027 木製スプーン
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第27弾です。
礼子「今回は木製スプーンですか」
仁「うん。普段使いできる品質のものを作った」
礼子「使うために作るですね」
仁「そういうことだ」
仁「いつもどおり、まずは素材」
礼子「角材ですね」
仁「ホームセンターで買ってきたホオノキの角材だな」30x30x300です
礼子「一寸角で一尺の長さ、ということですね」尺貫法でいうと
仁「木材の世界は尺貫法に準じた数列が多いからなあ」
仁「次は木取りだ」
礼子「横からですか」
仁「手順としてはこのほうがやりやすいな」元が角材だから
礼子「板から切り出す時は上から見た形を優先しますよね」
仁「そういうことだな」
仁「で、カット」
礼子「バンドソーですね」
仁「糸鋸でも大丈夫だが作者はこれが使いやすいと言ってたな」
仁「カット後だ」
礼子「なんとなくそれっぽいですがまだまだできあがりが想像つきませんね」
仁「それはしょうがない」
仁「でもこれなら?」
礼子「あ、なんとなくスプーンっぽいカーブが見られますね」
仁「だろう?」まあ次へ行こう
仁「平面形を作る準備だな」
礼子「型紙は左右対称になるように、2つ折りにして切り出すんですね」
仁「そうそう。これを素材に置いて、周りを鉛筆でなぞればいい」
仁「で、こうなる」
礼子「これを切り取るわけですね」
仁「いや、その前にやっておくことがある」
礼子「それは?」
仁「スプーンの凹面を彫っておくんだよ」
仁「こんな風に万力に挟んで固定しておくと彫りやすい」力も入るしな
礼子「納得です。丸く切り出してしまうと挟みづらいですものね」
仁「そうそう」
礼子「で、これは以前にも出てきた木彫り用のノミですね」
仁「うん。ない場合は少し時間は掛かるけど彫刻刀でもできる」
仁「まあこんな感じで彫っていくわけだ」
礼子「万力で素材を挟む際、傷がつきにくいよう厚紙を挟んでいるのですね」
仁「そうそう」今回は不要になった古葉書だ
仁「ひたすら削っていく」
礼子「小さいカンナも使ったんですね」
仁「あとは繰り小刀」
礼子「素材がホオノキなのでさくさく削れますね」
仁「これがサクラとかカエデだと硬いからなあ」
仁「で、全体のカーブだが、今回はちょっと変わったカンナを使ってみた」
礼子「面白い形ですね」
仁「南京カンナといって、主に椅子づくりに使われるらしい」ゆるい曲面を削るときに重宝するんだ
礼子「両手で持って引くんですね」
仁「そう。だから被削材をちゃんと固定しないと削りにくい」要注意です
仁「で、大体の形ができた」
礼子「だいぶスプーンらしくなりました」
仁「持ちての端になぜ穴をあけたかはこの先で説明します」
仁「で、削り終わった」
礼子「サンドペーパーがけまで一気ですね」
仁「うん……。サンドペーパー掛けは地味すぎて写真を撮り忘れた」
礼子「スポンジヤスリもいいですよね」
仁「ああそうだな。曲面にフィットしやすいからな」
仁「で、塗装だ」
礼子「お得意の『木固○エース』ですね」
仁「食品衛生法(合成樹脂製の器具および容器包装試験)に適合しているからな」学校給食用の器にも使用されている
礼子「実績があるんですね」
仁「熱湯に一定時間浸けていても有害成分が溶け出さない、というような基準があるそうだ」
礼子「だから作者さんは『木○めエース』を好むんですね」
仁「箸や箸箱もこれを塗っているようだからな」
礼子「で、取っ手の端の穴は乾燥時にフックを引っ掛けるためでしたか」
仁「そういうことだ」
仁「で、4回ほど塗っては乾かし、軽くサンディング(600番とか1000番くらい)しては塗ってを繰り返して完成だ」
礼子「臭いませんか?」
仁「ああ、それはある。だから1週間くらい放置して、溶剤の臭いが完全に抜けてから使うといいな」
礼子「60度くらいのお湯に浸けてもいいですよね」
仁「温度を上げると揮発成分が抜けやすくなるからな」
礼子「金属製のスプーンと違って唇への当たりが優しそうですね」
仁「うん。熱くないしな」
礼子「ただし木ですからぶつけたり硬いものをほじったりは厳禁ですね」
仁「ああ、蛇足だけど最後の完成品の写真を撮ったのは夕方だったので木の色が赤っぽくなってしまっているな」
礼子「本来のホオノキは緑がかった淡い茶色ですものね」
仁「うん、だから木象嵌で緑がほしい時はホオノキを使うと聞いたことがあるな」
礼子「なるほど」
仁「というわけで、今回は『木製スプーン』でした」
礼子「シチューを食べるのによさそうですね」
仁「お、そうだな」では今夜……?
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
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