033-1 BTXー003 その1
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第33弾です」
礼子「今回は……『BTXー3』って何ですか?」
仁「ほら、一昨年ボートを作ったろう?」
礼子「ああ、はい」
仁「その時作者が開発コードはBTXー002と言っていたろう?」
礼子「ああ、Bはボート、Tは作者のイニシャル、Xは試作でしたね」
仁「そう。で、今年もまた作っているようだ」暑いし
仁「まずは図面だ」
礼子「かなり曖昧ですね?」
仁「うん。作者お得意のワンオフものになるようだ」作りながら考えていくというやつ
礼子「前回(BTXー002)よりシンプルですね?」
仁「走らせる場所が限られているから、できるだけ小さく、がコンセプトだそうだ」
礼子「なるほど」
仁「で、構造も単純にして、浮力重視だな」
礼子「BTXー002は重心が高くなりすぎて不安定だったんですよね」
仁「うん……結局走らせられずにお蔵入りしたらしい」今回はそれを踏まえて失敗しづらい構造にしている
礼子「平底ですね?」
仁「そうだな。池で走らせるなら安定が一番いい」
礼子「操縦性は?」
仁「舵の形状でカバーだそうだ」
仁「無線操縦用の部品だな」
礼子「モーターコントローラー(ESC)が変わりましたね?」
仁「ああ。軽いほうがいいというのでネットで探したようだ」サーボも小さいぞ
礼子「モーターも小さいですね」
仁「通称(?)キャラメルモーターというやつだな」これでも12ボルトまで印加できるんだぞ
礼子「カーボンブラシですしね」
仁「小さいから軽いしな」
礼子「参考にした数値ってあるんですか?」
仁「作者が中学生の頃に作ったフリー(操縦できない)のボートと比較しているな」風呂桶やタライでしか走らせられなかった船です
モーター キャラメル:11g ⇔ RE−26:28g
電池 単4x6:75g ⇔ 単3x2:46g
電池ケース 14g ⇔ 10g
ESC 11g
受信機 6g
サーボ 5g
合計 122g ⇔ 84g
船体容積 約500立方センチ ⇔ 約300立方センチ」
(喫水1センチくらいと仮定)
仁「こんな感じだ」RE−26であって260でないあたりが時代だな
礼子「後者がフリーですね」前者が無線操縦バージョン
仁「重さの比に合わせて船体の大きさを決めた」
礼子「あ、スクリューや舵は同じ程度だろうとカットしてます」
仁「で、素材だ」
礼子「バルサですね」
仁「今回は曲線にこだわらない作りになるからな」
仁「まず側板から作っていく」4ミリ厚のバルサです
礼子「ワンオフとは言えさすがに図面がありますからね」
仁「マスキングテープで止めて大きさを揃えていくんだ」左右で微妙に寸法が違うのは困るからな
仁「で、図面通りにカット」
礼子「船首部の角度は45度ですね。もう少し鋭角にしたほうがよかったのでは?」
仁「うん、もっともな疑問だが、それは後々はっきりさせる」
礼子「わかりました」
仁「で、接着だ」まずは船底から
礼子「事前に直角や左右のズレがないよう、治具で押さえるんですね」
仁「まあ、治具というほどのものでもないがな」底板は2ミリ厚のバルサです
仁「で、斜めの部分他にも2ミリ厚のバルサを貼っていく」2液型のエポキシです
礼子「はみ出しは後で削るんですね」
仁「そうそう」
礼子「こういう構造はモノコックになるんでしょうか」構造材がなくて船体全体で強度を出していますから
仁「うん、モノコックもどきだろうな」
仁「さて、船体を貼った接着剤が硬化するまで、部品を作る」0.4ミリ厚の真鍮とM2のスペーサー(8ミリ長)です
礼子「まずはスクリューですね」
