043 ＤＣブラシモーター改造
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第４３弾です」
礼子「今回はモーターの改造ですか」
仁「うん。ＲＣ模型を作るには必要なんだ」
礼子「電圧の関係ですね？」
仁「そういうことだな。おおよそ６Ｖから７．４Ｖ（バッテリー種類によります）が使われているんだが、市販のモーターでこの電圧に対応しているものって少ないんだよ」
礼子「一般模型用が１．５から３Ｖくらい（まれに４．５Ｖ）ですね」
仁「そう。あとは自動車用（電動ウインドウやドアミラーの角度調整用）だが、これは１２Ｖだからな」
礼子「７．２Ｖだと微妙にパワー不足ですね」
仁「そうなんだよ。だから作者は自分で巻き直す方法を選んだ」
礼子「チューンアップというやつですか」
仁「どっちかというとデチューンかもな……」
礼子「作者さんはしょっちゅうやっているんですかね？」
仁「しょっちゅうではないが、もう何度もやっているようだ」
仁「まずはモーターだ」今回は１３０系のモーターです
礼子「ミニ◯駆用ですね」
仁「限界電圧が３Ｖだから、これに７．２Ｖを掛けると２．４倍の電流が流れてしまい、発熱で駄目になってしまうんだ」
礼子「なるほど」
仁「ちょっと寄り道するが、モーターの呼び方って標準があってな」この系統はＦＡー１３０もしくはＦＣー１３０という
礼子「ＦＡがモーターの形式で、Ａの時は金属ブラシ、Ｃだとカーボンブラシ。そして１３０が大きさですね」
仁「そうそう。……で、この先にも数字や記号があって、一般模型用だとＦＡー１３０ー２２７０というんだ」
礼子「どういう意味が？」
仁「２２７０というのは、コンマ２２ミリ径の導線を７０回巻いているという意味だな」
礼子「そうなんですね。……今回のモーターは？」
仁「公式には発表されていないが、作者が実測したところによるとＦＣー１３０ー３４３３だ」０．３４ミリ径の導線が３３回巻いてありました
礼子「カーボンブラシなんですね」
仁「その方が耐久性が高いからな」
仁「ではまず分解だな」
礼子「カシメてある部分をヤスリで少し削るんですね」
仁「そうしないと堅くて起こせないんだ」削りすぎないよう注意です
礼子「で、細いドライバーで爪を起こすんですね」
仁「うん。で、エンドベル（赤い部分）を引き抜くんだが、この時ブラシを引っ掛けて曲げてしまわないよう注意が必要だ」
礼子「左下がそれですね。端子部分は本体ケースに残して、エンドベルだけ引き抜く、と」
仁「そういうこと」
仁「ブラシ周りだな」回転する側を電機子またはローター、ブラシの触れる部分は整流子もしくはコミュテーターっていいます
礼子「これがカーボンブラシですね」
仁「うん。熱に強く、摩耗にも強い」
仁「バラすとこうなる」
礼子「ケース、電機子、エンドベル、下がブラシです」
仁「いよいよ改造のメイン開始だ」カッターの刃を使い、整流子の爪を起こしていきます
礼子「カシメてあるのでなかなか開きません」くれぐれも怪我にはご注意ください
仁「無理やりやると刃が欠けたり整流子側が変形したりするのでじっくりやるのがコツだな」
礼子「折れたら目も当てられませんしね」
仁「で、起こすとこうなる」
礼子「導線は１本に繋がっているんですね」
仁「そうそう。同じ方向にぐるぐる巻いて、次から次へと巻いていき、元に戻ってくる」
仁「で、巻いてある線をほぐす」
礼子「もったいないですね」何かに使いたいです
仁「だな。導線としてはクセがついているから再利用しにくいが、何かを束ねる針金がわりには使えそうだ」
礼子「この時の導線が実測で直径０．３４ミリ、３３回巻き、長さは約９０センチでした」
仁「で、これから巻くウレタン線だ」
礼子「エナメル線じゃないんですね」
仁「そうだな。エナメル線というのは絶縁性の塗料で被覆した銅線の通称らしい」使ったこれはポリウレタン線、ＵＥＷというやつです
礼子「太さが０．２ということは大分細くなりますね」
仁「その分電流が少なくなる」つまり高電圧を掛けられるわけです
仁「で、巻いていく」ぎっちりと
礼子「でも、０．２ミリ径の場合、あまり引っ張ると切れますね」
