014 モーターボート用2連ギヤボックス
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第14弾です」
礼子「今回は毛色が違いますね?」
仁「そうだ。手芸・工芸系が多かったから、夏も近いしここらで模型作りを紹介しようというわけだ」
礼子「需要はあるんでしょうか……」
仁「正直わからん」
礼子「モーターボートって、遠隔操縦でないとどこか行っちゃいますよね」
仁「まあそれは船に限らず自動車でも飛行機でもありうることだけどな」
礼子「水辺って危ないですしね」
仁「そうなんだよなあ。学校の部活なら、許可を取ってプールで走らせることくらいできそうだが」
礼子「最近『ため池』の危険さが紹介されてましたしね」
仁「作者の友人が、小学校の時芦ノ湖に遠足に行ったときにボートを引き上げるコンクリートのスロープに付いた苔で足を滑らせて落っこちたことがある」以来『コケスベリ』というあだ名が付いた
礼子「苔は危険ですね」
仁「作者も沢の石を渡っている時苔で滑ったことがあるしな」尻を打ってしばらく痛かったそうだ
礼子「皆さん、水辺で遊ぶときはくれぐれも気をつけてくださいね」
仁「で、今回のお題だが」
礼子「2連ギヤボックスですか?」
仁「そうだ。……スクリューを回すとだな……」
マルシア「おっと、その先はあたしに言わせておくれ。……水中で回るスクリューには、その回転と反対方向に力が加わるんだ」反トルクという
仁「そういうことだな」
マルシア「で、偶数のスクリューを使うときは、回転方向を逆にすることでその反トルクを打ち消すことができるわけなんだよ」
礼子「反トルクがあると何が困るんですか?」
マルシア「船が傾く。そして旋回方向の癖が出る」競技用では致命的になるんだ
仁「そういうことだな」
マルシア「モーターを2個使って逆に回してもいいけど、重くなるのと回転が速すぎるのとでギヤボックスを使う人が多いかな」
仁「スクリューの回転が早すぎると『キャビテーション』という現象が起きて、推進効率が悪くなるんだ。だから回転を逆にすると同時に、少し回転数を落とすわけだよ」模型ではあまり関係ないけどな
礼子「要するに趣味ですね」自己満足というわけですか
仁「まあそう思ってくれていいかな」趣味は多かれ少なかれ自己満足のためにやるもんだ
* * *
礼子「材料ですね」
仁「今回はアルミの不等辺アングルを切って使う」あとはギヤとシャフト等だな
礼子「入手が難しそうですね」
仁「自作する人が減ったからな。……ギヤはレイ○ボープロダクトというメーカーの平ギヤ30枚、ミニ○駆用のギヤ(イエロー、歯数26枚)、ミニ4○用のピニオンギヤ(歯数8枚)だな」
礼子「あの、ピニオンギヤの1つが10枚に見えるんですが」
仁「間違えたんだとさ」勘弁してやってください
礼子「シャフトは2ミリですね」
仁「そう。秋葉原の千石船みたいな名前の店で手に入るな」ピアノ線でもいいけど錆びにくいからステンレスがお勧め
礼子「アルミのアングルも秋葉原ですか?」
仁「うん。ラジオ部品を売っているデパートの2階で買えた」10ミリ掛ける30ミリの不等辺アングルで厚みは2ミリ
礼子「今は通販でも入手できますね」
仁「というかそっちの方が楽だなあ」
仁「おっと、図面だ」
礼子「複雑ですね」こうしないと左右で回転方向が逆にならないんですね……
仁「仕方ないな。……ギヤボックスは加工精度が命なので、慎重な加工が肝要なんだ」でもできるだけ加工が楽になるよう、ギヤの中心は一直線にしたらしい
礼子「場合によってはアルミではなくアクリル板のように加工しやすい素材を使うのもいいかもですね」
仁「軽くなるだろうしな」アルミの比重は2.7、アクリルは1.19
礼子「部品1と部品2で、大きく異なっている穴がそれぞれ3つありますね?」中心部にある穴と、そこから左右対称に空いている2つの穴が
