031 LEDライト
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第31弾です」
礼子「今回はLEDライトですか?」
仁「うん。電子回路は工作箱では初めてだな」
礼子「電子回路と電気回路って違うんですか?」
仁「うーん、電気を流す回路は全部『電気』回路だけどな。これはまあ『広義』、つまり広い意味で、ということになるな」
礼子「確かにそうですね」
仁「で、まずは『電子』回路だが、『半導体』を使っている回路と思ってくれていい」正確には『能動素子』というようです
礼子「なるほど。では、電池に電球を繋いで点灯させるのは電気回路、LEDを繋いで点灯させるのは電子回路ですね」LEDは半導体ですから
仁「ちょっと微妙だけどな」ダイオードということで見れば整流作用もあるし
礼子「LEDを点灯させるって、豆電球とは違うんですか?」
仁「違う。豆球は基本的にプラスマイナスの区別がないし、定格電圧どおり(3ボルトとか6ボルトとか)に電圧を掛ければ点灯する」
礼子「LEDは違うんですね?」
仁「違う。基本的に電圧ではなく電流を制御する」電流『も』という方が正しいかな
礼子「具体的には?」
仁「まず『半導体』(LightーEmittingーDiode)だから、電流が流れる向きが決まっている」整流用じゃないから逆接続をすると壊れることもある」
礼子「なるほど」
仁「だから、基本的に電流制限抵抗を直列に繋いで使う」
礼子「抵抗値はオームの法則で決めるんですね」
仁「そうだ。今回は電圧が5ボルトだから、使うLEDの定格で決める」
礼子「高輝度LEDを使うんですね」定格は30mAのようです
仁「なら抵抗=電圧/電流だから、5/0.03=166.7オームだな」最大定格が50mAだから30mAよりちょっと多くなってもいいので150オームの抵抗にしよう
礼子「抵抗のワット数も気をつける必要がありますね」
仁「いいところに気が付いたな」電力=電圧・電流だから5x0.03=0.15ワットとなる
礼子「抵抗の定格は1/4ワットでいいですね」0.25ワットです
仁「それでいいだろう」1/6だと0.167ワットで結構ギリギリだからな
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仁「5月31日、感想欄で間違いを指摘してもらった」
礼子「どこですか?」
仁「抵抗値の計算だ。……電源電圧が5ボルトはいいとして、LEDでの電圧降下がカタログから3.1ボルトあるので、抵抗に掛かる電圧は『5ー3.1=1.9ボルト』となる」
礼子「つまり抵抗=電圧/電流なので1.9/0.03=63.3オームですね」
仁「ああ。150オームだと電流=電圧/抵抗だから0.01267、つまり12.7ミリアンペアだな」実際に十分光ってくれるからこのままいくけど
仁・礼子「「皆様、お詫びして訂正いたします」」
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礼子「こうしたいわゆる『容量』には注意ですね」
仁「ショットキーダイオードはBAT43というのを使った」500mAだそうだ
礼子「インダクタ(コイル)は『AL0410ー470K』ですね」47マイクロヘンリー、340mAです
仁「コンデンサはC1は105の積層セラミックコンデンサ」つまり1マイクロファラド、耐圧25ボルト
礼子「出力側のC2は106の積層セラミックコンデンサですね」10マイクロファラド、耐圧25ボルトになります
仁「耐久性を考えるとアルミ電解コンデンサよりセラミックなんだよなー」
礼子「実際これで不具合は起きていませんものね」詳しい方でこれはいかんと気が付かれた方がいらっしゃいましたらご教示ください
仁「部品の型番は以下のとおり」
DCDCコンバータ:HT7750A
C1:積層セラミックコンデンサ 1μF 耐圧25ボルト
C2:積層セラミックコンデンサ 10μF 耐圧25ボルト
L1:インダクタ AL0410ー470K 47μH
D1:ショットキバリアダイオード BAT43
R1:炭素皮膜抵抗 150Ω 1/4W
LED:5mm白色LED OSW54K5B61A 10cd60度
