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「突入! 学園長室」

 壁に隠れて様子を窺うと学園長室手前の廊下には一人の男が胡坐をかき目を閉じていた。


「ここまで近付いても何も反応しないということは彼のソウルはガイア……ではなさそうね」

「そうだな、ガイアなら今頃は近付いているのがバレているばかりか攻撃をされているだろう」

「もしくは暇すぎて眠ってしまったか」


 仕掛ける側は気楽でいいよなと悪態をつく。


「よし、ならばここから仕掛けてみよう『クリアランス』」


 フウトが敵から奪った剣を抜くと相手目掛けて勢いよく振った。たちまち斬撃が風に乗り相手目掛けて進んでいく。そして斬撃が男に直撃するかに見えたその時だった。

 ドン!

 大きな音が響き渡る。直撃したにしてはあまりにも大きな音だ。

 何が起きた?

 目を凝らすとそこには先ほどまでなかった大きな岩が出現していた。


「『サモンロック・スキワーズ』」

「岩!? まずい、オレ達の接近はとっくに気付かれていた『光の翼(ライトウィング)』」


 咄嗟に光の翼を出現させると三人を抱え浮かぶ。正直、定員オーバーだがそうも言っていられない。直後、先程までオレ達が立っていた場所に尖った岩が出現する。


「間一髪だった」

「すまない、助かったよ」

「やってくれるじゃないあの男」


 ジェシーが男を睨みつける。本当に危ないところだったがまだ終わりではない。追撃に備えて男を見る。しかし、男は動かず追撃もない。


「どういうことだ」

「……見失ったのかもしれない、今私達は浮かんでいるから」

「なるほど、ガイアは床に接している重さで探知をしていたのか。それならボク達を探知できないのも頷ける」

「でも安心はできないわね」


 そうだ、安心はできない。向こうも学園祭で光の剣士の人違いはしていたが能力は知れ渡っているだろう。となると次の手は……


「ひとまず離れるz……」


 言い終えぬうちに無差別に地面ばかりか壁からも尖った岩が出現する。


「まずい、このままだと足場がなくなる」

「貴方のソウルで何とかできないの? 」

「無効化しても出現した岩は消せない。他なら直撃するまでなら何とか出来るけど、ガイアは無効化出来る範囲が限られているんだ。更に言うと無効化とこの翼の併用は出来ないんだ」

「なるほど、そしてこの翼の定員は何名だ」

「一名。こうしてスピードと動きを犠牲にすれば浮くくらいは出来るが」

「了解した、それならばボクはここで降りる。ここで時間を取られてもいられないはずだ。ただ、情けない話だがもう一人残して欲しい」

「……なら、私が」

「いや、ディーネはオレとだ」

「そうね、相手がフレイムのバーンとなるとそれが一番ね」

「決まりだ、幸運を祈る」


 二人をまだ岩が出現していない足場に下ろすと再び浮かび学園長室を目指す。


「……ガイト」


 見ると四方から出現した岩が廊下を塞ごうとしている。


「滅茶苦茶だけど通り抜ける」


 辛うじて真ん中から通り抜けると男を囲っているらしい岩塊が見えた。

 二人共、厄介だろうけど頑張ってくれ。

 再び彼等の勝利を挑むとオレは学園長室の扉に突っ込んだ。


「うおらあああああああああああああああ」


 学園長室に入ると同時ににらみ合っていた学園長とバーンを押し倒し着地する。これでもう外の男は誰が誰がか分からず攻撃は出来ないはずだ。


「バーン、覚悟しろ! 」


 バーンを斬ろうとする。しかし、彼は既にオレ達から抜け出して剣を取り距離を取っていた。


「クソが、あいつらめ帰寮したなんて騙しやがったな。またもや俺様の計画を滅茶苦茶にしてくれたな。しかし、その顔、人を殺したようだな」

「ガイト君、本当なのか? 」

「はい」

「何人殺した? 」

「三人だ」

「クソっ、一人負けたか」


 バーンが舌打ちをする。


「どういうことだ? 」

「いやな、俺様に勝てると勘違いした目障りな虫が仕掛けてきてな」


 そう言って剣についた血を舐める。


「知ってる、ルーカスとライオだろ」

「そうか知ってたか。あいつらお前への罪滅ぼしとかほざいていたな。情けねえ奴らだ。でも、格好つけて挑んだくせに負けてお前に泣きつく、なんてとびきりの醜態をさらさないように仕留めてやったんだ。有難く思えよ」

「情けない? 醜態? そうか、お前はそう感じるのか。やっぱりお前は殺しておかないとな」

「それはこっちのセリフだ」

「今度は本当の真剣勝負だ、覚悟しろ」


 バーンに向かう。その瞬間……

 ドオオオオオオン

 けたたましい音とともに伝わる振動と割れた窓ガラスの破片がオレ達を襲う。

 何だ……


「何やってんだバカアニキ、俺様がここにいるんだぞ」


 バーンの言葉を聞き視線を追う。するとモクモクとあがる煙の隙間から数メートル先の修練場の屋上に一人の男が立っているのが見えた。

 あそこからソウルで攻撃してきたのか……だとしたらまずい

 ディーネに視線を移す。勇敢にも彼女は剣を抜いてバーンを見つめていた。


「ディーネ、残念だけどバーンは任せる。オレの怒りも二人の無念も全部託す。良いか? 」

「……わかった」

「頼んだぞ」


 バーンを彼女に任せると光の翼を出現させた。

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