017-3 船体 3(完成)
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第17弾その3です」
礼子「いよいよ完成ですね」
仁「5月から始まった連載だもんな」長かった……
礼子「ゲストの方は前回、前々回に引き続き……」
マルシア「どうも、造船工のマルシアです」
仁「ようやく完成だ」
マルシア「楽しみだね」
仁「最後に残ったのは甲板だ」
礼子「いよいよですね」
マルシア「まずは素材か」
仁「2ミリのバルサだな」
礼子「型紙があるから楽ですね」
仁「そういうことだな」
仁「型どおり切り抜いて、穴あけもする」
礼子「この穴は?」
仁「バッテリー交換用さ」
マルシア「いちいち甲板を全部外さなくていいようにだね」
仁「で、補強をする」
礼子「これも2ミリバルサですね」
マルシア「バルサは弱いから、直角にもう1枚貼るわけか」
仁「ベニヤ板と考え方は同じだな」
礼子「バッテリー交換用の穴の部分はどうするんですか?」
仁「うん。万が一水を被っても染み込まないよう段差をつける」具体的には穴を少し小さくするように貼る
礼子「船首部はプラスチックですか?」
仁「そうだ。プールみたいな場所でコツンとぶつかった時にバルサだと潰れかねないからな」
マルシア「芸が細かいねえ」
仁「これが穴を上から見た様子だ」
礼子「その穴にピッタリ合うような蓋も作るんですね」
マルシア「加工が大変そうだな」
仁「バルサだからヤスリやサンドペーパーで少しずつ削って合わせるんだ」削り過ぎに注意
仁「で、甲板の縁を仕上げる」
礼子「サンドペーパーで丸めたんですね」
マルシア「削りクズを吸い込まないようマスクは必須だね」
仁「蓋兼船室を作る」
礼子「まっ平らな甲板じゃ面白くないですものね」
仁「作者はこんな形にしたようだな」
礼子「かなりロングノーズですね」
マルシア「船の場合、前・上は見ても、下はあまり見ないからね。甲板部分が広いと、そこで寝そべったり釣りをしたりできるんだよ」実際のクルーザーなんかだとね
仁「蓋を固定するためのフックだ」
礼子「スライドさせて差し込むんですね」
マルシア「バネ性を持たせるためりん青銅かい」
仁「で、最終的な固定は止めネジだ」M3のつまみネジ
礼子「甲板側にはM3のナットをエポキシ接着剤で止めるんですね」
マルシア「これなら走らせている最中に外れたりはしないだろうね」
仁「甲板もネジ止めする」
礼子「2ミリかける8ミリのさらタッピングネジですね」
マルシア「これもウレタン塗料を染み込ませて強化するんだろう?」
仁「当たりだ」
仁「ここでスイッチ取り付けだ」面倒だけどやらないわけにはいかない
礼子「ESC……モーターコントローラーから出ているスイッチですね」
仁「そうそう。一応防水仕様になっている」
仁「実はあのスイッチ、そのままでは穴を通せないので一旦コードをぶった切っている」
礼子「コネクターで繋ぐんですね」
仁「そうなんだが、そんな小さいコネクターなんてそうそうない」
礼子「では、どうするんです?」
仁「IC用のピンソケットを加工する」
マルシア「へえ?」
仁「繋がっているのを糸ノコで切り離してコネクターとして使うんだ」
礼子「器用ですね……」お父さまほどではないですが
仁「これが今回使ったESCだ」
礼子「配線がめんどくさそうですね」
仁「それは仕方ない。……①が受信機へ、②はモーターへ。③がバッテリーへ。④がスイッチだな。で、⑤が切り離したスイッチ本体だ」
マルシア「熱収縮チューブを被せて絶縁にしているんだね」ほんとに芸が細かいな
礼子「②と③もオリジナルから変更してますね?」
仁「ああ。『ミニコネクタ』というやつだな」モーターが小さいからこれで十分だ
仁「スイッチ部分はこういう風に付ける」
礼子「リード線の穴は最後に塞ぐんですね?」
仁「ボンドとかシリコーンシーラントとか、水に強ければ何でもいい」何ならティッシュをちぎって詰めておいても短時間なら耐えるだろう
仁「これが受信機だ」
礼子「フ○バ製ですね」○にはタです
仁「この辺は好みだな。サ○ワとかK◎でもいいし」○はン、◎はOです
マルシア「アンテナに熱収集チューブかい?」
仁「ああ、それは蓋に空けた穴から突き出す際、水が入ってこないようにするんだ」
マルシア「蓋の穴径とギリギリ太さを同じにするんだな」
仁「結線はこうなる」
礼子「ややこしいですね」
仁「ごちゃごちゃしているように見えるが、全部繋ぐ先は1対1対応しているからな」
