020-2 箱 その2
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第20弾その2です」
礼子「前回の続きですね」
仁「黒塗りの箱の製作、その2です」
仁「前回の続きなので、塗装の準備からだ」
礼子「筆塗りですか?」
仁「うん。下塗りはそれなりに塗料をしみこませる必要があるから、スプレーは効率が悪いんだ」
礼子「ボトルの塗料ですか」
仁「サンディングシーラーといって、ラッカーに目止め剤が入ったものだな」多分目止め剤はタルク(滑石の粉)だ
礼子「天花粉と同じものですか?」
仁「ベビーパウダーと言え」天花粉と言って分かる人いるかな? そもそも天花粉はキカラスウリの根からとったデンプンだ
礼子「で、ベビーパウダーを混ぜてもいいんでしょうか?」
仁「作者の経験だと、ベビーパウダーには香料その他の混ぜものがされているようなので、あまりよくないみたいだ」ウルシに混ぜたら固まらなくなったそうだぞ
礼子「なら何がいいでしょう?」
仁「フィギュア製作に使う『マイク○バルーン』(○にはロ)とか『グラスバブ○ス』(○にはル)がいいな」ガラスの小さな粒らしい
礼子「プラモデル用の透明塗料に混ぜればいいですね?」
仁「いいぞ。ただし溶剤系にな」水性は浸透性が悪いし、その上に溶剤系のスプレーができなくなる
仁「塗装開始だ」よく振ってから塗料皿に必要量を出す
礼子「振らないと目止め剤が沈殿していますからね」
仁「そうそう」
仁「乾いたらサンドペーパーを掛ける」
礼子「木切れで当て木を作ると使いやすいです」
仁「中塗りと言っていいのかな。黒サフ(黒サーフェーサー)を塗る」これも筆で
礼子「サーフェーサーは黒でなくてもいいんですか?」白とかグレーとかありますが
仁「いいけど、今回は黒い箱にするから最初から黒にしているんだ」マホガニー色がいいならそれでもいいし
礼子「黒サフって品薄なんですよね」
仁「みたいだな。新型コロナの影響でおうち時間が増えて、家で模型を作っている人が増えたのかなあ」
仁「つなぎ目を消したいから、そこは重点的にな」
礼子「筆塗りの利点ですね」
仁「さて、本体を乾燥させている間に、蓋の方の下準備だ」
礼子「マスキングですか」
仁「うん。蓋の内側に段差を付けて、本体にかぶせた時にズレないようにするからな」
礼子「接着部分に塗装はしないほうがいいですものね」
仁「そういうことだな」最悪塗膜ごと剥がれるおそれがあるし
仁「さて、段差消しだ」
礼子「つなぎ目に重点的に塗った効果が出ていますね」
仁「うん。だが、思った以上につなぎ目というのは目立つものだ」
礼子「何かいい方法がありますか?」
仁「裏技……と言うほどでもないが、パテ(溶剤系)をシンナーで少し薄めてすり込むという方法がある」
礼子「パテなら有効そうですね」
仁「サフ吹きだ」
礼子「まずは内側から、ですね」
仁「そういうことだな。今回は、内側に布で内張りをするから、内側はそこそこ黒くなっていれば大丈夫だ」
礼子「溶剤を吸い込まないようマスクは必ずしてくださいね」
仁「さて、本体外側を塗る前に準備をする」
礼子「この支えは自作ですか?」
仁「100均で手に入る素材で作ったそうだ」
礼子「箱の固定は?」
仁「貼って剥がせる両面テープだな」強力過ぎると箱内部の塗装が剥げる
礼子「裏技はないんですか?」
仁「あるぞ。マスキングテープをあらかじめ箱の底に貼っておいて、そこに両面テープ(普通の)を貼ればいい」
礼子「マスキングテープは剥がすことを前提に作られたテープですものね」
仁「まずは内側……というか縁にスプレーだ」
礼子「ひっくり返して持てますからいいですね」
仁「それから外側を、という順番だな」
礼子「マスクをして塗料や溶剤を吸い込まないように気を付けてくださいね」
