017-1 船体 1
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第17弾です」
礼子「いよいよ船体ですね」
仁「お待たせしました」
礼子「ゲストの方もいらっしゃいますよ」
マルシア「どうも、造船工のマルシアです」
仁「船といえばマルシアだよなあ」本編03 港町ポトロック篇 参照
マルシア「いつ呼んでくれるのかとうずうずしながら待ってたよ」
仁「それは悪かった。で、いよいよ船体の製作に入る」
マルシア「どんな船だい?」双胴船かな?
仁「いや、今回は単胴船だな」
礼子「作者さんにもいろいろ事情があるようですから」
仁「まずは基礎知識」
礼子「船底の形状ですね」
マルシア「平底は湖など波が穏やかな水域用だね」
仁「丸底は低速用、V底は実用変速艇といったところか」
マルシア「双胴船といっても多少のバリエーションがあるもんだね」
礼子「一応水中翼船も載せてあるんですね」
仁「で、今回は緩いV底にするようだ」
礼子「かなり小型のものにするようですね」船体の全長が30センチほど
仁「ああ。作者の家の近所にある池が、子供の水遊び用で直径が5メートルくらいしかないから、高速船は無理なんだとさ」大型船も同じ理由で無理
礼子「走らせる場所が限られるのがネックですね」湖とかRC禁止な場所が増えてます。ちゃんと確認してから遊びましょうね
仁「学校での部活なら25メートルプールとか借りられそうだがな」
仁「で、型紙だ」懐かしいボール紙だな
礼子「なるほど」ホームセンターや文房具屋さんで売っているようですね
マルシア「直接材料に描かないのかい?」
仁「描きにくいだろう……」特に直線は
マルシア「確かにね……」
仁「それに、イメージを固めるためにも型紙はあったほうがいい」
礼子「そうでしょうね」
仁「で、メインの材料だ」
礼子「5ミリのバルサと6ミリのMDFです」MDFはこのコーナーでお馴染みですね
仁「MDFは船の肋骨を作るわけだ」同じ外形のものをまず3枚
礼子「船も肋骨っていうんですね」肋木じゃなくて
仁「おおよその大きさにカットした」高さは40ミリ
マルシア「長辺は上部甲板の幅、短辺は船底の幅だね」
仁「同じ大きさにするため、まとめて削って成形するんだ」スクリューのときと同じ考えだな
礼子「ああ、だからテープで仮止めしているんですね」
仁「ドリルで穴を空けて、ビスで止めてから加工する」
礼子「テープでの仮止めでは削りたい側面に貼ってしまっていますからね」
マルシア「ちなみに作者は1回目に削りすぎてもう1度作り直したらしいよ」
仁「バラさないでやれ」
仁「で、同じ大きさのものが3枚できたら、1枚を除いて肉抜きだ」
礼子「そのままのものは船尾の板にするんですよね」
マルシア「それって肋骨じゃなくて『トランサム』じゃないのかい?」トランザムじゃないよ、念のため
仁「まあそうなんだが」
礼子「穴が空いてしまってますが……」
仁「ここには015で作ったベッカーラダーの舵受けを取り付ける穴だ」最初からそれに合わせてネジ穴を空けたからな
礼子「もう1つの大きめの穴は?」
仁「サーボモーターと舵を繋ぐロッドを通す穴だ」大きい理由は次回以降で(ぉぃ
マルシア「そのトランサムになにか付いているね?」
仁「ああ、それは次以降で説明する、甲板のくり抜きと関連するんだ」
仁「さて、いよいよ船底と甲板の切り出しだ」
礼子「5ミリ厚のバルサですね」
仁「そう。直線部はカッターで、曲線部はバンドソーで切ったようだ」糸ノコでもいいし、カッターでも切れるだろう
マルシア「大きめに切って、サンドペーパーなどで型紙どおりの大きさに調整するのがコツだね」正確さが大事だ
仁「肋骨と船底を接着だ」
礼子「接着剤は耐水性があったほうがいいでしょうね」
マルシア「今は、乾くと耐水性があるものがあるよね」
仁「作者は2分型のエポキシ接着剤を使っているな」
礼子「MDFは意外と接着剤を吸い込みますので少し多めに塗るか、塗ってちょっと置いてからもう一度塗るのがおすすめです」固まる前、という前提で
仁「肋骨の左右がきっちり直線で揃うように、角材を置いてるな」
仁「船底の接着剤が硬化するまで、甲板の加工に入る」
礼子「くり抜くんですね」
