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「卒業式」

 季節は流れ三月、遂に卒業式の時がやってきた。シェスティンさん、マリレーナさん、シラさんとの別れの時だ。着席し学園長の前で三人の名前が呼ばれてしみじみと感じる。


「そしてもう一人、ウォルバースト君」


 学園長が名前を呼んだ。そう、本当はもう一人、ウォルバーストさんもここにいるはずだった、別れの辛さかウォルバーストさんのことを思い出してかすすり泣く声が耳に入る。


「皆様、卒業おめでとう」


 その言葉を最後に卒業式の大半は終了を告げた。

 残る卒業式の最後、それは各寮代表の卒業生と在校生の模擬試合だ。予め卒業生が指定した在校生と戦うことになる。それ以外は勉強も兼ねて上の見学席から試合を見守ることになる。今回、指名されていないオレは一期生の皆と同じく席を立ち見学席へと向かう。


「……ガイト」

「仕方ないさ、在校生といってもほとんどは二期生から出るのが普通だから」


 卒業生代表として選ばれたらオレと戦いたいと言ってくれた彼はもういない。代わりにフレイムの卒業生からは三期生で二番手と言われているマードック先輩が、在校生からはヘルガ先輩が模擬戦を行うことになった。他の寮からも選ばれたのは全員二期生だった。


「それにオレ、見学するのも嫌いじゃないから」


 ディーネにそう言うと見学席へと辿り着いたため手頃な真ん中付近の席に腰かけた。


 ~~

 模擬戦は瞬く間に四試合が終了した、在校生は皆奮闘したものの卒業生に勝利が出来たのはアローさん一人だけだった。以前見たような懐かしい光景に思わず頬が緩むとディーネが何故かこちらを見ているのに気が付き慌てて誤魔化すべく口を開く。


「やっぱり卒業生は強いな」

「……うん」

「それと、アローさん。シェスティンさんに勝つなんてな」

「……うん、でも最後なんだからシェスティンさんに勝たせてあげても良かったんじゃないかなって」

「そういう手加減、シェスティンさん嫌いそうだからな」

「……そっか」

「ああ、卒業生を見送りに行こうぜ」


 最期の目玉? となる見送りを兼ねた在校生が模造剣を重ねて作るアーチを行うべく立ち上がった時だった。


「それでは、只今よりエキシビションマッチを行います」


 ステージの真ん中に学園長が立ち突然大声を出す。


「エキシビションマッチってなんだよ」

「そんなの予行練習にもなかったぞ」


 会場内がざわつく、オレも初耳だ。一体誰と誰が戦うのだろう。誰かサプライズで大物ゲストが登場したりするのだろうか。学園長を凝視する。


「さて、模擬戦を行う二名のご紹介です。一人は麗しき我が学園の教師、メイソン先生」

「メイソン先生! ? 」

「……どうして先生が」

「良く分からないけど、先生の本気が見られるのならそれでいいや」


 再び席に着くともしかすると生意気な生徒に威厳を見せるためとかかもしれないと冗談めいた考えを浮かべ頬を緩める。


「そしてもう一人は、我が学園に現れた光の剣士、ガイト君」

「……はい? 」


 思わず立ち上がる。


「今、オレ呼ばれた? 」


 聞き間違いだろうかとディーネに尋ねると彼女は首を縦に振る。気のせいという訳でもなさそうだ。一体全体これはどういうことだろうか? とはいえ、ここにいても仕方がないので皆が再び席に着き視線が集中する中立ち上がるとステージへと向かった。


 ~~

 ステージで先生と向かい合う。何故卒業式でこの二人の模擬戦なのかという抗議のつもりか先程のような歓声は上がらない。


「先生、これは一体どういうことですか? 卒業式なのにどうしてオレ達が最後に戦うんですか」

「私もこの学園の卒業生よ」

「それはそうですけど……」

「心配言わないわ、卒業生の希望でもあるから」


 卒業生の希望? 最後に生意気な在校生が負けるところが見たいとかだろうか?


「さあ、始めましょうか」


 思い返してみると思い当たる節がないとは言えずに黙ると了解と受け取ったのか彼女が模造剣を構える。

 ……上等だ。

 理由なんてどうでもいい、先生と全力で戦えるのだからそれで十分だ。


「そうですね」


 答えると模造剣を引き抜く。


「それでは、卒業式エキシビションマッチ、開始! 」


 学園長が高らかに宣言をした。

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