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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
55/73

041-1 CTX−5 その1

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第41弾その1です」

礼子「今回は模型自動車ですね」

仁「そう。RCカーだな」

礼子「ラジコンとは違うんですか?」

仁「同じだが、ネットで調べてみると、『ラジコン』というのはとある会社によって『商標権』が取得されているので、他の模型会社では使えないんだ」

礼子「ああ、だからRC(Radio Contorol)なんですね」

仁「うん。商標権というのは『商業として』の使用に限られるため、一般人が日常的に他社の製品を『ラジコン』と呼ぶことは法的に問題がないけどな」

礼子「商品をそう呼んではいけないんですね」

仁「そういうことになるな」

礼子「面倒ですね……」

仁「ということで、本編でもRCと呼ぶことにします」



礼子「で、CTX、ということは試作ですね。で、5号車?」

仁「うん。まあ個人でやっているんだからほとんど試作だよな」作者は作りながら考えているものは全て試作としてます

礼子「1はもうなくて、2は4に改造、3はまだそのまま、のようですね」

仁「そうなるな。で、この『5』の用途はズバリ『訓練用』だ」

礼子「何が違うんですか?」

仁「……遅い」

礼子「えっ?」

仁「遅いんだ。つまり、速度が出ないようにして、ハンドル操作に慣れるための練習用だ」

礼子「なるほど?」

仁「だからパワーがない(電力を喰わない)モーターを大きく減速して使っているので電池が長持ちするという副次効果もある」

礼子「……」

仁「慣れたらCTXー4で遊べばいい」

礼子「RCって、そんなに難しいですか?」

仁「礼子の反応速度ならいいけどな」自分が乗っているならハンドルの左右はよく分かるんだが、俯瞰で見ていると向きが変わると面食らうものなんだ

礼子「はじめての人用ですね」

仁「そういうことだな」




挿絵(By みてみん)


仁「まずはパワーユニットということでギヤボックス」

礼子「市販品ですね」

仁「うん。練習用だからこれでいいだろうと」2も3も4も自作ギヤボックスですけどね




挿絵(By みてみん)


仁「そしてタイヤ」

礼子「変わってますね」

仁「スリムなタイヤだな。36ミリと55ミリの2種類が2つ取れるんだが、今回は36ミリを使う」

礼子「これでないといけないんですか?」

仁「駄目だな。……今回は駆動輪に『差動歯車装置(デフギヤ)』がないので、曲がりにくいんだ」この極細タイヤだと無理なくスリップしてくれるのできれいに曲がれる

礼子「それでこれなんですね」

仁「速度も出ないし、パワーも低いので十分なんだ」




挿絵(By みてみん)


仁「で、仮組み」

礼子「出っ張りますね」

仁「うん。作者はそれが嫌で、この後追加工をする」




挿絵(By みてみん)


仁「まず、ホイールの中心部分を薄くする」

礼子「ドリルじゃなく面取り用のビットですね」

仁「うん。ドリルだと削りすぎる心配があったからな」

礼子「左側の写真の右端に写っているハブがこちら側から付くようになるまで削っていきます」




挿絵(By みてみん)


仁「ハブをホイールの逆側から付けるので、ハブの頭も少し落として穴を露出させる」

礼子「上の写真、右側がデフォルト、左側が頭をカットして穴を露出させたハブです」

仁「下の写真はそれをとりつけた所だな」仮組みした2つ上の写真と比べてもらえばどう変わったかわかると思います




挿絵(By みてみん)


仁「で、モーター」DCモーターです

礼子「作者さんは秋葉原の秋の月の部品屋さんで購入しました」高品位な12VDCモーターです

仁「外形寸法が、ギヤボックス付属の130系モーターと同じなので取り付けられる」




挿絵(By みてみん)


仁「モーターに追加工する」

礼子「コネクタと……なんですか?」

仁「積層セラミックコンデンサだな」104、つまり0.1マイクロファラド、耐圧100ボルト

礼子「ノイズキラーというやつですね」

仁「うん。ブラシモーターはどうしてもコミュテータとブラシの接触部で火花が出るから」火花=ノイズ(電波)です




挿絵(By みてみん)


