05:結婚パーティー③
「おめでとうございます!」
「ご結婚おめでとうございます」
式後の会場は祝賀の雰囲気に包まれており、大勢の貴族たちに祝福の声をかけられましたわ。
彼らに微笑み、手を振りながらわたくしたちが会場の中を歩いていると、二人の人物が近づいて来ました。
リリー・フォロメリア伯爵令嬢、そしてその婚約者であるデイビー・ヴォルール侯爵令息ですわ。
「アイシャ様、最高でした。キラキラしてましたよっ!」
「アイシャ・アメティスト・オネット王太女殿下。並びにラーダイン・オネット王太女配殿下、この度はご成婚おめでとうございます。お二人の末永い幸せをお祈り申し上げます」
リリーは純粋な笑顔で、デイビー様は少しぎこちない笑みを見せていました。
長年恋情を抱いていた女が別の男とこうして結ばれた姿を見るのはお辛いだろうと思っていたのですけれど、デイビー様がそこまで傷ついていらっしゃらない――少なくとも敵意を丸出しにするほどではないということです――ご様子で安心いたしましたわ。
「お祝いいただき感謝いたしますわ。デイビー様たちもご婚約なさったそうですわね」
「はい、お陰様で。あの時は申し訳ありませんでした。あなたを想うあまり、身勝手な行動をしてしまい」
「謝罪はすでに受け取っておりますわ。ですから顔をお上げになって」
「ありがとうございます」
デイビー様は、すでに覚悟を固めておいでのようです。
リリーをきちんと幸せにしてくださることを願うばかりですわ。
「行きましょう、ラーダイン。これからたっぷり楽しみますわよ」
「あまり花嫁がはしゃぎ過ぎない方がいいと思うけど」
「そんな堅苦しいことをおっしゃらないで。あちらに美味しそうなお料理がありますわ。さあ早く」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
素晴らしい食事に賑やかなダンス、祝賀の歌……。
きっと今日のことは一生忘れないでしょう。何から何まで輝いて見える鮮やかなひとときでしたわ。
そんな風にしてあっという間に時間は過ぎて行き、パーティーはやがて終わりを告げましたの。
そしてお楽しみの夜がやって来ます。
初夜のためのおめかしをしたわたくしは、王宮の一角に設けられた夫婦の寝室に入りました。
そこには先に用意を済ませたらしいラーダインが待っていましたわ。
「いよいよですわね」
「いいんだね?」
「もちろんですわよ。……優しくお願いしますわ」
この後のことは言わずともわかるでしょうから詳細は省きますけれど。
ベッドの上のラーダインは逞しく、とても幸せな気分になったのでした。
結婚後三ヶ月ほど新婚旅行として国内を巡回し、国民たちと触れ合った後、わたくしは女王となることになりました。
歴代最年少の十七歳。ちなみにお父様は静かに隠居するそうですの。
「幸せそうな娘の姿は見ていたいが、お前たちの邪魔してしまいそうなのでな」なんておっしゃっておりました。
どうやら王太女夫婦のラブラブっぷりは周知の事実のようです。なんだか恥ずかしいですわね。
「ねえお兄様。わたくし、ずっと愚かな問いかけを繰り返しておりましたの。
どうしてお兄様が亡くなったのかと、なぜわたくしが女王にならねばならないのかと。
ですが国内を巡り、祝福されながら夫と過ごすうちにわかりましたの。国民たちから信頼されていること、その信頼に応えるべきなのだということを。
――わたくしは立派な女王になりますわ。ですからどうか見守っていてください」
そうしてわたくしは、愛する夫と共に戴冠式へ臨むのです――。
〜完〜
後日談はこれにて終了。本当の本当に完結となります。
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