仁「手袋をしないと手に黒サフが付くこともあるので要注意だ」
礼子「わかりました」
仁「塗装完了だ」
礼子「いい感じですね」
仁「黒サフはツヤ消しに仕上がるからな」重厚感がある
礼子「……あれ? 仕上げ塗装の紹介がありませんが」
仁「うっ」気が付いたか
礼子「黒サフのままだと傷が付きやすいですよね?」
仁「そのとおりだ。だから作者は半つや消しのクリアースプレー(溶剤系)を吹いたそうだ」
礼子「水性系でもいいんですか?」
仁「いいけど、強度が劣るのと、なんとなくひっ付くそうだ」
礼子「ひっ付く?」
仁「ああ。蓋と本体がな」長期間放置したあとかぶせ蓋を取る時、パリッという感触があるんだとさ
礼子「わかりました」
仁「では、気を取り直して、まずは蓋の紹介」
礼子「段差部分は未塗装ですね」
仁「右は仮に置いてみた様子です」
仁「内張り用の素材だな」
礼子「これも100均ですね」
仁「貼れるちりめんというやつだな。裏側にシール状の糊がついているので使いやすい」
礼子「色や柄もいろいろありますね」
仁「うん。今回は赤にしてみた」
礼子「あとはボール紙ですか」
仁「本体の内装に使う」これは次でな
仁「ボール紙でこうした内箱を作る」
礼子「箱の内部より少し小さくするんですね」
仁「そう。ちりめんを貼るときつくなるからな」だいたい内寸より1.5ミリ小さくするのがコツだ2ミリじゃスカスカで1ミリじゃきつい
礼子「作者さんも1度失敗したらしいですし」
仁「言ってやるな」
仁「貼り付ける」
礼子「色が華やかですね」
仁「コツは、もったいながらずに大きめに切った布をボール紙の内箱に貼って、それから余分な部分をカットすることかな」
礼子「ここで折り返すので内箱は小さく作らないといけないんですね」
仁「内箱を入れるとこうなる」
礼子「品がいいですね」
仁「黒と赤という色の対比がいいな」
礼子「内箱の高さが縁より低いのはなぜですか?」
仁「ほら、蓋の段差が当たらないようにだ」
礼子「納得です」
仁「蓋の組み立てだ」
礼子「これも布を大きめにカットした方がいいですね」
仁「あと、段部分の側面に回り込ませるから、その分の厚みも考慮してな
礼子「段部分と蓋との接着は?」
仁「エポキシ系接着剤でもいいし、強力な両面テープでもいいかな」
礼子「エポキシ系接着剤は充填効果がありますからいいですが、両面テープですと段部分の裏って布の分段差がありますよね?」
仁「よく気が付いたな。だからその分、作者は両面テープを重ね張りしているってさ」具体的には4枚分
礼子「まめなのかズボラなのかよくわかりませんね」
仁「まったくだ」
仁「で、完成だ」
礼子「いい感じですね」
仁「ツヤ消しでもなくツヤありでもない半つや消しというのがいいな」
* * *
仁「さて、ということで今年の更新はこれで終わりです」
礼子「次の予定は?」
仁「あくまでも予定だが……こんなものを考えている」
礼子「飛行機ですか?」
仁「ソリッドモデルってやつだな」フルスクラッチともいう
礼子「大変そうですね」
仁「まあ、来年のお楽しみということで」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」今年1年ありがとうございました。
ごらんいただきありがとうございました。
20211226 修正
(誤)礼子「まめなのかスボラなのかよくわかりませんね」
(正)礼子「まめなのかズボラなのかよくわかりませんね」
(旧)
仁「手袋をしないと手に黒サフが付くこともあるので要注意です」
(新)
仁「手袋をしないと手に黒サフが付くこともあるので要注意だ」
礼子「わかりました」
(旧)天花粉と言って分かる人いるかな
(新)天花粉と言って分かる人いるかな? そもそも天花粉はキカラスウリの根からとったデンプンだ