仁「で、はんだ付け」

礼子「モーター缶は鉄に亜鉛メッキが多いのではんだがのりにくいですね」

仁「うん。だから板金用のフラックス(塩化亜鉛含む)を使うといい」はんだごても容量大きめがいいです

礼子「はんだ付け後はフラックスをよく拭き取ってください」錆の原因となります




挿絵(By みてみん)


仁「さて、フロントの足回りの準備だ」

礼子「いきなり、これは何ですか?」

仁「ステアリングナックル……というのかな、それを作ろうとしている」

礼子「6ミリ角の真鍮棒に2ミリの穴を空け、2ミリの真鍮丸棒を通しているんですね」

仁「うん。そしてはんだ付けだ」はんだごては80ワットから100ワットくらいないとなかなかハンダが溶けません

礼子「4つありますが?」

仁「加工に失敗するかもしれないからな……」

礼子「手作業の悲しいところですね」



挿絵(By みてみん)


仁「で、直角方向の面に2ミリの穴を空ける」1.5ミリほどずらしてます

礼子「ずらす意味は?」

仁「アライメントだな。直進性を上げるため、『キャスタートレール』というやつに当たるかな」

礼子「台車の車輪が後ろになびくようなものですね」

仁「そうそう」詳しくは『ホイールアライメント』で調べてみてください

礼子「ナットをはんだ付けするのは?」

仁「シャフトの一方にネジを切っておくことで、タイヤをはめた時のガタつきを調整できるんだ」

礼子「で、最終的にはナット側にもう1つナットを入れて締めれば緩み難くなりますものね」

仁「そうそう」ダブルナットと同じです

礼子「全部をネジにしないのはどんな理由が?」

仁「ネジにはどうしても隙間ができるからガタが発生するんだよな……それを最小にするため、シャフトの大部分にはネジを切りたくないんだ」

礼子「わかりました」




挿絵(By みてみん)


仁「で、完成したステアリングナックルだ」

礼子「バンドソーで切ったんですね」

仁「うん。切り口にはヤスリを掛けておくと怪我をしにくくなる」金属の角や切り屑、工具などで怪我をしないよう気を付けてください




挿絵(By みてみん)


仁「で、シャフトを作る」2ミリの真鍮丸棒の片側に5ミリほどM2のネジをダイスで切っておく

礼子「反対側はドライバーみたいに平べったくするんですか?」

仁「ナットをはんだ付けして、ねじ込むときにナット回しを使えるようにな」

礼子「ああ、だから空回りしないようにですね」はんだの強度に頼らないように

仁「そういうことだ」



挿絵(By みてみん)


仁「で、ナット側にも糸ノコですり割りを入れておいて、シャフトを打ち込む」

礼子「ここにはんだ付けをすれば丈夫になりますね」

仁「そういうことだな」あ、ナットも真鍮製の『電気ビス・ナット』です

礼子「ステンレスや鉄だと硬い上はんだ付けしづらいですしね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、フロントタイヤを入れてみるとこうなる」

礼子「これはどこから?」

仁「あ、言い忘れたな。……ミ◯四駆用のアルミホイールだな」タイヤもミニ◯駆用

礼子「中心部には軸受を入れてますね?」

仁「オイレスという潤滑油のいらない樹脂製の軸受だな」フランジ付きで外形4ミリ内径2ミリ

礼子「アルミのホイールがちょうど4ミリ穴が空いていて都合が良かったんですね」

仁「そうそう」




挿絵(By みてみん)


仁「今度はナックルアームを作る」

礼子「0.5ミリの真鍮ですね」

仁「大まかにカットして、2つ一緒に整形する」タイロッドを止める穴をねじ止めすればいいです

礼子「ナックル側にも糸ノコですり割りを入れてナックルアームを差し込み、はんだ付けします」

仁「このあたりが地味に面倒だな」




挿絵(By みてみん)


