024-1 回り灯籠 壱
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第24弾です。
礼子「回り灯籠ですか」
仁「そう。できるだけ加工は簡単に心がけた」電池駆動です
礼子「夏休みの工作にもよさそうですね」
仁「その点はすまないと思ってる」前後編です
礼子「夏休み終わってますものね」
仁「来年に生かしてください」
礼子「鬼が笑いますね」
仁「まずは基本的な材料」
礼子「ボール紙とトレーシングペーパーと、接着剤と、テープですか」
仁「テープは両面テープな」トレーシングペーパーを枠に貼るのに使う
仁「まずは図面だ」
礼子「1面ですか?」
仁「うん。外枠はコの字にして、最後に | で塞ぐようにする」| に相当する部分だな
礼子「少し丈夫なボール紙がいいですね」
仁「板目紙、といってホームセンターにもあるようだ」
仁「で、ボール紙に栓を引いて、切り取ると」怪我にはご注意ください
礼子「特に中を切り抜く際に勢い余って枠に切りつけると弱くなりますからね」
仁「で、コの時の部分の図面と、切り抜いた後の様子だ」
礼子「雰囲気がありますね。スリットみたいなのはなんですか?」
仁「差し込み部分だな」外枠の加工で一番面倒くさそうな部分だ
仁「その部分のアップだな」
礼子「ああ、ここに差し込んで固定するんですね」
仁「うん。もう少し簡単で確実な方法があったらよかったんだが」各自工夫してくださっても結構です
仁「で、仮組みしてみた」
礼子「雰囲気が伝わってきます」
仁「で、色を塗る」
礼子「なぜですか?」
仁「いや、白いままだと雰囲気が出ないから、少しでも木に近い茶色にしようかと」
礼子「なるほど。塗料はなんですか?」
仁「今回は粉末柿渋を塗ってみた」
礼子「漆塗りの時下地に使ったあれですね」
仁「そう。だが、ちょっと失敗だったな」
礼子「どういう点でです?」
仁「ボール紙なので、水性塗料を塗ると軟らかくなって反ったりするんだ……」
礼子「ああ……」
仁「同じ理由で、水性絵の具もやめたほうがいいな」
礼子「ではどうすれば?」
仁「プラモデル用の溶剤系塗料やラッカーがいいな」少し薄めると塗りやすいです
礼子「わかりました」
仁「塗料が乾いたら紙貼りだ」
礼子「トレーシングペーパーなんですね」
仁「本来なら丈夫な和紙なんだろうが、トレーシングペーパーは張りがあってシワになりにくいんだ」もちろん和紙を貼ってくださっても構いません
礼子「両面テープですか」
仁「ノリよりも手軽だしな」100均の5ミリ幅のやつです
仁「で、貼った後の外観だ」
礼子「わ、それっぽくなりました」
仁「さて、次は内筒だ」その材料な
礼子「厚めの上質紙ですね」
仁「ボール紙じゃあちょっと重いし、コピー用紙じゃちょっと薄いんだ」
礼子「画用紙とかケント紙でもよさそうですね」
仁「いいだろうな。ただ問題は大きさだ」それは次の工程で説明します
仁「ここは、作者が悩んで工夫したポイントだ」
礼子「内筒って断面が真円にならないといけませんからね」
仁「だから、適当な筒に合わせて丸めるんだ」紙の大きさもそれに合わせてな
礼子「これは保存容器ですね」
仁「直径は9センチ弱」外枠の大きさもこの内筒に合わせる必要があります
礼子「ウエットティッシュの容器でもいいですね」
仁「茶筒もよさそうだが、段差があるんで抜けなくなりそうでな……」
礼子「身近なところで探してみてください」
仁「で、丸めるわけだ」
礼子「丸めてから、重ならないようギリギリで長さ方向をカットするんですね」
仁「現物合わせ、というやつだな」
仁「で、下絵を描く」
礼子「この下絵に合わせて切り抜くんですね」
仁「そう。だから、あまり面積の大きい穴や、細長すぎる穴はやめておいたほうが無難だ」線だったら点線にするとかのアレンジが必要だな
礼子「図柄は和風ですね」
仁「そのへんはお好みだ」水草と金魚なんかもいいし、動物が走る、なんてのもいいかもな
礼子「ところで左下の半月はなんですか?」
仁「スイカだ」色を塗ればわかる
仁「で、切り抜いた」
礼子「次は色紙貼りですね」
仁「そうだが、紙じゃなく色セロハンな」
礼子「でも写っているのはラップですね?」
仁「うん。これも作者が工夫した点だな」色セロハンなんてなかなか手に入らないし
礼子「色ごとに細かく切って貼るのも面倒ですものね」
仁「まずは貼ろう」
礼子「接着剤が効かないのでは?」
仁「ああ、ラップは材質的に接着しづらいな」でも接着剤による
礼子「それは?」
仁「ポリエチレンが接着できるとうたっているものは大丈夫だ」作者はGPク○ヤーを使ったようだ
礼子「○にはリが入ります」他にも使えそうなものはありますか?
