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「特別任務」

今回からしばらく新キャラのマリエッタ視点で物語が進みます。

 学園の卒業式から数日後、騎士団に入った私は薄暗い総司令官の部屋へと向かう。通常、総司令官が新任の剣士を呼びつけることなどほとんどない。毎回、何百人と新米の剣士が入ることを考えると当然のこと。つまりこれはラムサール学園を首席で卒業した優秀な私だけの特別任務に違いない。そんなことを考えると突然スキップしたい衝動に駆られる。一体どんな任務が待っているのだろう……期待に胸を膨らませながらドアをノックした。


「入りたまえ」

「失礼します」


 部屋に入ると椅子に腰かけた日に焼けた肌に白髪で鋭い目つきをした初老の男性が私を迎える。


「マリエッタ = ラドミロー、今回君を呼んだのは他でもない、君に特別な任務を頼みたいからだ」

「覚悟はできております」


 やった。予想通りの特別任務!

 と内心ガッツポーズをしながら答えると彼は一枚の用紙を差し出した。


「話が早くて助かる。君にはここに潜入して貰いたいのだ」


 ……潜入捜査ね、探知も出来るガイア、それも主席の私にぴったりじゃない。

 浮かれながら受け取った用紙に目を移すと『ルドラ学園』という文字が目に入った? 学園? いやまさか、何かの研究施設とかの隠語よね?


「君にはラムサール学園からの二期生の留学生としてこの学園に潜入して貰いたい」


 ……本当に学生としてなの? せっかく騎士団に入ったのに学園生活に逆戻り? しかも二期生って……

 方針変更、何とか穏便に断ろう。


「失礼ですが、私は人と接するのは得意な方ではないのでこの手の任務は不向きかと存じます」

「そうか、すまない。公私混同をすることがないであろう君が適任と学園長から勧められたのだが、そうなるとこの任務はベテランの者に任せるとしよう」


 ……ウソ、ベテランが回される程の任務? これが?

 ベテランという言葉に反応して返却しようとした学園案内であろう紙面を凝視する。何のことはない普通の学園案内だった。


「おや、どうしたのかね? やはり興味があるのかね? 」


 意地悪く彼が笑う。悔しいけれど彼の言う通りで何故この潜入任務にベテランが駆り出されるのか興味があった。


「いえ、ただもう少しお話を伺ってから判断するのも遅くないかと……」

「なるほど、それもそうだな……光の剣士の噂は君も耳にしたことがあるだろう? 」

「はい、遠くの学園で光のソウルを扱うものが現れたとは伺いましたが……まさかそれが」

「それがここにあるルドラ学園だ。そして、それだけじゃない、学園内でも一部の者しか知らない極秘な情報だがここにはサタン復活の為の重大な鍵となる指輪が保管されているらしい」

「サタンが復活? え? ルドラ学園はサタンを復活させようとしているのですか? 」


 恐ろしい情報が次々に耳に入り頭がパンクしそうになるとどういうわけか彼はバツが悪そうに咳払いをした。


「すまない、言葉が足りなかった。サタン復活を阻止する為の鍵だな、我々からすれば」

「……そうでしたか」


 サタンの方は訂正しないのか、という衝撃から何とか言葉を捻りだす。


「だが、サタンを復活させようとする集団がいるというのは本当だ。そしてその者たちはルドラ学園の指輪を標的にしている」

「つまり、任務は光の剣士と指輪の保護というわけですね」


 ……なによこれ、凄い特別な任務じゃない。

 武者震いというものだろうか、体が震える。そんな私に構わず彼は口を開く。


「その通りだ、引き受けてくれるかね? といってもここまで聞いた以上引き受けてもらう他はないのだが……」

「……そうですよね、無論、お引き受けします」


 (はか)られた、と感じるもそれ以上に使命感にかられている私は力強く答える。


「そうか、では話は以上だ。急な話だが幸いにもこの本部からルドラ学園は近い。明日には寮の手続きを済ませておくので早速向かうように」

「は! 必ずやヘルナイツの手から光の剣士と指輪を守って御覧に入れます! 」


 彼に向かって勢いよく答えた。

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