分かりました。
時間掛かりすぎる……。
写真の量と文章量がおかしくなるし、撮影入れていくとどうしても製作のテンポは落ちるし。(記録にはなりますが)
よりによって、これが試験技術の塊だった事が拍車を掛けました。
大量生産を前提とした技術を考えるのが好きなのですが、明らかに大量生産向きではないと判断された技術がちらほら……。
試験ですもの。
私は大量生産を前提として再現性を持つ技術が好きなだけで、作るものは大抵ワンオフなので、特に問題はないのですが。
しかし、写真を投稿して紐付けるだけで、時間が吹っ飛んでいくという……。
これでも載せたかった写真沢山諦めたし、試作品編に至っては、丸々なくなりました。
文章を書くのが好きな私でも、何かを創っている方が、楽しい。
ただ、ふとそれを伝えたくなったのです。
何か意味があるのかと言うと、ないかもしれませんねとしか言えませんけれども。
ものづくりを好きな人が、そしてものづくりをしている人を好きな人が、これを読んで。
自分も何かを作ってみようと思ったり。
他の誰かのものづくりを見てみたくなったり。
いつか自分が何かを作る事をふと考えたり。
いつか何かを創りたくなった時に、それを考えてもいなかった頃に得た知識が、ふっと結びつく事があればと、思います。
そして、竜族の長の元に赴くために、薄暗い洞窟の中を一人歩む、深緑のローブをまとう黒髪の女性の手元に、このランタンがある光景を想像して頂ければ、嬉しいです。