マルシア「受信機の説明書を見ればだいたい分かるね」さもなければプロポの
仁「組み込んでみた」
礼子「問題なさそうですね」
マルシア「むしろこの段階で問題があったら悲しすぎるよ」
仁「テスト、というのは、塗装が全部終わるまでは中身を正式には組み付けないからだな」
礼子「この後また全部出したんですね」ご苦労さまです
仁「で、ようやく塗装だ」
礼子「あとは完成まで一直線ですね」
マルシア「例によって1液性のウレタンを塗って乾かしてからサーフェーサーだね」
仁「船体は白を基調とするから白いサーフェーサーだ」下塗りは大事
礼子「換気にはご注意くださいね」有機溶剤注意です
仁「意外とバルサの木目は消えにくくて、何度かスプレーすることになった」
仁「船体は白くした」
礼子「これもスプレー塗料ですね」
仁「筆や刷毛で塗ってもいいが、広い面積はムラになるんだよな」作者はスプレーガンは持っていないので缶入りのスプレーだ
マルシア「あれだけ工具や道具を揃えているのにね」
仁「ラッカー系の塗装をあまりしないかららしい」その分漆関連は揃えているみたいだな
仁「他の色を塗るためにマスキングだ」
礼子「どうなるんでしょうね?」
マルシア「それはできてからのお楽しみだね」
仁「作者はカラーリングやデザインが苦手だと言ってたな」
仁「こうなる」というかしてみた
礼子「赤と青で左右塗り分けですね」
マルシア「船の場合、右舷が緑、左舷が赤、船尾が白の灯火を灯すことになっているから微妙にそれに合わせたのかな?」
仁「いや、昔、機械だーや◎1のカラーリングが好きだったかららしい」レッドアンドブルー
礼子「なるほどー」
仁「で、完成」
礼子「ようやくですね」
マルシア「お、なかなかだ」
仁「ここで中身を組み付ける」
礼子「長かったですね」感無量
マルシア「気が早いな」
仁「スイッチ周りのアップだ」
礼子「こうなるんですね」
マルシア「うん、浸水対策もこれなら」
仁「ネジも、取り付ける場所に応じて塗っておく」
礼子「そのまま塗れますか?」
仁「いや、『メタルプライマー』というのを下塗りしておかないと、特にプラスチック用の塗料はのらないから注意だ」一般的なラッカーなら大丈夫かもだが
マルシア「それにしても、油分が付いていると密着しづらくなるからねえ」
仁「だな。シンナーでネジの頭だけさっと拭いておくのもいいかもしれない」
仁「で、甲板と船体の間に挟むパッキンだ」
礼子「紙……ですよね?」
マルシア「大丈夫なのかい?」
仁「それが大丈夫なんだな。実際、和船を作る際、板の隙間にヒノキだかスギだかの樹皮を挟むと聞いたことがある」
礼子「どんな効果が?」
仁「水を含むと膨れるので、それ以上水が入ってこなくなるんだ」
マルシア「先人の知恵だね」
仁「桐の箪笥だって、火事の時に水を掛けると膨れて引き出しと本体の隙間が密閉され、内部を守るそうだぞ」
仁「ようやく完成だ」
礼子「おめでとうございます」ぱちぱちぱち
仁「長かったよな」
礼子「まだ走らせていないんですね?」
仁「天気もいまいちよくないしな」
マルシア「走らせたならレポートしてほしいねえ」
仁「作者に伝えておくよ」
マルシア「でも楽しかった」
仁「出張ありがとな」
礼子「お疲れさまでした」アローにもよろしく
仁「それに……」
?「まるしああああああ」ずどどどどどどど
仁「ロドリゴさんにもな」
礼子「駆け寄ってきてますね」
マルシア「父さん、恥ずかしいよ……」
ロドリゴ「ジンくんもマルシアも、呼んでくれないから……」
マルシア「はいはい、悪かったよ」
礼子「そういえば、名前は付けないんですか?」
仁「開発コードはBTXー002だそうだが」Bはボート、Tは作者のイニシャル、Xは試作だってさ
マルシア「001もあるのか」
仁「いつか紹介できたらいいなあ」まだ完成してないそうだ
* * *
仁「というわけで、ようやく完成に漕ぎ着けました」船だけにってやかましいわ
仁・礼子・マルシア・ロドリゴ「「「「それでは皆様、ごきげんよう」」」」
ごらんいただきありがとうございました。
20210824 修正
(誤)プールみたいな場所でコツンとぶつかった時にバルサだと潰れかねかいからな」
(正)プールみたいな場所でコツンとぶつかった時にバルサだと潰れかねないからな」
(誤)仁「そうなんだが。そんな小さいコネクターなんて早々ない」
(正)仁「そうなんだが、そんな小さいコネクターなんてそうそうない」