マルシア「そうしないと船の中に機構を設置できないもんなあ」
仁「残す幅は10ミリくらい」割合と適当です
礼子「船尾部分も切り離してますね」
仁「バルサは弱いから、長手方向と直角に木目が走っていると折れやすいからな」
マルシア「ああ、だからさっきのトランサムのように、別材で作って接着するんだね」
仁「そういうこと」寸法が狂わないように要注意、だな
仁「で、接着だ」これも2分エポキシです
礼子「注意点はありますか?」
マルシア「船底と甲板の中心線が揃うように、だね」
仁「そういうことだな」俺のセリフだけどな、それ
仁「今度は舳先の準備だ」
礼子「5ミリバルサを2枚合わせるんですか?」
仁「ああ。そのくらいないと側板の接着面積が大きく取れないし、それに……」
礼子「それに?」
仁「左右対称に加工するから、中心線として接着部分があるというのは意外とやりやすいんだ」
マルシア「10ミリ厚のバルサを使うよりいいってわけか」
仁「で、接着した」
マルシア「おお、船らしくなってきたねえ」
仁「で、この後側板を貼るわけだが、段差がなくなるようきれいに削る」
礼子「バルサですから、削りすぎないように注意ですね」
仁「サンドペーパーをまるまる1枚平らな板の上においてガシガシやるといいかも」作者はベルトサンダーを最低速度にして削りました
マルシア「削り過ぎたら目も当てられないからねえ」
礼子「で、できあがったのが写真ですね」
仁「側板を貼る前に、船体内に使う部材を用意する」
マルシア「その方が楽だからね」
礼子「014で作ったモーターボート用2連ギヤボックスですね」
仁「スクリュー軸と繋ぐジョイントができるだけ真っ直ぐになるよう、ギヤボックスを斜めに付けるんだ」
礼子「効率がよくなりますからね」
マルシア「016で作ったスクリュー軸を仮にあてがって傾きを決めたんだね」
仁「写真に撮りそこなったようだけどな」
仁「で、モーター台を接着だ」
礼子「特に問題はなさそうですね」
仁「いよいよ側板の製作に入る」
礼子「ボール紙ですか?」プラスチックとかじゃなく
仁「そう。ラッカーなどの塗料を染み込ませれば耐水性が上がるからな」扱いやすいのがいい
マルシア「紙だから少々の無理も吸収してくれるしね」
仁「これをやるため、さっき段差がなくなるよう、大きなサンドペーパーでガシガシ削ったわけだな」
礼子「削った粉を吸い込まないようにしてくださいね」マスク必須です
仁「船体をあてがって鉛筆で線を引き、少し大きめに切り抜いた」
礼子「ボール紙の『目』の向きを、船体の舳先の斜めの部分に合わせると丈夫になります」ちょっと無駄が出ますが
仁「これも2液型エポキシで接着だ」ちなみに5分硬化型
礼子「接着剤を塗る部分が長いので、多少の時間的余裕が欲しかったんですよね」
仁「そういうことだな。で、作者は100均の洗濯ばさみで押さえている」
仁「接着剤が完全に固まったら、はみ出した部分のボール紙をハサミやカッターでカットする」
礼子「バルサの骨組まで切らないよう注意してくださいね」それから怪我にも注意です
仁「で、左舷も同じように接着する」
マルシア「あ、ちなみに『右舷』というのは、船の舳先を前として右側の側面です」
礼子「船尾から船首に向かって右、ということもいえますね」
仁「で、船体の基本が完成したわけだ」
礼子「船の形がわかりますね」
マルシア「底にもうスクリューを通す穴が空いているな」
仁「気が付いたか。作者が船体の写真を撮り忘れた事に気がついて後から撮ったからだ」
礼子「船の中にもなにか付いていますものね」
マルシア「でも、まだ先は長そうだ」
仁「次回に続く」
マルシア「やっぱり」
* * *
仁「というわけで、船体の製作その1でした」
礼子「水辺で遊ぶ際はくれぐれも水難事故に気を付けましょう」まだこちらは完成していませんけど
マルシア「うちの父親みたいに不用意に飛び込んだりせず、浮き輪や救命用具を予め用意しておくといいでしょう」
仁・礼子・マルシア「「「それでは皆様、ごきげんよう」」」
ごらんいただきありがとうございました。
次回 船体2 もできるだけ急ぎます。
20210808 修正
サブタイトルのナンバーを 017 から 017-1 に変えました。
なので次回は 017-2 になります。




