034 茶托コースター
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第34弾です」
礼子「茶托コースター……って何ですか?」
仁「茶托にもコースターにも使えるデザイン、のつもりだそうだ」
礼子「なるほど」
仁「まずはイメージスケッチだ」
礼子「八角形ですか」
仁「うん。丸くするには木工旋盤を使う必要があるし、技術も必要だからな」それに材料もそれなりの厚みが必要だし
礼子「イメージする時点で材料や加工法も考えに入れているんですね」
仁「個人で作る利点だな」
礼子「真ん中を凹ませるんですね」両面とも
仁「表面は平らに凹ませる。湯呑やコップを置いても安定するからな」
礼子「裏面は丸みを持たせて凹ませるんですね」
仁「平らでもいいが、お膳やテーブルに何か粒状のものがあると不安定になるからな」
礼子「何か粒状のものって何ですか?」
仁「だから何か、だ」煎餅のクズとかゴマ粒とか?
仁「素材だ」
礼子「いつものMDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)ですね」
仁「うん。ダ○ソーで100ミリ角のものが6枚パックされている」
礼子「イメージスケッチの段階でこれを使うつもりだったんですね」
仁「で、けがきだ」
礼子「対角線は何のためですか?」
仁「中心を出すためだな」コンパスの針を刺す中心を出した
礼子「なるほど」
仁「あと、この板を取り付けるための穴をあける位置を決めるためだな」
礼子「四隅にある、コンパスの線と対角線がクロスした部分に穴をあけるんですね」
仁「で、なんやかんやで『簡易木工旋盤』だ」
礼子「どうしてこんな物を持ってるんですか」作者さんは
仁「昔ハ○ズでデモンストレーションしているのを見て欲しくなったらしい」
礼子「構造としては電動ドリルを取り付けられるベースと、チャック代わりの円板、バイト(のみ)受けですね」
仁「そうだな。鉄の丸棒とアルミ合金製の留め具でできている」ちなみにこの構成のままじゃお椀とかお皿とか、回転体の器は作れないんだ
礼子「だから八角形なんですね」
仁「うん。残念だけどな」
仁「取り付けた」
礼子「3ミリのネジで板を回転する円板に止めていますね」
仁「止めるための治具は自作だな」円板に固定してネジ止めするための板だ
礼子「円板からはみ出ている正方形の板ですね」
仁「そうそう」
仁「で、回転させて、削る」
礼子「危なそうですね」
仁「実際危ないな。まず、ワーク(削られる物)の固定が甘いとたまに吹っ飛ぶことがある……らしい」
礼子「高速で回転しているから怖いですね」
仁「それから、ノミ(刃物)が引っかかるとガクンとするから、削るのは少しずつだな」急いでたくさん削ろうとすると危ない
礼子「みなさんも木工旋盤をお使いになる時は気を付けてくださいね」
仁「で、削った面をサンディングだ」
礼子「回転させておいて削ると楽ですね」
仁「うん。ただ、削り屑の粉が舞うからマスクは必須だな」
仁「で、裏も削る」こっちは凹ます感じ
礼子「イメージスケッチどおりですね」
仁「で、これが表と裏だ」二客一組
礼子「客?」
仁「ああ、日本語の助数詞だな。『客』というのは客用の道具、器。ティーカップなど……と辞書にある」カップなどは五客一組、というものもある
礼子「わかりました」ニホンゴムツカシイデス
仁「で、八角形にするため、型紙を作ってけがく」方眼のボール紙を使うと便利だ
礼子「なるほど」
仁「で、マイタソーを使って45度にカットする」
礼子「マイタソーは重宝してますね」出番が多いです
仁「で、裏側は面取りする」
礼子「木工用のカンナですね」
仁「MDFは木と紙の中間的な素材だからな」さくさく削れる
礼子「削ったら仕上げのサンディングですね」
仁「そうそう」
仁「で、木地が完成した」
礼子「このままだと水やらお湯やらお茶やら吸い込みますよね」
仁「うん。だから塗料を塗るぞ」
仁「まずは下塗りだ」柿渋だな
礼子「水性塗料の一種ですね」
仁「そうだな。柿渋は乾くと耐水性になるから、古来渋紙とか雨合羽にも使われてきたんだ」松煙(松の木を燃やして出た煤)を混ぜて黒い塗料にしたりな
礼子「ああ、古い町並みの黒板塀がそれですね」
仁「粋な黒塀、ってやつな」お富さん
仁「で、黒塗りだ」いろいろ途中を飛ばしましたが
礼子「黒のサーフェーサーを噴き付けて乾かしサンディング、を3回、その上から黒いタミ○カラーを2回ですね」
仁「さらに透明なトップコート(溶剤系)を2回」
礼子「結構手間が掛かりますね」
仁「使っていて剥げるといやだからな」
仁「で、黒だけだと寂しいのでワンポイント加飾する」2箇所だからツーポイント?
礼子「シールですね」
仁「うん。手描きよりきれいだしな」
礼子「黒い台紙の方はダ○ソーで見つけたレジン用のシールですね」
仁「紅葉の方は『和風シール』としてハ○ズで買ったものだな」
礼子「ネイル用のシールでもいいのがあるかもしれません」
仁「で、シール保護も兼ねて、『半光沢』のトップコートを2回吹く」
礼子「作者さん愛用の半光沢ですね」半つや消しでいい質感に
仁「で、完成だ」
礼子「なかなかいい雰囲気ですね」
仁「茶托としてもコースターとしても使えそうだな」そのつもりで作ったんだけどさ
* * *
仁「というわけで、今回は『茶托コースター』でした」
礼子「加工の際はくれぐれも怪我にはご注意くださいね」
仁「削り屑の吸い込みにも注意です」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
20231031 修正
(誤)
礼子「ネイル用のシールでもいいのがあるかもしれません」
(正)
礼子「ネイル用のシールでもいいのがあるかもしれません」
仁「で、シール保護も兼ねて、『半光沢』のトップコートを2回吹く」
礼子「作者さん愛用の半光沢ですね」半つや消しでいい質感に