ユニバーサル基板 2.54ミリピッチ 紙エポキシ
礼子「LEDの10cdは10カンデラ、明るさの値です」60度は照射角度で、広範囲を照らすタイプです
仁「で、まずは回路図だ」手描きの
礼子「どこがどうなっているのかわかりません」
仁「安心しろ。作者もわかってない。メイン部品の『HT7750』のデータシートやネット記事かを参考にしたものだ」HT7750Aが正式名称のようです
礼子「はあ」
仁「作者は機械系の技術屋だから電子部品については高校レベルのことしかしらない。大体の働きはわかっても1から設計はできない」
礼子「なので職人的な作り方になるんですね」
仁「そう思ってくれていい」
礼子「で、『HT7750』が肝なんですね?」
仁「そうだ。これは『DCーDCコンバーター』の一種で、0.7ボルトから6ボルトを5ボルトに変換してくれる」もちろん直流で
礼子「トランスではないんですね?」
仁「トランスは交流でないと使えないからな」
礼子「集積回路なんですね?」
仁「そういうことになるな。外形はオーソドックスなトランジスタと同じだが」パッケージ名はTOー92
礼子「その他はコンデンサ、抵抗、コイル、それにショットキーダイオードですか?」
仁「うん」作者もその動作については理解していません
礼子「でも作っちゃうんですね」
仁「まあな。構造を理解していなくても回路図どおりに作ればちゃんと動作してくれるぞ」
礼子「で、上が回路図で下が部品配置図ですね?」
仁「うん。ただ、作者は古い知識で書いているから、部品の記号が現行と違うけどな」そこは勘弁してください
仁「前置きが長くなったが、実体図と部品だ」
礼子「これがあるとわかりやすいですね」
仁「うん。作者も間違えないよういつもこれを描いている」
仁「もう1つの重要部品、ケースと基板だな」
礼子「電池ケースですか?」
仁「うん。スイッチ付き、単3電池2本用のケース、リード線付きというやつだ」秋葉原で買った
礼子「秋の月か千石船か、どっちかですね」
仁「そうそう」止めねじがこの位置にあるものが使いやすいですので注意してください
仁「あとははんだとはんだごてだな」板金用じゃなく電子回路用が望ましいです
礼子「30ワットくらいですね」板金用は100ワットとか300ワットとかありますし
仁「セラミックヒーターで、パワーボタン(押している間だけ90ワットになる)があると便利だ」大きめの部品をはんだ付けする際にやりやすいです
仁「で、ケースの中身だ」基板もカットしたぞ
礼子「基板はアクリル用カッターとか金工用ノコギリとかバンドソーなどで切ります」
仁「作者はバンドソーだったな」
礼子「ちょうど電池を入れる場所にすっぽり入る大きさですね」
仁「そうだ。なにせ電池1本でLEDを点灯させようというんだからな」
仁「まずは電極を引っこ抜く」力技だ
礼子「何のために?」
仁「このあとで説明するがリード線をはんだ付けするためだ」ラジオペンチを使って引っこ抜く
仁「次にマイナス極に使われているばねを引っこ抜く」
礼子「こちら側に基板を組み込むからですね」
仁「それもある」
礼子「細いマイナスドライバーの先でちょっとカシメを緩めてやるとすぐ取れます」
仁「くれぐれも怪我にはご注意ください」
仁「ばねを抜いたら今度はコードを引きずり出す」
礼子「ケースの穴から外に出ているのを引き込むんですね」
仁「先の丈夫なピンセットがあると便利かも」
仁「で、ばねを外した場所にケースの赤いリード線をはんだ付けする」ちなみに新品部品を使った場合、配線材に困ることはありません
礼子「赤いリード線はケースに付いていた分を大体半分に切って使います」
仁「で、赤リードをはんだ付けした電極を元通りにはめ込む」
礼子「怪我をしないために無理な力を入れないよう気をつけてください」
仁「で、これがケース穴」
礼子「ここからLEDを出すんですね」
仁「そういうことだ。でもこの穴の直径、5ミリLED用には少し小さいんだよ」
仁「というわけで、テーパーリーマーを使って穴を広げる」LEDを合わせながらやるといい
礼子「広げすぎると戻せませんからね」
仁「さて、いよいよ基板の製作だ」
礼子「基板はカットしてあるので部品の準備ですね」
