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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
71/73

052 パワーユニット

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第52弾です」

礼子「いよいよパワーユニットですね」

仁「この夏は暑かったからな……本来なら先月のお題だったんだが」

礼子「暑すぎて何もやる気が起きませんでしたね、作者さんも」

仁「まあそうだな。で、ようやく今月完成できたわけだ」

礼子「フロントユニットと組み合わせると、模型自動車ができるわけですね」

仁「そうなる。CTXー6になるだろうな」次回はまた違うものをやりそうだが

礼子「楽しみにしておきます」




挿絵(By みてみん)


仁「まずは歯車ギヤだ」タ◯ヤのギヤセット他です

礼子「ギヤ比はどうやって決めたんですか?」

仁「それなんだが、室内で走らせる、24分の1前後用、ということでおおよそ30:1でいくことにした」市販のものだと5:1から10:1くらいです

礼子「結構遅いのでは?」

仁「6畳から8畳くらいの室内で走らせるからこのくらいでいいはずなんだ」モーターは高回転型を使うつもりだし

礼子「なるほど」

仁「でも一応、ギヤ比を変更できるようには考えている」

礼子「だから2種類あるんですね」

仁「そうだ。デフギヤユニット(Z(歯数)=44)とそれを駆動するドライブギヤ(緑色)Z=12は決定とする」

礼子「その中間で調整するわけですか」

仁「うん。まずは黄色いスパーギヤ(六角の受けがある)Z=36とグレーの2段ギヤZ=36/18」

礼子「もう1つはグレーのスパーギヤ(六角の受けがある)Z=42と青い2段ギヤ36/12ですね」

仁「これでそれぞれのギヤ比を計算してみる」

礼子「はい」

仁「黄色いスパーギヤの方は(44x36x36)/(12x18x10)で計算できる」最後の10はモーターのピニオンギヤです

礼子「ええと……57024/2160=26.4ですね」

仁「通分すれば筆算でもできるけどな」今は電卓があるから楽です

礼子「で、グレーのスパーギヤの方は(44x42x36)/(12x12x10)=66528/1440=46.2となりました」

仁「ピニオンギヤを8枚とか12枚、14枚、16枚に変えるともっと調整が効くからな」

礼子「わかりました」




挿絵(By みてみん)



仁「で、今回使うモーターはこれ」電動飛行機用です

礼子「本格的ですね」

仁「性能表がないからスペックは不明なんだがな」

礼子「フラットタイプだから省スペースですね」

仁「そうかもな」



挿絵(By みてみん)


仁「ギヤボックスを作るに当たって、一番気を使うのは軸間距離だ」

礼子「ギヤの歯が噛み合わなかったり噛みすぎて固くなったりしますからね」

仁「で、ちゃんと理論値というものがあるから、それを使う」

礼子「この組み合わせの場合は13.5ミリですか」

仁「うん。ギヤには『ピッチ円』という値があって、そのピッチ円同士で接するときが一番効率がいいそうだ」

礼子「なるほど。で、この場合は……」

仁「モジュールm(歯の細かさを表す値)が0.5のギヤで、歯数Z=42ならピッチ円直径はZ/m=21ミリだな」

礼子「12枚のギヤなら12/0.5で6ミリですね」

仁「そうそう。これは直径だから、軸間距離は2つを足して2で割ればいい」(21+6)/2=13.5です

礼子「写真の13.5はそれですね」

仁「もう1つの組み合わせはZ=36とZ=18だからそれぞれ18ミリと9ミリになる」足して2で割ってやっぱり13.5です

礼子「つまり互換性のある組み合わせということですね」

仁「そういうことだな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、試して見るための治具を作った」

礼子「MDFですね」

仁「加工しやすいからな」




挿絵(By みてみん)


仁「噛み合わせの様子だ」ギヤが傾いているのは、六角のストッパーが入っていないため不安定なのです

礼子「でもちゃんと噛み合っていることは確認できましたね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、同じようにしてもう1段」

礼子「デフギヤ側ですね」

仁「うん。こっちはZ=44とZ=12だから(44+12)x0.5=28、2で割って14ミリだな」




挿絵(By みてみん)


仁「もう1つの噛み合わせも同じ」

礼子「問題なさそうですね」




挿絵(By みてみん)


仁「次に検討するのはギヤの配置だ」

礼子「直線上に並べると場所を取りますからね」




挿絵(By みてみん)


仁「そこで、こうやって曲げてみていろいろ検討するわけだ」

礼子「こういうときは便利ですね」

仁「試作は必要だよな」




挿絵(By みてみん)


仁「ということでイメージスケッチ」

礼子「雰囲気はわかります」

仁「デフギヤから30度傾けて1段、そこから90度傾けて見た感じだな」




挿絵(By みてみん)


仁「本番用素材だ」

礼子「アルミニウムですか?」

仁「そう。ネットで買った、『A6061』という素材だ」ジュラルミンほどではないが強度がある

礼子「T651というのは?」

仁「熱処理の内容だな。これをすることで強度が増していると思えばいい」

礼子「青いのは表面保護用のシートです」




挿絵(By みてみん)


仁「加工開始だ」例によってバンドソーで切りました

礼子「穴あけは2枚一緒にやるんですね」ずれないように

仁「うん。長い方はモーターを取り付ける方だな」イメージスケッチにあります




挿絵(By みてみん)


