026 六角箱
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第26弾です。
礼子「今回は六角箱ですか」
仁「うん。前回作った六角箱用治具を使ってな」
礼子「使うために作ったんですものね」
仁「そういうことだな」
仁「まずは工具だ」いきなり特殊なものですみません
礼子「これは何ですか?」
仁「トリマー用のビットだな」
礼子「トリマー?」
仁「メーカーの呼び名っぽいが、要するに高速回転させて材料を削るための工具だな」ルーターとも言う
礼子「要するに木工用のフライスですか?」
仁「そう認識してくれて構わない」
礼子「これをそのトリマーの先に付けて高速回転させて削るんですね?」
仁「そう。これは先端の角度が60度だから、そういうV型の溝を掘れるんだ」
礼子「ああ、六角形の箱を作るならそうなりますね」組み合わせると120度になりますから
仁「で、削るところ」例によって6ミリ厚のMDFです
礼子「自作のトリマー台ですね」
仁「うん」いずれまとめて紹介しますので今回は詳細はカットさせてください
礼子「確かに横の角度が60度の半分、30度っぽくなってます」
仁「これを組み合わせると内角が120度に接着できるんだ」
仁「で、丸鋸」プ○クソンのテーブルソーです
礼子「ええと、縦に長い材料の横を30度に削ってから切るんですか?」
仁「そうなるな。これは、側板の長さを揃えるための工夫なんだ」正六角形の箱の場合、辺の長さを揃えることが一番重要だからです
礼子「そのために1つ前で、端に角度をつけて削る際に幅が一定になるように、トリマー台を使ったんですよね」
仁「そういうことだな」
仁「カットしていく」
礼子「怪我には十分お気を付けくださいね」
仁「このやり方なら側板の幅を一定にできるからな」つまり箱の『高さ』を一定にできるわけです
仁「6枚作った」
礼子「ああ、こうすると6枚とも同じ長さになりますね」幅も揃ってます
仁「そういうことだな。最悪、高さは接着後に削って調整できるが、長さは一発勝負だから」
仁「で、まず2枚ずつ接着だ」
礼子「前回作った120度治具ですね」
仁「そう。ここでこう使う」
仁「で、乾いたら今度は2枚ずつ3組を組み合わせて六角形に接着する」
礼子「これで正六角形になりますね」なんだか桶みたいです
仁「接着の際にずれないよう注意が必要だな」
礼子「輪ゴムで締め付けるんですね」
仁「お手軽で確実だしな」100均で箱買いすればたっぷり使えます
仁「で、乾燥(エポキシ接着剤なら硬化)後だ」
礼子「きれいな六角形ですね」
仁「今度は底板を作る」2.5ミリ厚のMDFです
礼子「現物合わせですか?」
仁「今回はな」
礼子「六角形を置いて鉛筆でなぞるんですね」
仁「そういうことだな」
仁「で、鉛筆の跡がこれ」
礼子「これに沿って切るんですね」
仁「そうなんだが、少し大きめに切っておく方が失敗しにくいと思う」
仁「切った」
礼子「切りましたね」
仁「で、底板を貼り付ける」
礼子「それ以上説明のしようがありませんね」
仁「少し大きめに切ったから、はみ出ているのがわかると思う」
礼子「これを側板に合わせて削るんですね」
仁「そういうことだ」
仁「で、削った後だな」
礼子「サンドペーパーでいいですか?」
仁「十分だ」ただし削った粉を吸い込まないようマスクは必須です
仁「で、今度は蓋を作る」
礼子「これも現物合わせですね」
仁「うん。今回は落し蓋というか、すっぽり被せる蓋ではなく載せる蓋にする」
礼子「箱を載せて鉛筆でなぞるんですね」
仁「そうそう」
仁「で、カットした」
礼子「これも大きめですね」
仁「小さいと致命的にまずいからな」
仁「で、成形だ」
礼子「これも前回作った治具ですね」
仁「そうだ。これで安定して削れることが見て取れると思う」
仁「で、こうなった」
礼子「蓋っぽいです」
仁「あと、写真に取り忘れていたんだが、この蓋がずれないよう、中に出っ張らせる部材も同時に作ったんだよな」
礼子「同じ様になぞった六角形から側板の厚みプラスアルファを差し引いて小さめに作るのがコツです」
仁「完成時にどうなっているかご覧ください」
礼子「あ、蓋の縁を削りますよね?」
仁「説明し忘れてたな。……蓋の上面に丸みをつけるようにサンドペーパーを掛けています」写真も撮り忘れました……すみません
仁「塗装準備です」
礼子「今回はラッカーですか」
仁「うん。ウレタンは使わない」
仁「下塗りです」
礼子「薄めたラッカーをよーく染み込ませるんですね」
仁「そう。ただ溶剤臭いから換気とマスクは必須だな」