仁「3Mの多用途とか、俗称『わさび』とか(ただし製造終了のようです)、『X』系とかも大丈夫」心配なら事前にラップの切れ端と紙で試してみるのもいいでしょう
礼子「で、しわにならないよう気をつけるんですね」
仁「そういうことだな」作者は定規に仮留めしてシワを伸ばして貼った
仁「で、色塗りだ」
礼子「カラーの油性マジックですね」
仁「これも工夫した点だな」
礼子「きれいですね」
仁「で、いよいよ丸める」
礼子「まずは輪ゴムで留めるんですね」
仁「しっかり留めたら、細長く切ったボール紙の補強材を接着だ」
礼子「内筒の切れ目と反対方向に補強材の切れ目を持っていってくださいね」
仁「不安ならもう1枚補強する」この時も、補強材の切れ目をずらすことで丈夫になります
礼子「接着剤は何を?」
仁「作者は両面テープだったな」
礼子「お手軽ですものね」
仁「で、それを上下に施せば内筒はOKだ」
礼子「丸い芯から取り外せば完成ですね」
仁「いや、実はまだ作業がある」
礼子「それはなんですか?」
仁「羽根だ」
礼子「ああ……」
仁「中に入れたロウソクの上昇気流で内筒が回るのが回り灯籠だからな」
礼子「でも、ロウソクは使わないんじゃ?」
仁「うん。それも工夫した点だ」詳細は次回に……
礼子「で、ボール紙で羽根を作るんですね」
仁「うん。内筒より少し(3ミリくらい」大きい半径で円を描いて、8等分して……だな
仁「羽根を切り取る」
礼子「なんか色分けしてますが」
仁「ああ、切るべき線をわかりやすくしているんだ」余計なところを切ると台無しだから
礼子「ひと手間掛けて確実な作業を、ですね」
仁「そうそう」
礼子「で、折り曲げると羽根になりました」
仁「で、内筒に接着する」
礼子「これも工夫した点ですね」
仁「ああ、内筒にぴったりハマるよう丸く切るのは困難だからな」
礼子「少し大きめに切って内筒を載せ、エポキシ接着剤で留めるんですね」
仁「ここで、内筒の上下にボール紙で補強材を入れた意味が出てくる」はみ出しは接着後切ってもいいですしぶつからなければそのままでも構いません
礼子「なるほど」
仁「そして内筒完成」
礼子「いい感じですね」
仁「気をつけるのは、絵柄と回転の向きだな」
礼子「この絵柄ならどっち方向に回転してもいいですけど、金魚だとバックするのはおかしいですものね」
仁「そういうことだな」
仁「というわけで、今回は『回り灯籠 壱』でした」次回は完成までもっていきます
礼子「くれぐれも怪我などなさらないようお気をつけくださいね」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
20220903 修正
(誤)礼子「とことで左下の半月はなんですか?」
(正)礼子「ところで左下の半月はなんですか?」
(誤)止め
(正)留め
4箇所修正。




