表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/55

東洋の魔女 Act-5

戦闘は第1撃で軽戦車部隊が逃げたことにより新たな展開となる。

このまま追いかけて行こうとした第2中隊だったのだが・・・

森の木々をなぎ倒し、進み来る者が居た。

奥の木々が無くなるにつれ、森自体が動いているかのように。

いいや、森自体が消滅していくかのように・・・観えた。


「敵M3隊が森の中に逃げ込みます!」


<参考写真・M3スチュアート愛称はハニー>

挿絵(By みてみん)


大貫中隊が追いかける軽戦車部隊は、前方の森に隠れようとしていると思った。

生き残りのM3が、身を隠す為に走り込もうとしている森に目を移した時、

大貫サチコ中尉の眼が見つけたのは・・・


「何かが森から出て来ようとしているぞ?!

 各車M3よりも前方の森に潜む奴に注意しろ!」


森の奥が徐々に陽の光を通す様になって、明るくなっていくのに気が付いた。

それが何を意味しているのかも。


「木々を伐採して来る?

 違うっ、木立をなぎ倒しているんだ!」


深い森の奥から現れ出ようとする者が、並外れた質量を持つ者だと気付いたのだ。


エギレス軍には3種の戦車が存在していた。

今追いかけているM3型の軽戦車を始めとする快速な軽戦車と、以前に闘ったマチルダⅡ等の中型戦車。


そして、陸の戦艦とも云える、大型の戦車・・・つまり、重戦車だ。

エギレス軍は欧州に於いての戦闘で、戦車にもトーチカ並みの砲撃能力と、防御性能を併せ持たせる重要性を学んでいた。


その結果、無限軌道キャタピラの性能限界まで車体を堅牢にした戦車を造ったのだ。

確かに動かせられるだけの存在だったかもしれないが、

まだ戦車というモノに機動力を必要だと認識される前の時代では、移動要塞ともとれる車体で敵を圧し潰す戦法が有効だと思われていた。


そう、この時代では戦車同士の闘いというモノを、誰も知り得なかったのだから。





魔鋼チハ改の中でも、状況が刻々と変わって行くのが観えていた。

敵軽戦車部隊を追いかけた大貫中隊6両の先にある森が揺れ動き、

木立が斬り倒せれるにつれて何か、黒い物体が見え始めた。


「あれは何でしょうか?戦車だとは思えるのですけど?」


アキナが観測しながら訊いて来る。

キューポラ上に出ているマコトも双眼鏡で同じ光景を見詰めていたが。


「まさかとは思ったが。

 あれはエギレスの重戦車だと思う・・・しかも」


言葉を区切るマコトには正体が知れたのかと、ミユキが訊ねる。


「しかも?重戦車だとして、どんな車両なのですか?」


振り返ったミユキに、キューポラから降りたマコトが眉を潜めて答えたのは。


「トーグⅡ。重量81・3トンもある怪物超重戦車だと思う。

 特に砲塔正面の装甲厚は114ミリもあるんだ、このチハ改の穿甲榴弾でさえ弾き返してしまう。

 弱点はその巨体故に鈍足だという事と、車体全体が76ミリの装甲しか持たないという事ぐらいだ。

 車体が大きい割に主砲は17ポンド砲でしかないのだけども、

 我々にとってはそれでも致命傷をうけてしまうけどね?!」


<参考画像・TOGⅡ超重戦車>

挿絵(By みてみん)



現れ出でる敵が巨大な戦車であり、情報を既に掴んでいる事。


「良くそこまでの情報を入手できましたね?

 森を潰す位もある超重戦車ってことですよね?」


ヒロコが観えない敵をどうして識別出来たのか不思議そうに訊く。


「ああ、敵の情報は逐一宮様に送られてきてたからな。

 危険な敵だと判断されて、注意を促されたのさ僕に・・・ね」


ミユキはマコトが何故宮様に選ばれ、何故自分の元へ指揮を執るように命じられたのか。

その意味が分かり始めてきた。


<蒼乃様は・・・私をまだ愛して下されているんだわ。

 必ず宮様の元へ帰ると約束したのを覚えておいでになられているのね・・・>


ミユキは陸軍士官となった自分を呼び出された日の事を思い出す。




「蒼乃・・・様。これにておいとま申し上げます。

 私の事はお忘れになってくださいませ・・・

 今迄のご恩に報いるには、こうするより他になかったのです」


ミユキが平伏して殿下に奏上すると。


「ミユキ、私があなたを忘れる事が出来ないと知って言うのですか?