礼子「両面塗ったので、新聞紙にくっつかないよう木切れを挟んでいます」
仁「目止めの準備だな」
礼子「MDFでも目止めをするんですか?」
仁「するぞ。表面だけはツルッとしているが、切った面はザラザラだからな」
礼子「ああ、確かにそんな感じです。……で、パテを塗るんですか?」
仁「うん。次の項で説明する」
仁「パテをシンナーで溶かしてドロドロにしたものを筆で塗るんだ」
礼子「パテですから一発で隙間が埋まりそうですね」
仁「そう。これは溶きパテ、という技法で、サーフェーサーでは埋めきれない段差や隙間に使う技法だ」プラモデルではよく使うらしい
礼子「で、この写真は?」
仁「作者はそれほど頻繁にパテを使わないので、こうしてラップを挟んで蓋を締めるんだ」
礼子「ああ、乾燥しにくくなるんですね」
仁「そういうことだな」
仁「で、そのパテをシンナーで溶いて塗ったわけだ」
礼子「グレーの部分が塗った場所ですね」
仁「そう。最も段差が気になる部分だな」
仁「そして薄めないパテで大きな段差や隙間を埋める」
礼子「パテ本来の使い方ですね」
仁「乾燥したら240番くらいのサンドペーパーで滑らかに削っておくことだな」
仁「で、塗装準備」
礼子「塗装用の保持治具に仮留めですね」
仁「うん、粘着力の弱い両面テープを使うんだが、無い場合は手のひらとかオデコとかに一度貼って剥がすと粘着力が落ちるんだよな」自己責任でお願いします
仁「黒のサーフェーサーを吹いた」
礼子「スプレー缶ですね」
仁「そうそう」最近は品不足も解消されてきたみたいだな
礼子「あ、写っていませんが箱本体も黒サフを吹いています」
仁「中は金色にしてみた」
礼子「豪華ですね」
仁「ダイ○ーのラッカースプレーは粒子が粗いという情報だったんだがそんなことはなかった」今回は粗いほうが好みだったんだけどな
礼子「きれいな面が出ていますね」
仁「うん。暗い色の蓋を開けると内部は金色、というのは豪華だろう?」
礼子「確かにそうですね」
仁「で、塗装完了」
礼子「裏と表ですね」
仁「接着するから蓋の面には塗装をしていないんだ」
礼子「塗装してしまうとどうなりますか?」
仁「塗膜が剥がれてしまうことがある」
礼子「ああ、なるほど」
仁「で、蓋と裏蓋? を接着する、と」これも写真がありません……ごめんなさい
仁「で、保護用のクリアー塗料を吹いて完成だ」Mr.スーパ○クリアーを吹きました
礼子「外側は青ですね」
仁「パール顔料のPCディープブルーをクリヤーに溶いてスプレーした」作者はエア○タッチ派です
礼子「簡易的なエアブラシですね」
仁「うん。だが割と使える」イージ○ペインターも全く同じです
礼子「コツはありますか?」
仁「そうだな、塗料の濃さが濃いと吹き出さないし、薄いと発色が悪いな。目安は『牛乳』だ」
礼子「牛乳くらいの濃度、という意味ですか?」
仁「うん。かき回して混ぜ棒を引き上げた時に垂れてくる感じが牛乳くらい、ということだな」それを目安に調整すればまず間違いないと思う
礼子「その辺は試行錯誤も多少必要ですね」あるいは慣れ
仁「だな。いずれにせよ缶スプレーより吹き出す霧の粒子は細かい気がする」つまり質のいい塗装ができる
仁「外観だ」
礼子「青と金って合いますね」
仁「だろう?」これはディープブルーだけどな
礼子「ラピスラズリも濃紺に金の(本当は黄鉄鉱)粒が入っていますしね」
仁「そうそう。……作者も本当は蓋に金色の粒を散りばめたかったらしいがな」失敗を恐れて今回は辞めにしたそうだ
礼子「これで十分いい色です」
仁「というわけで、今回は『六角箱』でした」
礼子「かなり特殊な工具を使いましたので、同じように作るのは難しいかもしれません」その点はご了承ください
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
20221130 修正
(誤)「同じ要になぞった六角形から側板の厚みプラスアルファを差し引いて小さめに作るのがコツです」
(正)「同じ様になぞった六角形から側板の厚みプラスアルファを差し引いて小さめに作るのがコツです」
(旧)礼子「塗装用の治具に仮止めですね」
(新)礼子「塗装用の保持治具に仮留めですね」
(旧)
仁「そうなるな。これは、側板の長さを揃えるための工夫なんだ」正六角形の箱の場合、辺の長さを揃えることが一番重要だからです
(新)
仁「そうなるな。これは、側板の長さを揃えるための工夫なんだ」正六角形の箱の場合、辺の長さを揃えることが一番重要だからです
礼子「そのために1つ前で、端に角度をつけて削る際に幅が一定になるように、トリマー台を使ったんですよね」
仁「そういうことだな」