仁「モーター取り付け用の穴だな。モーターのサイズに合わせて空ける必要がある」今回は後述のモーターに合わせてあります
礼子「真ん中は?」
仁「今回使うモーターの軸が長いから、ぶつからないようにだな」
礼子「他のモーターをお使いになる方は、そのモーター寸法に穴径を合わせてくださいね」左右の取り付け用ネジ用穴も
仁「ちなみに、部品1の直径5ミリの2つの穴は、ネジ止めする際ドライバーが入るように空けた穴だな」そうしておくと組み上げてからモーターを取り付けたり取り外したりできるから
礼子「ちょっとしたコツですね」太いドライバーを使う方はそちらの径に合わせてください
仁「で、切った」
礼子「作者さんはいつものバンドソーですね」
仁「端面にはヤスリを掛けて手を切らないようにしてます」怪我にはご注意ください
仁「加工前だな」
礼子「2枚いっぺんに穴を空けるためにテープで仮止めしてます」
仁「別々に加工して穴位置がずれると悲惨だし」2枚加工して2枚ともずれるともっと悲惨ですが
礼子「作者さんやらかしたんですよね」
仁「穴を開けた」
礼子「こういうギヤボックスの穴空けを正確に行えるよう、作者さんはクロステーブルを買いましたね」
仁「ハンドルを回すとテーブルが動くやつな」セットが面倒くさいけど正確だな
礼子「ところで、作者さんがやらかしたのは横に4つ綺麗に並んでいる穴からちょっと下にずれている穴ですね」
仁「図面でいうと下から4.5ミリと書かれている径2.1の穴だな。2倍の縮尺で書いていたのでうっかり9ミリとか記入してしまい、空けたら図面と大きく異なったということだ」
礼子「等倍で書いていればそんなことはなかったんでしょうに」わざわざ2倍で書くから
仁「小さい図面だから2倍のほうが書きやすいんだ」写真と図面で部品1と部品2の位置が逆で済みません
礼子「あと、後述するM2のスペーサーと、それに使うM2のなべ小ねじも写っています」
仁「ギヤにシャフトを入れた」ネジ止め以外のギヤには打ち込みます
礼子「出力軸は35ミリ、それ以外は15ミリですね」
仁「輪列だな」
礼子「メカメカしいですね」
仁「俺もそうだが作者もこういう歯車の噛み合っている図って好きなんだよな」
礼子「逆三角形状に付いているのは2枚のアルミアングルを固定するスペーサーです」真鍮製で長さは10ミリ、M2のネジ用です
* * *
礼子「完成ですね」
仁「組み立てた状態だな。それぞれのギヤにはシャフト方向にガタがあるから、ジュラコンのスペーサーや2ミリ用ワッシャで調整してください」
礼子「それが結構面倒くさそうですね」
仁「そうなんだよな」
マルシア「モーターについては何も言わないのかい?」
仁「あ、それがあったな。……今回使ったのは秋葉原の『秋○電子』で買った『マイクロモーター 12V RF146W-1121○-25』です」
礼子「どうしてこれにしたんですか?」
仁「バッテリーは7.2Vにするつもりなので、耐圧の高いものにしたらしいな」
マルシア「レース仕様にするならRC用の370系モーターを使うといいようだね」
仁「うん。秋葉原のスーパーラ○コンでも手に入るし通販でもいい」タ○ヤ製のものがネットで買えるし
礼子「モーターにもいろいろありますね」
仁「うん。作者も決めるまでいろいろ悩んだらしい」
* * *
仁「というわけで、第14回は『モーターボート用2連ギヤボックス』の解説でした」加工時の怪我にはお気をつけください
礼子「これで終わりですか?」
マルシア「船体も解説してほしいな」
仁「作者に頑張ってもらおう」
仁・礼子・マルシア「「「それでは皆様、ごきげんよう」」」
ごらんいただきありがとうございました。
20210927 修正
(誤)重くなるのと回転が早すぎるのとでギヤボックスを使う人が多いかな」
(正)重くなるのと回転が速すぎるのとでギヤボックスを使う人が多いかな」