仁「うん。ブレードの作り方は一昨年の製作記事を参考にしてもらいたい」今回のはモーターが非力なのでかなり小さいです
礼子「6枚ありますが?」
仁「あまり手間は変わらないので6枚作ってみたんだとさ」実際に使うのは3枚です
仁「で、スクリューを作る」
礼子「ハブに45度の切込みを入れてブレードを差し込み、はんだ付けですね」火傷や怪我にご注意ください
仁「ちゃんとブレードに曲げを入れるのも同じ」
礼子「拘ってますね」
仁「そしてハブにはんだ付けだが……今回は新治具があるな」
礼子「ブレードを3枚同時に支持してくれるんですね」
仁「これはいいぞ。これまでだと1枚はんだ付けしてからもう1枚を付けようとすると熱でハンダが溶けて落っこちてしまうということがない」あれはイライラするんだ
礼子「わかります」
仁「そしてスクリュー軸に(今回は2ミリの洋白線)ダイスでおねじを切ってスクリュー関係の部品づくりは終了だ」
仁「で、ちょっと寄り道」
礼子「これは?」
仁「一昨年、螺旋階段の勾配の話をしたろう?」
礼子「ああ、中心ほど勾配がきつくて、周辺ほど緩くなるんですよね」
仁「それを視覚的に見えるようにした」0.3ミリ厚のプラ板を5ミリx30ミリに切って中央に穴を開け、軸を通したものです
礼子「確かによくわかりますね……」
仁「で、スクリュー完成だ」
礼子「真鍮色ですね」
仁「気が向いたらメッキしてみてもいいかな」
仁「で、これが今回の新技術、『シリングラダー』だ」ラフな図面ですが
礼子「断面が魚の形みたいなんですね」
仁「うん。それが肝でな、舵角を大きく取っても水流が剥離しないから舵が効く……そうだ」
礼子「一昨年の『ベッカーラダー』よりは作りやすそうですね」
仁「それがそうでもなかった。今回も低発泡のスチロール樹脂、タ○ヤの『プ○ボード』を使ったんだが、左右対称な魚の形に削るのが思ったより面倒だった」
礼子「お疲れ様です」
仁「まあ素材は3ミリ厚のプラ○ードと2ミリの洋白線、それに0.5ミリ厚のプ○バンだな」それにプラモ用(スチロール樹脂用)の接着剤
仁「で、作成だ」左上から右下へ見ていってください
礼子「軸が回らないよう先をちょっと曲げてますね」
仁「うん。そしてズレないようテープで仮止めしてから削っていく」軸を入れてしまうとやりにくそうだからな
礼子「断面形状が魚みたいな形になったら軸を入れて接着ですね」
仁「うん。洗濯ばさみやクランプでしっかり押さえましょう」接着剤の有機溶剤は吸い込まないようご注意ください
仁「で、完成したラダーだ」
礼子「やっぱり面白い形です」
仁「接着剤のはみ出しや微妙なズレを修正して完成だ」
仁「で、ラダー受けだな」これも0.5ミリ厚真鍮板と内径2ミリの真鍮パイプで作ります
礼子「パイプを通す穴は少し小さめに作って、目打ちなどで出っ張らせてパイプを通すんですね」芸が細かいです
仁「一応はんだ付けする面積を増やす目的があるんだけどな」はんだ付け、火傷にご注意ください
仁「で、部品がだいたい揃ったので並べてみる」
礼子「問題なさそうですね」
仁「うん。ワンオフだから現物合わせをたびたびやらないとまずいんだよな」
仁「今回はここまでです」
礼子「あと1回か2回ですね」
* * *
仁「というわけで、今回は『BTXー003』でした」
礼子「加工の際は怪我にご注意くださいね」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
20230731 修正
(誤)仁「で、斜めの部分他にも2ミリ圧のバルサを貼っていく」2液型のエポキシです
(正)仁「で、斜めの部分他にも2ミリ厚のバルサを貼っていく」2液型のエポキシです




