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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
67/73

049-3 6分の1模造刀 その3

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第49弾その3です」

礼子「前回の続きですね」

仁「うん。なんとか完成したな」

礼子「予告通りですね」




挿絵(By みてみん)


仁「まずは、ざっと用語のおさらい」

礼子「最初にしてほしかったですよね」

仁「言うな」

礼子「でもわかりやすいですね」構造も理解できました

仁「蛇足だが、『切羽詰まる』の切羽は、つばの両面に挟む薄い金属板のことなんだそうだ」鍔ががたつかないように挟むパッキン的な役目をしているわけです

礼子「なるほど、そうなんですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、本編開始」

礼子「いきなりなんですか?」

仁「うん、鞘を作るんだが、それは刀に直接樹脂を盛って作るから、ぴったりになりすぎないようにな」

礼子「ああ、ラッカーの厚み分、隙間を作ろうというんですね」

仁「そういうこと。できたあとにラッカーをシンナーで落とせば、僅かではあるが隙間ができるからな」

礼子「で、プラモデル用のクリヤー塗料と、塗った刀身を乾燥させるための台ですね」

仁「そう。ちなみに作者お手製だ」まあ、切った段ボールを並べて貼っただけですが




挿絵(By みてみん)


仁「で、塗装して乾燥」

礼子「余計なことですが背景は……?」

仁「ああ、シンナー臭が気になるのでベランダに出したからな」

礼子「モルタルみたいなのは壁でしたか」




挿絵(By みてみん)


仁「で、型取りの準備」

礼子「油粘土ですね」100均の

仁「何度も使えるしな」

礼子「実際のキャストでも使いますしね」両面どりの時




挿絵(By みてみん)


仁「では型取り開始」

礼子「刀身をぎゅっと押し付けます」

仁「油粘土は水平に気を付けること」




挿絵(By みてみん)


仁「で、刀を外すと跡が残る」

礼子「このくぼみに樹脂を流すんですか?」

仁「まだだ。これじゃあ刀の型取りになってしまう」




挿絵(By みてみん)


仁「彫刻刀を使って周囲を削っていく」

礼子「なるほど」

仁「失敗しても修正が楽だからいいな」やり直しも簡単だし

礼子「どの程度削ればいいですか?」

仁「それが難しいが、削りすぎても樹脂の使用量が増えるだけだからな」逆に削り足りないと鞘が肉薄になってしまいます




挿絵(By みてみん)


仁「削り終えたら、刀身を水平に保持し、型の上で固定する」やり方は問いません

礼子「動かなければいいですね」

仁「うん。ただ、刀身の下側に樹脂を入れてから改めて刀身を固定するので、動かせないと困る」

礼子「だから作者さんは鉄床に刀身を固定しているんですね」

仁「そうだ。鉄床ごと移動できるからな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、これが素材だ」

礼子「接着剤ですか」2液型エポキシの

仁「これが一番手頃だったんだ」パテでは硬すぎるし

礼子「他のキャスティング用樹脂はどうなんですか?」

仁「流動性が高いから、こんな簡易型だと多分流れ落ちる」

礼子「確かに」

仁「1つ作ったらもうお役御免の型だからな……」量産する意味がないので




挿絵(By みてみん)


仁「で、注型します」

礼子「30分硬化型くらいがちょうどよさそうですね」

仁「そうだな。5分型では修正が難しいからな」作業しているそばから硬化していくので

礼子「まず型の底にエポキシを流し込んで、そこに刀をそっと置いて固定します」

仁「そして刀の上に樹脂を置いていきます」




挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


仁「で、固まったら取り出す」油粘土は繰り返し使えるのでポリ袋に入れてしまっておきましょう

礼子「かなり太いですね」

仁「うん……」これをひたすら目的の形状に削っていきます




挿絵(By みてみん)


仁「まずはカッターなどで大まかに削る」

礼子「怪我にはくれぐれもご注意ください」

仁「意外とエポキシ接着剤ってカッターの刃にへばりつくので削りにくいんだよな」




挿絵(By みてみん)


仁「まあとにかく、ヤスリやベルトサンダーなど総動員して削ったわけだ」

礼子「エポキシ樹脂なのでベルトサンダーで削ると摩擦熱で軟らかくなりますね」

仁「そうだな。その時、刀身が抜けかかったりするので要注意だ」

礼子「刀身が入っていないとくにゃくにゃして削りにくいですしね」最悪削りすぎます




挿絵(By みてみん)


仁「で、だいたい削れたら抜く」

礼子「削っている最中にゆるくなってきますしね」

仁「刀の差込口つまり『鯉口こいぐち』をカッターできれいに切ってやる必要がある」切りすぎないよう注意です

礼子「繰り返しますが怪我にはご注意ください」




挿絵(By みてみん)


仁「で、刀身の方はラッカーをシンナーで拭き取る」

礼子「換気にご注意ください」




挿絵(By みてみん)


仁「鞘の方は1000番くらいのスポンジペーパーで仕上げておく」

礼子「傷が残っていると塗装時に目立ちますからね」

仁「その場合はサーフェーサーで埋める手もあるな」

礼子「なるほど」

仁「で、黒く塗る」

礼子「今回は黒鞘ですね」

仁「実物は黒漆だが今回はラッカーだ」

礼子「朱鞘というのもありますね」

仁「その場合は朱漆だな」ラッカーなら『ブライトレッド』のような明るめの赤がいいかも

礼子「2度ほど黒をスプレーし、仕上げに光沢クリアーを吹いています」




挿絵(By みてみん)