仁「フロントアームというかフロントアクスルかな」要するにフロント周りの骨組みです

礼子「1ミリ厚のアルミですね」

仁「軽いほうがいいからな」

礼子「独立懸架じゃないんですね」

仁「今回は『リジッドアクスル』だな」左右の車軸が繋がっている形式です

礼子「これも上下同じものを作るために組み合わせて加工です」




挿絵(By みてみん)


仁「2枚のフロントアクスル用部品を6ミリの間隔で固定できるようスペーサーを作る」6ミリなのはナックルが6ミリ角の角棒を使ったからです

礼子「これもアルミパイプですね」

仁「で、6ミリ厚の板にパイプの外形と同じ5ミリの穴を空けて切ったパイプを差し込み、ベルトサンダーで削れば6ミリ長のものが3つできる」治具の工夫が大事です




挿絵(By みてみん)


仁「で、組み立てたフロントアクスルがこれ」

礼子「ようやく形になりましたね」

仁「こういう地味な加工が面倒な反面、モデラー心をくすぐるんだよな」




挿絵(By みてみん)


仁「タイロッドを付けるため、ボールヘッドを用意する」ピロボールとも言ったりするな

礼子「タ◯ヤさんの『タムテッ◯ギヤ』用のパーツですね」

仁「小さいから手頃なんだよな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、サスペンション」板バネです

礼子「これはまた……」

仁「0.4ミリのリン青銅板で、いくつか試作してこの形状になった」硬すぎるとサスペンションにならないからな

礼子「単に帯状にするだけだと全然たわみませんでしたものね」

仁「作者も地味に苦労してたな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、タイロッドを作る」

礼子「まだ作るんでんすね」

仁「しょうがないだろう」M3、真鍮製の全ねじを使います

礼子「秋葉原のネジ屋さん、廃業したそうですね」

仁「うん……でも、千石船みたいな名前の部品屋さんが引き継いでくれたからありがたい」




挿絵(By みてみん)


仁「で、全ねじはカット。そして……」

礼子「サーボと連結するための部品ですね」

仁「そう、それが、穴の空いた2つの小さな部品だ」穴は3ミリです




挿絵(By みてみん)


仁「全ねじを半分に切って、さっきの小さい部品をはんだ付けするためのすり割りを入れる」糸ノコです

礼子「万力で挟んで固定する際、ネジ山が傷まないよういらなくなったハガキを挟んでいます」




挿絵(By みてみん)


仁「で、はんだ付けして、少々成形したものがこれ」

礼子「ようやく形になりましたね……」




挿絵(By みてみん)


仁「で、サーボホーンも準備」

礼子「2ミリのネジを入れて、外形3ミリ、内径2ミリの真鍮パイプを短く切ったものを差し込むんですね」

仁「これも、ネジ部に直接通すとガタが大きくなるからな」小さい模型はガタが大敵です

礼子「できるだけガタは小さく、少なく、ですね」

仁「それがコツだな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、適当な板の上にユニットを置いてみた」

礼子「ようやく自動車がイメージできるようになりましたね」

仁「続きは来月だな」

礼子「細かい加工が多かったですね」

仁「うん……」




*   *   *


仁「なかなか大変だった」もう少し簡単に出来上がると思っていたんですが

礼子「続いちゃいましたね」

仁「来月には完成させたいな」

礼子「乞うご期待、です」

仁「くれぐれも刃物、工具、金属板、切粉きりこでの怪我にはご注意ください」


仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。


 20240625 修正

(誤)礼子「できるだけ型は小さく、少なく、ですね」

(正)礼子「できるだけガタは小さく、少なく、ですね」

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― 新着の感想 ―
[一言] >>RCカー グランプリ・・・・・ >>『商標権』が取得 ホッチキスとかキャタピラとか・・・ >>CTX Combat Teller ? >>ハンドル操作に慣れるため 舵角の比率がっ?…
[一言] 一分の一モデルで完成
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