【キャンプ ファイヤー③(campfire)】
「あー、これ有難うございました」
「有難うじゃないわよ、チャンとクローゼットに仕舞うまでが返却すものの使命よ」
「はい……」
「でも、女性の部屋に……」
「女性の部屋だからっていう逃げ道は無しよ。だいいち貴方達外人部隊は女性隊員を認めず男性隊員として扱っているんでしょっ!」
「それは、事務長が……」
「事務長って言うのは貴方たち外人部隊の事務方のトップでしょ!その人の作った決まりごとは、たとえその人物の好き嫌いが貴方たちに会ったとして絶対よ。もーっ!グズグズしないの!確かに久しぶりのキャンプ ファイヤーは楽しかったけれど、終わってみたら髪はバサバサで肌はカサカサ。早くシャワーを浴びないと燻製になってしまう寸前で、こっちはイライラいているんだからね!」
「す、すいません」
「言葉はいいから、さっさと手を動かすのよ!」
本当言うと直ぐに返してもらわなくて、クリーニングして返してもらうつもりでいた。
そうすれば、クリーニング代が浮く。
でも、あんなに純真に喜ぶナトちゃんを観ていると、自分の疚しい心が嫌になり埃だらけのままでもチャンと返してもらおうと気が変わった。
全ての衣装がクローゼットに片付けられると、シャワーを浴びずに再び外に出て、ナトーを探す。
もう、とっくに戻ってきて良いはずなのに、どうしたんだろう。
キャンプ ファイヤーが行われた場所まで戻ってみると、ホウキを持ってきれいに履いている数名の中心にナトーが居た。
その姿はまるで幼い子どものよう。
一緒にホウキで履いているのはG-LéMATのメンバー。
“なんで彼らはこんなに仲がいいの?”
少し妬ける。
声を掛けると、ナトちゃんは持っていたホウキをトーニに預けると、全力疾走で掛けてきた。
そのまま飛びつかれたら、私なんて木っ端微塵!!
ビビって少し腰が引けたのを知ってか知らずか、ナトちゃんは手前で急減速してから抱きついてきた。
「有難う。ホントに有難う!」
「なによ、たかがキャンプ ファイヤーくらいで」
「たかがじゃないよ。百科事典で調べた知識と、実際に体験して得られたモノは大違い!」
「そんなによかったの?」
「うん。思い出って、こういうことなんだね。一生大切にする」
「良かったわね」
抱きついていたナトーの顔を離すと、真っ直ぐに私を見つめる2つの目は涙でビショビショ。
「良かったっていうものじゃない。私もエコールやコレージュ、リセに行って学びたい!」
「そうね。でも独学で既に大学院以上の教育レベルを持つナトちゃんには、屹度退屈よ」
「退屈なんかないわ。もっと沢山の生きたままの人と触れ合えるでしょ、それに運動会や遠足、参観日や本当の修学旅行も行ってみたい!」
そこまで言うとナトーは、また激しく泣き崩れた。
「もっと、もっと、してみたい……」
半分焼け落ちたサロンで寛ぐG-LéMATのメンバー。
いつもの騒がしさはなく、なんだか、しみじみと言った様子。
「やっぱ、ナトーは可愛いな……」
「なんでい、今更」
「沢山の生きたままの人と触れ合いたい。か……」
「確かに俺達は沢山の人間には合うが、死体もあれば死体になるものもある。それに対戦相手とはナカナカ生きたままじゃ触れ合えねえし、触れ合いたくもねえ」
「こんなに純真な娘が、どうして戦場なんかに出てしまったんだ?」
「叶えてやりてえなぁ~ナトー隊長の夢」
「参観日かぁ……」
「おいフランソワ、なんか良い思い出でもあるのか?」
「ある訳ねえだろう!家に帰って母ちゃんに怒られるのがオチよ」
「ちげえねえ!」
「しかし、ナトーの参観日には誰が来るんだ?ヤザ??」
「ヤザは難しいんじゃねえか?和平交渉で恩赦になったものの、元はザリバンの大幹部だ」
「それに、今は元DGSEのレイラと結婚して日本に居るはずだぜ」
「じゃあ、俺達で行こうぜ!」
「そりゃあいい!モンタナ、オメーたまに冴えたこと言うな」
「しかし現実的に可能なのか?」
「なにがだよ」
「エコール(日本で言う小学校)から始めたいってナトーは言っていたけれど、1年生だと7歳だぜ」
「いくらナトーが若いって言っても、もう21歳になっちまったからなあ」
「無理だろう。身長は我慢するとしても、リセを終える頃には30半ばだぜ」
「教員ならどうなんだ!?」
「ああ、あの頭脳なら何の問題もねえだろう」
「ナトー先生か!」
「それ最高!」
「いやー俺の時ナトーみたいな先生が居てくれたら、今頃こんな所にゃいねえぜ」
「おいおい、こんな所とは何だよ」
「でも実際そうだろう?」
「ちげえねえ」
「しかし、教員としてではナトーの本当の望みは叶えられないんじゃないのか?」
それまで黙って聞いていたブラームが、ボソッと言った。
「なんで戦争なんかあるんだよ」
「ナトーの夢、叶えてやりてえなぁ~」
世界には、戦争や貧困の為に学校に行けない子供たちが沢山います。
そう言う人たちの為にも、私たちは戦争のない豊かな暮らしを送れる世界を作らなくてはならないと思い書きました。