 これが最期の別れだと告げるのですか?」


宮殿の庭で片膝を着くミユキにお言葉を掛けられた。


挿絵(By みてみん)



儚く遷ろう雪の日の事だった。

雪がちらほらと舞う中、ミユキは三輪の宮蒼乃殿下の前に居た。


宮殿の回廊にお出ましになった宮様が、侍女でもあったミユキにお言葉をかけられた。


「ミユキ、あなたとは同じ魔力を持つ者としてではなく、

 同じ時を生きる娘同志として付き合っている気でした。

 ううん、違うわ。

 今ははっきりと言えるの。蒼乃はミユキを愛していると・・・だから。

 あなたが殿方を愛したとしても、この気持ちは変わらない。

 私は光の・・・きぼうのミユキを愛しているのよ?」


提げていた頭を僅かに擡げるミユキに。


「だから、ミユキは喪いたくないの。

 戦場へなんか往かせたくない私の心の内だけは、知っていて欲しいの。

 必ずもう一度逢いたいの・・・ミユキと」


心からの謝意がそこには含まれている・・・そう感じた。


「ミユキ・・・お願いよ。これだけは約束して?

 もう一度逢えるように努力を怠らないと。

 きっと日の本へ帰って来ると・・・」


その言葉は、自分の想いに重なる約束。


「はい。私も・・・もう一度宮様のお顔を観るまでは死にたくありません。

 帰れるように努力を怠らない様、務めて参りますから・・・」


ミユキは約束しましたとは言えなかった。

それはこれから戦場へ赴く武人としての心得だと思ったから。

一度戦場へ出たのなら、どこで果ててしまうかなんてわかり様が無かったから。


覚悟は・・・出来ていると思いたかったから・・・


「ミユキ、あなたが宮殿へ召しだされてから、もう2年が経とうとしているのね?

 私の前に来てからもう2つも歳を重ねたのよね?」


ポツリと溢された・・・涙。


蒼乃様の御心おこころが、自分の想いと重なり合う。


ー 蒼乃様とお会いして、私は変わった。

  右も左も分からない私に、殿下は優しく手ほどきしてくだされ続けた。

  私も殿下の御心に気付いていたの・・・神官巫女としてではなく。

  独りの娘として・・・愛しき人の心が・・・


方や一国の宮、方や皇室を守護せんとする剣巫女。

身分を超えた慈しみと愛。

叶わぬと知りながらも打ち明けられた蒼乃殿下は、愛しき者に約束を迫る。


「ミユキ、私に出来る事ならなんだってするわ。

 だから、お願いよミユキ。

 約束して・・・必ず生きて戻ると。

 約束して・・・私と・・・」


記憶の中で。

あの日の言葉が甦る。


生きて・・・生きて帰ると。

蒼乃宮様と約束を交わした雪の日の事を・・・






マコトを振り返り、想いを蘇らせる。


「マコト・・・少佐が私達に何を望まれているかが解ったような気がします。

 この闘いで勝った暁に、何を望まれているかが解った気がします」


マコトに下された宣旨とは、自分を無事に日の本へ連れ帰る事に在るのだと。

蒼乃宮様が島田しまだ まことという男を知り、自分に送って来たのだと。

国の宝である秘宝石をも自分に贈って、あらゆる知り得た情報と共に贈りつけて来たのだと。


生き残って欲しい・・・記憶の中に居る蒼乃様は、願われているのだと。


「そうだねミユキ。勝たなきゃならないんだよ!

 負けるなんて考えないさ、勝つ事だけを考えれば良いんだ。

 敵がどれ程強力だろうと、打ち破るんだ魔砲の力で!」


ミユキの右手に填められた魔法石が淡く光り始めているのに気付いたマコトが。


「これより先は、魔法の世界。

 僕らの未来を切り開く為の闘いなんだよ?

 どんなに心が辛くっても、希望ひかりは必ずやってくるんだ」


懐から治癒魔法石を取り出したマコトが、覚悟を求めて来る。


「はい!必ず打ち祓いますから。

 こう見えても私、神官巫女なのですから!」


ミユキの魔法石が蒼き光を放ち始める。


「よしっ!それでは今より魔鋼機械を発動させる。

 現れ出る超重戦車隊に向けて突撃をかける!

 第1中隊は我に続け!全車両を以って機動戦で敵を殲滅する!」


超重戦車TOGⅡ。

森の中から現れ出て来た巨体は、M3軽戦車を伴い決戦を挑んで来た。

超重戦車の数、6両・・・


自慢のオードナンス17ポンド砲に弾を込め、

大貫中隊目掛けて砲塔を旋回させ、砲撃をかけようとした瞬間の事だった。


大貫中隊6両だけだと踏んでいた敵の指揮官は、飛び来たった砲撃に目を向けた・・・


戦闘は超重戦車が出現したことにより新たな方向へと向う事となる!


魔鋼機械が存在する事を知らない敵は、重戦車に因る破壊力で戦場を駆逐しようとしていた。


だが・・・マコトは敵に尻尾を巻いて逃げるような真似はしない。

むしろ事変の終結を希求していたのだった!


次回 東洋の魔女 Act-6

君の力は神から授かったのか?!「神官巫女ミユキ、祓って進ぜますッ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