【自衛隊防衛会議④(Self-Defense Forces Defense Council)】
自衛隊防衛会議で新たに3つの装備が追加された。
1つはボディーアーマーに装着する携帯用ドローンジャマ―。
これは個人をターゲットにする小型ドローンに対して効力を発揮する。
もう1つは、グレネード弾で打ち出して網でドローンを捕まえる装置。
約50m以内の中小型ドローンに対して効果を発揮する。
最後は本家日本の自衛隊が所有する91式携帯地対空誘導弾。
この兵器はCCDカメラの画像認識情報をミサイル本体に記憶させて誘導する方式を兼ね備えているため、ドローンの様な赤外線低放出目標や目標正面方向からでも発射が可能になり、フレアなどの妨害装置にも強いと言う特徴を持っており、より大型のドローンに効果を発揮する。
戦闘は予想通りドンバル地方に隣接するハリコフ周辺から始まった。
ここを守るのはアメリカのデルタフォース、ドイツのKSK、カナダのJTF-2にイギリスのSAS。
華々しい戦果報告もない代わりに、空爆や砲撃と言った大きな軍事衝突もなく、逮捕者ばかりが増える地道な闘い。
一時敵の人数が増え、こちらから応援を出す話も出たが私たちは応援を出さずに、ここに留まった。
ウクライナ軍も戦闘には加担せず、こちらも地味に国境線での検問と防衛に当たり、周辺国の介入を許さい鉄壁のサポートを見せた。
砲撃と言う支援よりも、こう言った確実に敵の人数を増やさない方法の方が、最前線の部隊にとっては何よりも有難い。
それは確実に敵の数が減り続けるから。
こうして1ヶ月後にはハリコフでの戦いは下火になり、代わって敵はロシア人の比率が比較的多いオデッサでの活動を活発化させた。
ここでもアメリカのグリーンベレー、イスラエルのサイェレット・マトカル、オーストラリアのSASR、イタリアのCO.F.S.やスペインのGOEにスペイン外人部隊のBOELなどが市街地や郊外を守り、港湾部はフランスのGCMC(海軍近接戦闘群)とコマンドー・ユベルB小隊、イギリスのSBS(王室海兵隊特殊舟艇部隊)が守りウクライナ海軍が黒海からの侵入者を監視した。
各特殊部隊はここでも困難な作戦を見事に成功させ、大きな軍事衝突を起こさず住民も巻き添えにしない戦いを続け、世論は大きくウクライナ政府を支援する形となっていた。
つまり敵は完全に大多数の民衆から歓迎されず、ただ世間を騒がせるテロ組織と認識されるに至ったのだ。
そして3ヶ月目となる5月。
国防省で行われた会議から戻って来たハンスが珍しく慌てた様子で司令部に入って来た。
「ユリアたちの撮ったビデオに誰が映っていたか分かったぞ!」
「誰?」
「セルゲイ・ザハロフだ」
「セルゲイ・ザハロフ?」
ニルスをはじめ、殆どの将校がその名前を聞いてもピンとこない様子。
「ナトーは知っているな。説明しろ」
「はい。セルゲイ・ザハロフ大佐はコードネーム『ホワイト・タイガー』とも呼ばれるロシア参謀本部情報総局特殊部隊の隊長です。実戦経験が豊富でクリミア紛争、ドンバス紛争に関与し、特にドネツクではウクライナ軍が執拗に守るドネツク国際空港奪還の指揮を執った人物として有名ですが、ロシアは頑なに、これを認めてはいません。彼が最も得意とするのは小隊規模の作戦で、特徴的なのは狙撃手と爆薬を多用するところです。ドネツク国際空港では1階を占拠するウクライナ軍に対して爆弾を用いて2階の床を1階に落とす作戦で多くのウクライナ兵を生き埋めにした残虐な指揮官です」
「さすがによく知っているな。歩兵にしておくのがもったいないくらいだ」
「イザック准将に感化され過ぎだ」
ハンスから言われてそう答えたが、どうやら他の人たちの意見もハンスと同じようだったので、DGSEの優秀なエージェントであるエマ少佐に助け舟を出してもらおうと思って見ると「やっぱりEMAT(統合作戦本部)に行きなさい」と言われてしまった。
そのまま作戦会議に入る。
各地からの戦況は逐一報告されているが、再度おさらいするところから始まった。
「やはりナトーが予想していた通り、敵はドローンを多用してきているが、防弾ベストに装着するジャマ―やグレネードランチャーを使用した網投擲はかなり有効なようだ」
「我々もHK-416にM320A1 グレネードランチャーを装着して訓練を続けておりますので、楽しみですな」
「大型の物はどうですか!?」
「大型の物は今までに5機投入された。ハリコフでは、アメリカ軍とドイツ軍部隊の陣地に、それぞれ1機ずつ。オデッサには黒海から沿岸部を狙って3機飛来したが、いずれも91式携帯地対空誘導弾で攻撃される前に撃墜に成功している」
「じゃあ、この屯所もターゲットになりますね」
「おそらくな」
「ハリコフでは、ドネツク共和国軍がT-72戦車を出動させたと聞きましたが、どうなりました?」
「落ちた」
「落ちたとは?」
「ウクライナ軍が入念に仕掛けた対戦車壕に落ちた。深さ5mでしかもヌタヌタの泥沼にハマっては2度と出られまい」
「やるなぁウクライナ軍も!」
「次は俺達の番だ!」
「ナトーの考えが正しければ、このキエフ一帯が決戦の場になるだろうから、皆気を引き締めて掛かれ!」
「了解しました!」




