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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
41/73

番外04 鍬の柄すげ

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画ですが今回は番外編です」

礼子「今回も番外ですか?」

仁「そう。年度末で色々忙しいのと寒いのとでモノづくりができなかったらしい」

礼子「それで今回は番外編と」

仁「そういうことだな」


*   *   *


挿絵(By みてみん)


仁「これなんだよ」備中鍬びっちゅうぐわというやつだ

礼子「見事に折れてますね」

仁「庭の土の下に、漬物石よりもでかい石があって、掘り起こそうとこじったらしい」

礼子「負けたんですね」

仁「うん」




挿絵(By みてみん)


仁「で、これはかなり古くてな。何度か外れたんで釘を打ったりして抜けないようにしていたらしい」

礼子「普通はくさびですよね?」

仁「まあそうだがわざわざ買わなくてもこれで済んだからな」




挿絵(By みてみん)


仁「釘を抜かないと話にならない」

礼子「バールのようなものを使うんですね」

仁「ようなものじゃなく、これはれっきとした釘抜きだ」




挿絵(By みてみん)


仁「で、ばらした」

礼子「けっこう大変ですね」




挿絵(By みてみん)


仁「今回の材料はこれだ」材質は多分松

礼子「汚いですね」

仁「うん……古材だからな」いいのがなかったんだよ

礼子「ちなみに、鍬の柄だけって売ってますよね?」

仁「近所のホームセンターで見たら1400円くらいしたな」

礼子「思ったより高いですね」

仁「ああ。古材なら只だ」手間はかかるけどな




挿絵(By みてみん)


仁「で、このままじゃあんまりなので鉋掛けしてきれいにする」

礼子「そのために固定しているんですね」

仁「長いからな」万力2つで挟んでいる




挿絵(By みてみん)


仁「鉋がけだ」

礼子「変わった鉋ですね?」

仁「『超硬刃』が付いているやつだな」

礼子「ああ、古釘とかあったら嫌ですものね」

仁「鉋の刃が欠けるからな……まあそんなものはなかったんだが」




挿絵(By みてみん)


仁「で、ざっと削ったら寸法確認だ」

礼子「削りすぎていたら目も当てられないですものね」スカスカになると困ります

仁「そういうこと」ちょっときついくらいがちょうどいい




挿絵(By みてみん)


仁「で、鉋屑だ」

礼子「きれいですがところどころ折れてますね」

仁「ああ。『裏刃』という、逆目防止の刃を入れて削るとこうなりやすい」

礼子「なるほど」




挿絵(By みてみん)


仁「で、こんな感じだな」

礼子「よさそうですね」まだ少し木が汚れている気も

仁「それはしょうがないな。10年以上雨ざらしになっていた角材だから」

礼子「腐らなかったんですか?」

仁「ペンキを塗っていたからな」

礼子「ああ、だから汚かったんですね」

仁「そのペンキの名残を剥がすためにも超硬の鉋を使ったんだ」超硬なら安心だから




挿絵(By みてみん)


仁「軽く面取り(角をとる)する」

礼子「これは小さい鉋ですね」

仁「細かい細工には使いやすいな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、持ち手の角を丸める」南京鉋だな

礼子「角材のままだと持ちにくいですしね」

仁「痛いしな」

礼子「その南京鉋を使ったわけは?」

仁「ああそれはな、この形状だと『途中から』でも角を丸めることができるんだよ」

礼子「ああ、鉋台が真っ直ぐな普通の鉋ですと、柄の途中から丸める、というのは難しいですものね」

仁「そういうことだ。鍬の頭をすげる部分まで丸くしちゃまずいからな」




挿絵(By みてみん)


仁「こんな感じだ」後はサンドペーパーも併用して仕上げる

礼子「随分削りましたね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、ヤスリがけした」

礼子「滑らかになって……いるんでしょうけれど、写真だとわかりづらいですね」

仁「まあなあ」持ってみて違和感がなければいいと思います




挿絵(By みてみん)


仁「最終確認だ」

礼子「この後叩き込むんですね」

仁「手だとこのくらいまでしか入らない。あとは金槌で打ち込む」

礼子「緩いとすぐにガタが来ますからね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、打ち込む前に耐水性の塗装をしておく」

礼子「どうしても濡れますものね」腐りやすいです

仁「今回はいつもの1液性ウレタン塗料『木固○エース』を使った」ラッカーでもいいです




挿絵(By みてみん)


仁「で、塗料が乾いたら打ち込む」

礼子「最後はかなりきつめでしたね」

仁「うん。それでも、使っているうちにゆるくなるんだよなあ」繰り返し力が掛かるから




挿絵(By みてみん)


仁「最後に、ガタツキ防止に木ネジで止める」あ、写真には撮り損ないましたが3ミリドリルで穴を空けています

礼子「ステンレスですか?」もらいサビしませんか?

仁「するんだよな」でも鉄の木ネジよりは長持ちするだろう

礼子「もらいサビというのは、錆びた鉄と接触しているとステンレス鋼でも錆びてくる現象です」




挿絵(By みてみん)


仁「完成だ」

礼子「菜の花がきれいですね」

仁「そろそろ庭仕事の季節だからな」







*   *   *


仁「というわけで、番外編第4回は『鍬の柄』でした」

礼子「お読みくださりありがとうございました」


仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。


 20230331 修正

(誤)仁「ああそれはん、この形状だと『途中から』でも角を丸めることができるんだよ」

(正)仁「ああそれはな、この形状だと『途中から』でも角を丸めることができるんだよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] >>番外編 何処ぞのご老公の出番か・・・・ >>多分松 変わったm・・・・ >>使っているうちにゆるく 色々な物が・・・・・・・ >>木ネジで止める 貫通させてのリベットじゃ無かった
[一言] 今回は番外編だとはいえ『鍬の柄』とは……(困惑) 鍬なんて最近は個人で小規模な畑を所有して(または借りて)いる人しか持っていませんよ(苦笑) ……そして、今回も本格的な工作作業の末に鍬の…
[良い点] くさびじゃなくてSUSネジですね 南京かんなはないな
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