第5章:狙撃兵器の真価──迎撃だけではない“選んで撃つ”火力へ
ここまで語ってきたように、
レールガンは「高初速・精密制御・低乱数」という特性を備えた新世代兵器です。
では──
それを手にした日本は、何を撃とうとしているのか。
これまで、日本のレールガン開発は、
**「対空迎撃用CIWS(近接防御火器)」**としての用途が強調されてきました。
・高速接近する巡航ミサイルを
・狙撃するかのように撃ち落とす
・弾幕を張らず、1発必中を狙う
これだけでも十分に革命的です。
従来のファランクスのように、
**「撃ち続けて当てる」**のではなく、
「狙って、仕留める」。
これが新しいCIWSの姿です。
しかし──
防衛省が示した図面には、さらにもう一つの可能性が描かれていました。
それは──
**「対艦狙撃火力」**という未来です。
レールガンは、高初速で撃ち出すため、
直進性に優れ、着弾時の運動エネルギーが極めて大きい。
この特性を利用して、
敵艦の船体弱点部を直接狙い、機能停止を誘発するという運用が想定されています。
具体的には──
・船体上部のセンサー、通信機器、火器管制中枢
・船体側面のエンジン吸気口や推進器付近
・船底近くを撃ち抜いて浸水させ、航行不能に追い込む
など、
「敵艦そのものを沈める」のではなく、
「戦闘能力だけを奪う」という、
現代戦に即した非致死的無力化攻撃が可能になるのです。
ここで重要なのは、
レールガンの弾体は「超軽量の豆鉄砲」ではないという点です。
・数百グラムから1kg前後の高密度金属塊
・マッハ5〜6級の速度で飛翔
・着弾時には、運動エネルギーで小型爆弾に匹敵する破壊力
これを、艦の急所に叩き込めば──
爆発を伴わなくとも、
センサーは壊れ、通信は途絶え、推進器は止まり、火力は沈黙する。
敵艦は、海上にただ漂う“無力な箱”と化すのです。
かつての戦艦時代、
敵艦を「轟沈」させることが勝利の証でした。
しかし現代の海戦は違います。
センサーが壊れれば、敵は見えない
通信が絶たれれば、指揮は混乱する
推進力を失えば、逃げられない
これらのいずれか一つでも奪われれば、
**“戦闘不能”=“実質的敗北”**です。
そして、レールガンはその“戦闘不能”を、
精密に選んで引き起こせる火力なのです。
最後に、改めてこの構図を整理しておきましょう。
【従来型CIWS(例:ファランクス)】
・命中方式:
→ 弾幕による面制圧方式。大量の弾を撃って命中を期待する。
・主たる迎撃対象:
→ ミサイルやドローンなど、接近する飛翔体のみ。
・継戦性:
→ 装填された弾薬数に依存。数回の交戦で弾切れするリスクが高い。
・弾薬安全性:
→ 火薬を使用した弾薬を搭載。被弾時の爆発リスクが高い。
【日本のレールガンCIWS】
・命中方式:
→ 狙撃による直撃方式。少ない発射数で高精度迎撃を目指す。
・主たる迎撃対象:
→ ミサイル・ドローンに加え、艦艇の弱点部(センサー、推進器等)も狙撃対象とできる。
・継戦性:
→ 弾数に依存せず、電力供給が続けば撃ち続けられる。高い持続戦闘能力を持つ。
・弾薬安全性:
→ 炸薬を使わない金属塊のみを発射。被弾時でも弾薬庫爆発のリスクが極めて低い。
撃ち続けるだけの防衛線から、
狙い、選び、制圧する防衛線へ。
それが、日本のレールガンが目指す新しい戦い方なのです。




