【工場での対決②(Showdown at the factory)】
どんなに工作機械に隠れながら進んでも、2階の事務所からは丸見え。
ならば先制攻撃は2階から仕掛けなけれなならないが、不味い事に2階へ上る階段はこの建物の外にあるらしいので、一旦全滅させる事が出来たとしても外からの補充はきくからそれで安全が確保された事にはならない。
新たに外階段を登って来る敵は、ブラームが確実に仕留めてくれることを信頼して進むしかない。
「いいか、3人で先ず2階の事務所を叩く。その後は私とトーニでこの棟の中を進む。フランソワはここに残り、銃声を聞きつけて裏から回り込んでくる敵を阻止してくれ。表側から回り込もうとする敵は、ブラームが全て始末してくれるとは思うが油断はするな」
「了解」
「すべての敵を倒して向こうの出口にたどり着いたら、ホイッスルで合図するから、建物の裏を通って最後の棟の入り口で落ち合おう」
「了解」
「撃ち方はじめ!!」
タタタタタ。
3人のAKMが一斉に火ぶたを切る。
木っ端微塵に散らばるガラスの欠片が雨の様に下に降り注ぐ。
撃たれた敵が苦し紛れに机を押して、2階から机ごと落下した。
書棚にあった以前の持ち主の物だった書類の束が紙吹雪の様に舞う。
見えていた3人の敵が倒れるのを確認しても、マガジンの弾が切れるまで打ち尽くした。
3人×30発。
僅か3秒の惨状。
薄い鉄板で出来た机や本棚では、中に書類が入っていたとしても、そうそう弾を防げるものではない。
1マガジン撃ち終わり、次のマガジンをセットして各々の任務に就く。
私は工作機械越しに建物の中を進む。
この建屋の中の敵も1兵も逃すことは出来ない。
1人でも逃して進めば、背後に敵を背負う事になる。
この様な少人数での戦いは、1人でも背後に回り込まれれば全滅の危機が訪れる。
「トーニは奥の壁沿いにゆっくり進め!私は中をジグザクに進む」
「了解」
私は、なるべく敵に派遣されやすいように、身を屈めないでジグザクに進んだ。
外からL115A3の少し控えめな発射音も聞こえる。
何個目かの工作機械の角を曲がった時に、体を丸めて潜んでいた敵の一人が撃とうとしてきた。
銃を蹴り上げて、踏み替えたもう片方の脚をテンプルに叩き込んで気絶させ、直ぐにトーニを呼び寄せて縛ってもらった。
もう1人を探すが、こっちはナカナカ見つからない。
どこに隠れている?
逃げたのか?
それとも……。
とうとう出口付近まで着た頃、ようやく見つけた。
もう1人は、銃撃によって抜けてしまった2階の床から落ちてきた書庫の下敷きになって何もできずにただ助けを待っていた。
「2階には何人いた?」
「3人です」
「1階は?」
「僕と、友達のサハロフの2人です。サハロフは?」
「無事だ。留守番は何人だ?」
「12~15人だと思います」
「では、出て行った人数は?」
「10人乗りのライトバン2台と乗用車3台ですから30前後だと思います」
「ここの隊長は誰だ?」
「知りません」
「命令は、どこからくる?」
「知りません」
「無線機の場所は?」
「知りません」
「しらばっくれるんじゃねえぞ!」
トーニが凄んで捕まえた若者の胸倉を掴む。
「すみません。でも僕たち知り合いに誘われて今朝ここに来たばかりですから」
「知り合いとは?」
「前の選挙の時に親ロシア派の候補者事務所のアルバイトに誘ってくれた人です」
「その人の名は?」
「イワニコフさんです」
「候補者の名前は?」
「コロゾフさんです」
「君たちはまだ誰も殺していないだろうな」
「はい」
「誓えるか?」
「はい」
「ウクライナが嫌いか?」
「いいえ」
「では何故、ここに入った?」
「サバゲ―のアルバイトだとイワニコフさんに言われて……」
「では、今言った内容を、チャンと政府の人にも伝えろ」
「国家反逆罪で銃殺ですか?」
「いや、銃刀法違反及び凶器準備集合罪ってところになるかも知れん。いずれにしても、君たちの罪の償いは、君たちのこれからの行動に掛かっているだろうな」
捕まえた2人と話し終えた頃、外の銃声も止んでいたので、ホイッスルを鳴らしフランソワを呼び寄せた。
もう一つの建物は宿舎として使っているらしく、ベッドと厨房と銃弾が置かれてあった。
どうやら滅茶苦茶に壊してしまった2階が司令部だったらしく、敵の作戦に関する重要な情報は宿舎からは見つける事は出来なかったが、その代り個人情報を得る事は出来た。
「撤収するぞ」
「戻って来る敵は?」
「これ以上無駄な血は流さない。個人情報を得た以上、それで充分だ」
捕まえた2名を連れ、宿舎に火を放ち、その場を去った。




