015 ベッカーラダー
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第15弾です」
礼子「今回の、『ベッカーラダー』ってなんですか?」
仁「船に使われる舵の一種だな。二重ラダーとかダブルラダーともいうが、二重ラダーやダブルラダーで検索すると脚立やハシゴばかり出てくるからな」
礼子「つまり、2段階に折れ曲がる舵なんですね?」
仁「そういうことだ。そのため、非常に利きがいい……らしい」
礼子「つまり、作者もまだ実感していないと」
仁「そういうわけだな。……で、前回の2連ギヤボックスの続きみたいな形で、模型ボート用のユニットとして製作する」
礼子「概念ですね」
仁「そう。2段階に折れ曲がることによって、水流がより自然な形になり、『船の抵抗』ではなく『船を曲げる力』になってくれるわけだな」
礼子「あれ? もう作ったんですか?」
仁「いや、これは『機能試作』っていって、機構的にうまくいきそうかどうかを調べるための試作なんだ」
礼子「いきなり本番、で失敗したら嫌ですものね」
仁「そういうことだな」
礼子「ギヤはミニ○駆用ですか」
仁「そう。安くて手に入りやすいからな」10個入りだし
礼子「ちなみに、この機構は作者のオリジナルらしいです」
仁「少なくともネットや模型雑誌には、こうしたギヤを使った舵は見当たらなかったようだからな」
仁「で、本番はこんな感じ」
礼子「一気に完成品ですか!?」面くらい
仁「工作箱に載せる気がなかったらしい」なので過程の写真を撮っていないんだと
礼子「なら仕方ないですね。……それでは皆様、ごきげんy」
仁「待て」
礼子「どうしたんですか?」
仁「写真はなくても、イラストで説明するってさ」
仁「構造図だな」
礼子「め、面倒そうな加工がチラホラと」
仁「作者も、あまり何度も作りたくないと言ってたな」一品生産が好きなようだ
仁「かろうじて部品時の写真が1枚」
礼子「舵本体はどうやっているんですか?」
仁「材料は2ミリ厚の低発泡スチレンだな。タ○ヤからプラボードとして発売されている」軽いし加工しやすい
礼子「シャフトは2ミリ径の金属ですね?」
仁「そう。作者はサビに強いという理由で2ミリ径のステンレスバネ線を使っている」ハ○ズで購入
礼子「真鍮でもよさそうですね」はんだ付け性を考えると
仁「溝は、クロステーブルを付けたボール盤をフライスもどきにして彫ったようだ」プ○クソンの
礼子「普通、そんな道具は持っていないと思いますが」
仁「うん。その場合はアクリルカッターでガイド溝を入れ、その溝を細い丸ヤスリで削っていけば大丈夫」時間が掛かると思いきや、意外と削れるので思ったより早い
礼子「気をつけるのは2本の軸間距離ですね」
仁「そう。歯車の噛み合いが問題だからな」
礼子「こちらはミニ○駆のギヤではないですね?」
仁「歯数14枚のピニオンギヤだな」2ミリシャフト用の
礼子「モジュールは0.5ですからピッチ円は7ミリ。従って軸間距離は7ミリですね」
仁「うん。量産試作だと歯数が22枚なのでピッチ円は11ミリで、ちょっと軸間距離が離れ過ぎと思ったらしい」
礼子「ああ、横幅が大きくなりすぎるんですね」
仁「船の大きさにもよるんだろうけどな」作者は全長30センチくらいの小さいやつを作りたいらしい
礼子「ところで、ピニオンギヤの片方は3ミリ穴ですよね?」
仁「あ、説明し忘れていたな。そう。もう片方は2.9ミリ径のドリルで穴を広げている」加工時には怪我に注意してください
仁「シャフトはTの字……というよりトの字だな」
礼子「舵本体と滑りが生じないようにですね」
仁「そういうことだな」
礼子「はんだ付けですか?」
仁「ああ。ヤスリで半分ほど削って組み合わせてはんだ付けだな」こうすれば丈夫だ
礼子「ロー付けではないんですね」
仁「うん。ロー付けは面倒だしな。その分強度は段違いだが」水の中で使う舵だからはんだ付けでいいだろう
礼子「舵受け……というんでしょうか、これはまた複雑な形状ですね」
仁「だなあ。これも作者が作ってみたくて凝った作りにしたみたいだ」
礼子「ですね……6ミリの真鍮丸棒にきれいな通し穴を空けるのって難しいですよね?」多分曲がります
仁「ああ。電動ドリルを使った簡易旋盤を使い、丸棒の方を回転させ、ドリルの刃を押し込むんだ」こうすると回転のセンターが出る
礼子「で、そこにM6のネジを切るんですか」ダイスで
仁「ナットの方も3ミリ厚のA2017(ジュラルミン)にM6のタップでネジを切ってナットを作ってるしな」軽くするのと、厚みの薄いナットが欲しかったそうだ
礼子「簡易旋盤って……」
仁「ネットではもっと本格的な旋盤を自作している人もいるぞ」いずれ番外編か何かでご紹介したいです
仁「再掲。まあそんなこんなで、組み立てて完成だ」
礼子「縁はちゃんと流線型に近くなるように削るんですよね」
仁「そういうことだな」
礼子「銀色の部分は?」
仁「強度的に心配だったらしく、ステンレスのテープで補強している」アルミじゃなく
礼子「ステンレスのテープなんてあるんですね」
仁「ホームセンターで買ったようだ。アルミより丈夫だ」縁で手を切らないように気をつけてください
礼子「あと、取り付けてありますね?」
仁「アルミのL型アングルを切って加工した舵受けだな」アングルは前回2連ギヤボックスを作ったときのやつです
* * *
仁「というわけで、今回はこれまでです」
礼子「次回は船体ですか?」
仁「スクリューかもしれない」
礼子「それまで自作するんですか?」
仁「右回り・左回り両方のスクリューが必要なのに今ではまず手にはいらないんだ」特に小型のものは
礼子「大変ですね」
仁「だが、昭和のモデラーたちはカスタムパーツづくりに燃えていたんだぞ」
礼子「今はフィギュア製作に萌えてますね」
仁「字。」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
20210630 修正
(誤)俺の解説で紹介するっていう企画の第*弾です」
(正)俺の解説で紹介するっていう企画の第15弾です」