仁「うん。部品の足は手で曲げないで、部品側をラジオペンチやピンセットで掴んで曲げるようにする」手で曲げると部品側に力が加わって最悪破損することも
礼子「写真はインダクタ(コイル)ですね」他の部品も同様にします
仁「その際、基板の穴ピッチに合わせることが大事だ」
礼子「あと、ショットキバリアダイオードは方向性がありますね」
仁「印が(カソードマーク)付いているから見分けられる」
礼子「+とかーじゃないんですね」
仁「ダイオードはAとKだな」AからKに向かって電流が流れると覚えればいい
礼子「アルファベット順ですね」
仁「で、部品をはめ込んだのがこれ」
礼子「らしくなりましたね」
仁「裏側、つまりはんだ付けする面だ」
礼子「部品のリード線をうまく曲げて回路を作るんですね」
仁「そうそう。今回の場合、リード線を追加する必要はなかった」
仁「で、はんだ付けをし、余計なリードを切って仕上げたのがこれ」
礼子「いかにも回路ですね」
仁「趣味で部品を寝かしたけど、その辺は好みでどうぞ」
仁「で、いよいよLEDだ」
礼子「ダイオードですからアノードとカソードがあるんですね」
仁「うん。LEDの中をよく見ると、アノード側から細い線が出てカソード側は小さなお皿状になって受けている」だから見ればどっちがどっちかわかる
仁「LEDにリード線をはんだ付けする」
礼子「アノード側に赤、カソード側に黒ですね」
仁「そうだ」
礼子「洗濯バサミみたいなのは何ですか?」
仁「アルミニウム製の放熱クリップだな」半導体は熱に弱いから、ここで熱を逃してやって、本体まで伝わらないようにする道具だ
礼子「無いとだめですか?」
仁「今のシリコン半導体は昔、つまりゲルマニウム時代に比べて熱に強くなっているから短時間ではんだ付けすれば大丈夫だ」作者ははんだ付けが下手だから壊さないように使っている
礼子「持っているんですから使わないと損ですものね」
仁「損かどうかはともかく、安心できるな」
礼子「あ、赤リードは先ほど切った残り半分です」
仁「黒リードも、ケースに付いているものを半分弱くらい(赤に合わせて)切って使います」
仁「配線です」
礼子「基板の入力側は電池ケース側の赤と黒ですね」赤は電源、黒はグランドです
仁「LEDは基板の出力側だな」赤は電源、黒はグランド。それは同じ
仁「回路としては完成なので、電池を入れて試してみる」
礼子「点灯しましたね」
仁「スイッチは電池ケースのものをそのまま使えるからいいな」
仁「で、組み付ける」
礼子「電池ケースの片方、ばねを抜いた方に基板を押し込むんですね」
仁「そうだ。そしてリード線もうまくまとめて押し込む」
仁「固定にはグルーガンを使った」小型の簡易タイプ。こうした用途にはちょうどいい
礼子「ない場合はどうしますか?」
仁「2液型のエポキシ接着剤でいいだろう」
礼子「わかりました」
仁「LEDと基板を固定できればいい」
礼子「動かなければそれでいいですね」
仁「完成だ」
礼子「電池を入れて蓋を閉め、止めねじで蓋が動かないよう固定すれば完成ですね」
仁「当然ながら点灯チェックもOKだ」
礼子「意外と明るいので重宝しますね」
仁「まあ室内用としては問題なく使えるな」それ以上に……
礼子「それ以上に?」
仁「この回路は、弱った電池を絞り尽くすことができる回路だから、アルカリ電池を使い切るとお漏らしをする可能性があるから要注意だな」
礼子「アルカリ電池は電圧が下がると内部が腐食して液漏れしますからね」
仁「それが厄介なんだよな」マンガン電池ならそんなことないのに
礼子「充電式電池はどうですか?」
仁「大丈夫だぞ」ニッカドでもニッケル水素でも
礼子「作者さんはリモコンで使えなくなった電池を使っていますね」
仁「本当に絞り切るのにいい回路なんだな」
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仁「というわけで、今回は『LEDライト』でした」
礼子「はんだ付けの際はやけどにご注意ください」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
20230531 修正
電流制限抵抗の算出方法が間違っていたので作中で修正いたしました。




