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空想科学オカルト小説 南方呪術島の冒険  作者: 雲居 残月
第五章 電脳世界の遠隔会議
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第二十九話 通信の自由と秘密保持契約

「ディエゴの日記か」


 レオナルドの話を聞いたフランシスコは、顎に手をやり、考える仕草をした。


「イバーラさんが調べようとしている呪術について、自分なりに考察してみたいんです」


 自分がこの件に多大な関心を寄せていると、レオナルドは主張する。


「分かった。きみはチームの一員だ。日記を貸そう。スペイン語は、どれぐらい読めるかね?」


「普通に読む分には問題ありません。専門用語が出てくれば、その都度辞書を引きます」


「では、辞書も貸そう。他に必要なものはないかね?」


「外部との通信を許可して欲しいです。

 当初の目的だったロボットによる洞窟探査は終わっています。だから僕がここに留まる理由はありません。でも呪術の件は個人的に興味があります。自主的に問題解決に取り組みたいと考えています。


 そのためには、外部との通信を遮断した状態は不都合です。

 現代の人間の思考は、個人の脳内だけで完結するものではありません。ネットからの情報入手、そして仲間たちとの情報共有。そうしたものも含めて、一つの思考を形成しています」


「具体的に言うと、どういうことがしたいのだね?」


「必要な情報を検索したり、仲間たちと議論したりして、問題解決に当たりたいです」


「外部に情報が漏れるのは困る。私が呪術について調べているという情報を得れば、ペドロたちは格好の攻撃材料と見なす。会社の株価にも影響する。私が極秘で調査を進めているわけは、きみにも分かるだろう」


 そのとおりだ。フランシスコの行動は、奇行として周囲の耳目を集める。


「信頼できる仲間だけに相談します。大学で一緒にベンチャーをしている三人に協力を仰ぎます。

 それに、そろそろ彼らに連絡をしないとまずいです。一週間以上も音信不通のままですし」


 最後の方は言葉の勢いが衰えた。本当のところは、仲間たちと連絡が取りたいだけなのかもしれない。

 そのレオナルドの気持ちが伝わったのか、フランシスコは難しそうな顔をする。


「信用していいのかね?」


「はい、大丈夫です」


「人間は心変わりをするしミスもする。人を信用することは危険だ」


 もっともだ。フランシスコの説得には、具体的な材料が必要だと気づく。


「秘密保持契約書にサインします。情報の公開範囲を仲間たちに限定し、もし漏れた場合は、契約書に従って対応すると約束します」


「ふむ」


 フランシスコは屋敷内にいる弁護士を呼び、レオナルドと話を詰めて契約書を作成した。

 情報が漏洩した際は、経路を調査する。その結果契約違反が発覚した場合は、一定期間レオナルドが無償でフランシスコの会社で働くという内容だ。

 契約自体はそれほど重いものではない。しかし口約束よりは拘束力が強い。レオナルドは、フランシスコが随分譲歩してくれたと感じた。


「通信の許可を得るには、ギレルモに連絡が必要だな。他には?」


「ギレルモに奪われたパソコンとスマートフォンを返してください」


「それは当然の要求だな」


 内線を使い、フランシスコは命令を出した。たぶんギレルモは、渋い顔をしているだろう。


「では少し待ちたまえ。隣の部屋に行き、日記と辞書を取ってくる」


 フランシスコは隣室に消えた。


「これでいいかね」


 革表紙の日記と辞書を持ってきた。


「ありがとうございます。いったん工房に戻り、通信できるようにしてもらいます」


 フランシスコが笑みを浮かべた。


 レオナルドとマリーアは部屋を出て、廊下を歩き始める。長い廊下を移動している途中、マリーアが足を止めて、窓の外に顔を向けた。

 星空の下、夜の森が広がっている。森は風のためか、ざわついている。レオナルドは、マリーアの横顔を見る。彼女は真剣な顔でにらんでいた。


「なにかいるの?」


 気軽に聞いた。


「日に日に活発になっているみたい」


「なにが?」


「悪霊が。ここ数日で、はっきりと見えるようになってきたわ」


 マリーアの言葉を受け、窓の外を観察する。マリーアが認知している悪霊が、どんな姿をしているのか分からない。しかし暗闇の中、彼女はレオナルドには見えないものを知覚している。

 マリーアの目には、なにが映っているのか。人の形をしているのか。それとも獣の形をしているのか。あるいはキリスト教の悪魔のような姿をしているのか。


「ねえ、マリーア、悪霊ってどんな姿をしているの?」


「触覚と顎がついた逆三角形の頭部」


 どうやら虫のようだ。虫の石像に、虫の化石。この島は本当に、虫に溢れているなと思った。

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