仁「要注意だな」かといってゆるく巻くのも駄目です
礼子「で、赤い矢印は？」
仁「調子に乗って巻いていくと、鉄芯の張り出し部分に引っ掛かるんだ」
礼子「気が付かずに巻き続けていって最後に気がつくと悲惨ですね」
仁「作者も昔はよくやったそうだ」ほぐして巻き直すのは心を削られます
仁「で、気をつけながら巻いていく」
礼子「今回は８０回ですね」
仁「うん。つまり ＦＣ１３０ー２０８０ というわけだな」
礼子「８０回巻きは実測値で約２００センチありました」
仁「巻き終わりは束ねて爪に差し込む」
礼子「被覆を剥がさなくていいんですか？」
仁「うん、導通を確実にするためにはんだ付けをするんだが、ＵＥＷというのははんだごての熱で被覆が溶けるからわざわざ剥かなくてもはんだ付けできる」
礼子「便利ですね」違う種類のウレタン線の場合ははんだ付けできない場合がありますのでご注意ください
仁「で、はんだ付けが終わったらバランス取りだ」
礼子「手巻きですからばらつきがありそうですものね」１回くらい多く巻いたり少なかったりするかもです
仁「うん。だからこうやって、バランスを確認するんだ」
礼子「プラスチックケースの縁に電機子を乗せて軽く回してやると、重い方を下にして止まります」
仁「重い場合は転がってからちょっと戻ってきたりな」
礼子「あらゆる向きでスッと止まるなら大丈夫です」
仁「そうでない場合はヤスリで重い側の鉄芯を削ります」
礼子「人によっては、ほぐした銅線を１〜２回、軽い側に巻き付けるということも」
仁「それは無駄なウェイトになるから俺はやらない」
礼子「やりよい方法を使ってくださいね」
仁「ただ、銅線の巻き方がゆるいと、回転した時に外れてロックすることがある」そうなるとオーバーヒートするので要注意です
仁「では、組み立てよう」
礼子「まずケースに電機子をセットし（中段）、ブラシユニットをそっと整流子に添えます（下段左）」
仁「で、ブラシユニットがずれないよう注意しながらエンドベルをはめ込めばＯＫ」シャフト両端にワッシャを入れるのを忘れないように
礼子「写真にはありませんが、ケースの爪をドライバーの先などで曲げてエンドベルを固定して完成です」その前にシャフトが軽く回ることを確認しましょう
仁「で、モーターとして使うためにリード線をはんだ付けする」
礼子「プラスマイナスはどうなりますか？」
仁「標準はこの写真のとおりだな」赤がプラス、黒がマイナス（またはＧＮＤ)
礼子「線の太さは？」
仁「今回は２４番線（ＡＷＧ）を使った」米国ワイヤー・ゲージ規格です
礼子「断面積でいうと０．２ｍｍ２相当です」
仁「許容電流が５Ａだそうだから、今回の目的には十分だな」
仁「で、簡単に性能測定をしてみた」
礼子「７．２Ｖのニッケル水素電池を使い、パワーコントローラーで電力を落とし、３０パーセントで６１００回転毎分、５０パーセントで１２５００回転毎分でしたね」
仁「単純計算で断面積が３分の１、長さが２．２倍だから抵抗値は６倍以上になっているはず」
礼子「３Ｖ仕様の６倍なら１８Ｖまで耐えられそうですね」
仁「うん。ただミニ◯駆と違ってＲＣは稼働時間が長いから、単純に比較はできないな」
礼子「そうなんですね」
仁「参考までに、ラインナップの豊富な２８０系モーターだと、１．５〜３Ｖ用が ー２８６５、つまり直径０．２８ミリを６５回巻いている」６Ｖ用だと ー２０１２０ つまり直径０．２ミリを１２０回
礼子「３６５系だと ー１２１９０ なんてのも」２４Ｖ用です
仁「逆にハイパワー系だと ー４０４５ なんてのもあるな」チューンモーターです
＊ ＊ ＊
仁「今回は『モーターの改造』でした」
礼子「お疲れ様でした」
仁「やっと少し涼しくなったなあ」
礼子「ですね」
仁「モーターの改造は全て自己責任になります」メーカーは保証してくれません
礼子「ショート（短絡）にはくれぐれもお気を付けください」最悪発火します
仁「電池の取り扱いも要注意です」
礼子「刃物、工具などによる怪我にはご注意ください」
仁「趣味は安全に、楽しくやりましょう」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