仁「で、部品完成だ」

礼子「さすがに切羽は作らなかったんですね」

仁「うん……」

礼子「鞘のこじりも金具なしですね」

仁「ちょっと小さくてな」

礼子「実際の拵えも金具なしが結構ありますものね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、仮に組んでみた」

礼子「なかなかいいですね」

仁「まあ一品生産だからな」




挿絵(By みてみん)


仁「では、刀身研磨だ」まだヤスリ目が残っているからな

礼子「スティックヤスリですか」

仁「この手のものは番手が豊富だから、粗いものから細かいものに変えていくうえで便利なんだ」

礼子「作者さんは400番、600番、800番と変えていったようです」

仁「1000番以上はスポンジヤスリを使ったな」

礼子「最初からスポンジヤスリを使うと、『しのぎ線』がダレるんですよね」

仁「そうなんだ」水ペーパーを当て木にあてがって削ってもいいです




挿絵(By みてみん)


仁「で、仕上げの準備」

礼子「コンパウンドですね」

仁「プラスチック用でも自動車用でも彫金用でもいい」

礼子「超鏡面まではいりませんが鏡面くらいまではほしいですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、コンパウンドで磨いていくと、ジュラルミンとはいえ黒っぽく光るようになる」

礼子「いい感じの艶が出ますね」

仁「鋼っぽい黒さがいいな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、いよいよつかを取り付ける」

礼子「真鍮釘を切って目釘にするんですね」

仁「そうそう」この釘の太さに合わせて目釘孔を空けておいたわけだ




挿絵(By みてみん)


仁「で、鞘に金具が何もないのは寂しいなということで『栗型』の追加だ」

礼子「腰に差したときの抜け防止にもなるんですよね」

仁「うん。あと、『』という紐を通したりもするな」

礼子「作者さんは1ミリ厚の真鍮の端材があったのでそれを加工してます」

仁「1.2ミリのドリルで穴を空けて、細い棒ヤスリでひたすら削りました」




挿絵(By みてみん)


仁「で、栗形をはめ込む溝を鞘に彫り込む」

礼子「実際は細い平角ヤスリの側面で溝を削りました」

仁「削る側を間違えないように要注意だ」

礼子「前回のイラストにある『表』側ですね」

仁「うん。刀を腰に差した時、外側になる方が表だからな」

礼子「削りすぎないようマスキングテープでガードしています」




挿絵(By みてみん)


仁「で、接着だ」

礼子「瞬間接着剤を爪楊枝の先に付けて溝に塗り、ピンセットで栗型をそっと置きます」

仁「硬化するまで絶対動かさないように」




挿絵(By みてみん)


仁「で、せっかくなので刀掛けも作ってみようと思う」

礼子「唐突ですね」

仁「以前『歯ブラシ立て』を作った時のアクリルが残っていたんでな」

礼子「形状はネットでみた、アクリル製刀掛けを参考にしました」

仁「それをバンドソーで切ってます」




挿絵(By みてみん)


仁「左右を2つマスキングテープでくっつけて同じ形状に仕上げた」ベルトサンダーや紙やすりを使ってます

礼子「刀を置く凹みは丸棒ヤスリですね」




挿絵(By みてみん)


仁「直角に固定して、アクリル用接着剤で接着」

礼子「この固定が地味に面倒でしたね」

仁「そうだったなあ」直角が大事です




挿絵(By みてみん)


仁「で、刀掛け完成だ」端面は例によって溶剤を筆で塗って仕上げています

礼子「なかなかいい感じですね」




挿絵(By みてみん)


仁「置いてみた」

礼子「博物館か美術館の展示っぽいです」




挿絵(By みてみん)


仁「もう1枚、鞘に収めた状態で」

礼子「これもいいですね」

仁「アクリルの一部に接着剤が飛び散って曇ったのが残念だな……」

礼子「画竜点睛を欠く、というやつでしょうか」

仁「急に難しい言葉を使うな」点睛を欠く、とはちょっと違うような気も




*   *   *


仁「ということで今回は『6分の1模造刀 その3』でした」

礼子「お疲れ様でした」

仁「作業時の怪我、薬品による中毒にはご注意ください」

礼子「薬品が目に入った場合は流水で洗い流し、眼科へ」

仁「シンナーや塗料を扱う際にも要注意です」

礼子「換気にご注意ですね」



仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


 20250601 修正

(誤)『切羽詰まる』の切羽は、つばの両面に挟む薄い金属版のことなんだそうだ」

(正)『切羽詰まる』の切羽は、つばの両面に挟む薄い金属板のことなんだそうだ」

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― 新着の感想 ―
良い出来栄えですね、刀身が金属製だから市販の模型の日本刀よりも見栄えが良いですよ。 次に作る時には色を変えて礼子の愛刀『桃花』にするのも良さそうです、その時は是非とも市販のドールを改造したミニ礼子フ…
指が太くて尚且つ不器用な私には無理な工作です。(´・ω・`)
結構それっぽくなるものですなぁ。 しかし、こういう趣味はもっと手軽にできないかと言う気持ちと、手間をかけるから楽しいという気持ちがせめぎ合うなぁ……。
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