仁「とにかく慎重に、0.1ミリの狂いもないように……という気持ちで穴あけをする」

礼子「作者さんはクロステーブルを使いました」

仁「両方が針になったデバイダできっちりと寸法をけがいて、センターポンチを正確に打てば大丈夫です」

礼子「軸間距離を調整できるようなシステムがほしいですね」

仁「作者も寝ながら考えているようだ」




挿絵(By みてみん)


仁「左右のプレートの間隔を検討する」

礼子「デフギヤユニットは、左右のプレートで抑えないと分解しちゃいますからね」

仁「そうなんだよな。で、ジュラコンのスペーサーやらワッシャーやらを挟んで、最適な間隔を模索するわけだ」




挿絵(By みてみん)


仁「で、結論は31.4ミリ」

礼子「微妙ですね」

仁「デフギヤユニットの都合だからな……」




挿絵(By みてみん)


仁「次に、このギヤボックスをシャーシに取り付ける部品を作る」

礼子「アルミのアングルですね」

仁「10ミリx10ミリのL型等辺アングルだ厚みは1ミリ」

礼子「同時に左右のプレートも固定してしまおうというんですね」

仁「そうそう」




挿絵(By みてみん)


仁「スペーサーの作り方」

礼子「少しだけ長めに切って、垂直治具にはめ込んで削っていくんですね」

仁「そうそう」治具といっても10ミリくらいの厚みの端材にパイプの外径と同じ穴を空けただけです




挿絵(By みてみん)


仁「カウンターギヤ軸を作る」左側、矢印の穴に使います

礼子「あの、字が読めません」

仁「だな。真鍮の丸棒の左側上に、{ を時計回りに90度回した上に M3ねじ と書いてある」縮小する前は読めたんですが

礼子「要するに、真鍮棒の片側にM3のネジ山を切るんですね」

仁「そういうことだ」

礼子「で、右側がそこにナットをねじ込んだところです」




挿絵(By みてみん)


仁「で、そこに軸を立てて、ギヤをはめ込んでみた」

礼子「モーターにぶつかったりするから通しの軸は使えなかったんですね」

仁「そうなる」




挿絵(By みてみん)


仁「で、ちょっと横道にそれて固定用の部品だ」

礼子「シャーシにネジ止めするための穴と、左右のプレートに挿入するための穴が空けてありますね」

仁「それぞれの穴をずらしておかないと、ネジ止めの時干渉するから要注意だな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、組み立ててみた」

礼子「ようやく形になりました」




挿絵(By みてみん)


仁「ギヤ比を変えてみる」

礼子「うまくいってますね」




挿絵(By みてみん)


仁「ホイールを付けよう」

礼子「フロントユニットの時に用意したものです」




挿絵(By みてみん)


仁「デフギヤの軸に空けた穴にスプリングピンを打ち込むわけだ」

礼子「小さいですね」

仁「呼び径1.0、長さ8ミリだからな」




挿絵(By みてみん)


仁「打ち込むとこうなる」

礼子「これをホイール側の溝に組み合わせて空転を防ぐわけですね」

仁「そうそう」




挿絵(By みてみん)


仁「で、ホイールはM3のナットで止める」

礼子「外れないよう最終的にはネジロックをしてもいいですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、組み上がり」

礼子「ちょっと左側の軸が短いですね」

仁「うん。これは試作だから、本番用にはちゃんとフィードバックする」




挿絵(By みてみん)


仁「タイヤも取り付けてみた」

礼子「これでパワーユニット完成ですね」

仁「うん」




挿絵(By みてみん)


仁「パワーユニットを横から見たところ」

礼子「なかなかメカメカしいです」




挿絵(By みてみん)


仁「フロントユニットと共に配置してみた」

礼子「自動車っぽく見えます」

仁「全長180ミリから200ミリのものなら作れそうだな」

礼子「CTXー6ですね」

仁「そうだな、……いずれ、これを使ったCTXー6をご紹介したいです」




*   *   *


仁「ということで今回は『パワーユニット』でした」

礼子「お疲れ様でした」

仁「作業時の怪我、火傷にはご注意ください」

礼子「フラックスが目に入った場合は流水で洗い流し、眼科へ」

仁「手を切ったら流水で洗い流し、汚れが傷口に残らないよう注意です」

礼子「最近作者さん、左手の人差し指を金槌で叩いてましたね」それも3回も

仁「………………趣味は楽しく、安全に」



仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
細かい作業お疲れ様でした、精度の高い作業ばかりで大変だったでしょうね。 車の動力機構部分の制作がかなり進んでメカらしい形になるのを楽しく拝見させていただきました、模型自動車の完成が待ち遠しいですよ。…
いきなり詳細度が上がって大歓喜です。 歯車の距離とか、A6061-T651 だとか。 ていうか、個人でそんなアルミが手に入るんですねぇ……。 ところで、雌ねじって、まっすぐ立てるの難しくありませんか…
>>パワーユニット 1.6リッターV6ターボ+MGU-K/Hで・・・・ >>結構遅い 速いとあっという間に壁に・・・ >>T651というのは? たぁみねぇたぁ? >>左手の人差し指を金槌で でっ…
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