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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****将校としての最初の仕事(First job as an officer )*****

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【ハンスと倉庫で……②(In Hans and the warehouse ……)】

「どうして分かった!?」

「腐れ縁だからな。さあ俺たちも会議室に戻るぞ!」

「Mon Général!(私の将軍様と言う意味で、アメリカ軍のイエッサーに相当する軍用語)」

「それは止めろ」

「だけど、公式な場合は使わざるを得ないぞ」

「公式な場合のみ許す」

「Mon Général!」

「しつこい!」

 揶揄って逃げる私を、ハンスは物凄い勢いで追ってきた。

 長距離はハンスよりタイムはいいが、やはり短距離になると男と女では筋肉量の差が明らかに出る。

 ことごとく逃げ道は塞がれて、建物の隅にある清掃用具置き場として使っている倉庫に追い詰められた。

 空の青さが届かない倉庫の中で、お前の浅知恵など全てお見通しだと言わんばかりに、上から見下ろしてくる背の高いハンス。

 横から逃げようと考えても、その隙さえ与えないガッチリと鍛えられた肩。

 そして正面突破を阻む逞しい胸の筋肉が、荒い呼吸の中で隆起を繰り返す。

 追い詰められて背にしていたブロック塀にハンスの手が伸びる。

“ドン”

 私の顔の横からロープウェイの様に登って行く逞しい腕の筋肉。

 手を付かれた拍子に、汗で濡れた背中が冷たいコンクリートに当たって気持ちいい。

 お互いの動きは止まったのに、お互いに激しい吐息は止まらないまま睨み合う。

「はあ、はあ、はあ」

「はぁ、はぁ、はぁ」

 静かな場所では時計の秒針の動く音がやけに大きく聞こえるものだが、時計のないこの場所ではお互いの“はあ、はぁ”息をする音が大きく艶めかしく聞こえて堪らない。

「俺の勝ちだ」

「力では決して辿り着くことのできない場所だってある」

「力だけではない」

「証明でき……」

 近づいてきたハンスの顔が、不意に私の唇を捕える。

 柔らかく浅い、何かにしがみ付いていないと何時の間にか融けて無くなりそうに切ないキッス。

 緩やかに力を抜いて離れようとするハンスの唇を、追いかけるように腕をその首に巻き付けて手繰り寄せる。

「や、やめろ。部隊内ではお前は男……」

「仕掛けて来たくせに、じんけんもんだいだな」

「生意気言うな」

 もう一度唇を塞がれる。

 私は挑発するように、ハンスの硬く逞しい胸に、自分の柔らかい胸を押し付ける。

 ハンスに肩を抱かれ、優しく地面に寝かせられるまで唇を放さないまま、おとなしく従った。

 横になると肩を抱いていた手が、まるで蛇のように服の中をまさぐる。

 急に怖くなった私が“待って”と言おうとするのを見抜いたように、唇を絡められた。

 服の中でブラがずらされて大きな掌が直に胸を包むように押し上げてくる。

 思わず溜め息が漏れそうになるのを見計らったように、捉えられていた唇を放されると「あぁ」と声を漏らしてしまう。

 恥ずかしい声を聞かれてしまい、せめて真っ赤になっているはずの顔を隠したいのに、ハンスは私の手を掴んでしまいそれを許してくれない。

 いつの間に解かれたのだろう、服のボタンが外されていて胸が露わになっていた。

 手を掴まれたまま、その胸にハンスの顔が下りて行く。

「あっ」

 自分の発する声に、自分自身が追い詰められてしまい、もう何が何だか分からない。

 ハンスの手が私のズボンのファスナーを開いた時に、はじめて気付く。

 とっくに私の手は解放されていたのだと。

 私はもうなすがままに体を開きハンスを受け入れ、冷たく暗い倉庫の中、お互いの吐息でつくられた白い息が二人だけの空に雲を描いていた。


 荒い呼吸のまま余韻に浸っていた時、ハンスの携帯が鳴った。

 そろそろ戻って来いと言うトライデント将軍からの知らせ。

 お互いに慌てて着衣の乱れを整える。

「大丈夫か?」

「ああ、なんとか」

 本当は大丈夫じゃない。

 ハンスに手を取ってもらい、ようやく起き上がる事ができた。

 体中が軽く痺れたように、力が入らなくてフワフワした感じ。

「さあ行くぞ!」

 ハンスに促されて、何故彼が機敏に動けるのか不思議なくらい。

 朦朧もうろうとする頭をなんとかしなくては……。

 人間の頭が最も活発に動くのは笑い。

「待って、トイレに寄らせて」

「トイレ?」

「お互いにイカ臭い匂いをさせて会議室に行くわけにはいかないだろう」

「そんなに匂うか?」

 ハンスが自分の体をクンクンする。

「中にはエマも居る。男と違い女は匂いには敏感だから。それにコレも、どこかで捨てないとイケないだろう?」

 体を拭いたティッシュをハンスに見せると「あっ、ああ。そうだったな……」と、ハンスはまるで子供みたいに照れ臭そうに笑い、その笑顔をみて私も笑った。


 汗のにおいはシャワーを浴びない限りどうにもならないので走った。

「ねえ、どこに居た事にする?」

「居なくなったお前を探しに、新館の図書室迄行った。お前を知る奴ならこれを疑うはずがない」

「なるほど。さすが良い手だ。あそこから走って来たとなれば、汗もかく。ナカナカ策士だな」

「Mon Général!」

「止めてくれ、私は新米中尉でハンスの部下だ」

「どうだ、こうして、言われる気分は」

「う~ん……悪くない」

「さすがGénéral!」

「ハハハ」

「アハハ」

 いつの間にか誰も居ない廊下を、手をつないで走っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言]  追伸  このシーン読みながら、主人公がスカーレット・ヨハンソンとイメージ重なりました。  彼女の映画観たばっかりだったからかもです。
[一言]  読ませて戴きましたよお。( ̄▽ ̄)ゞ  なんだか凄く前後が爽やかですね。  軍人って、みんなこんな感じなのかなあ。  このお話が繋がるのは随分先になりそうです。
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